第159話
夕刊紙を読みながら、考えていた。
他の人から見ると、
《はるかマジックに掛かっている。》と判るが、自分では、判らないのである。
木嶋の携帯が、
「プルー、プルー、プルー」鳴り出した。
【誰…かな?】
ふと…画面を覗くと、大森さんだった。
「もしもし、木嶋君。今ね…小室さん、富高さんと3人で、会社の最寄り駅近くで飲んでいるのですよ!」木嶋に伝えたのだ。
木嶋は、
「今日は、木曜日だよ!何で…飲んでいるの?」大森さんに聞いたのだ。
「何だろう…小室さんが、急に、話しがあるって…誘うから、無性に飲みたくて、誘惑に負けたのです。木嶋君、誘われなかったの?」大森さんが、木嶋に問いかけていた。
木嶋は、
「そんな話しは…聞いて…ないよ〜」大森さんに答えたのだ。
「じゃあ…小室さんが、代われと言うので代わります!」大森さんは、木嶋に伝え、携帯を、小室さんに預けたのだ。
その時、木嶋の乗っていた電車は、
《トンネル》の中に入っていて、携帯の電波が、途切れていた。
そのため、通話中でも、
「プー、プー、プー」と鳴っていた。
再び、木嶋の携帯が、
「プルー、プルー、プルー」鳴り出した。
電話の相手は、大森さんであった。
「木嶋君、何てことをするの…!小室さん、怒っているよ!」大森さんは、木嶋に話したのだ。
木嶋は、
「トンネルの中では、携帯の電波が届かないよ!別に、嫌がらせで電話を切ったりしないよ!」大森さんに反論をしたのだ。
大森さんは、
「チョット…待ってね。今、電話代わるから…」
大森さんの携帯を、小室さんが受け取ったのだ。
「もしもし、小室だが…?」小室さんが、木嶋に挨拶をした。
「小室さん、何の用事ですか?3人で飲むなんて、随分、酷くないですか?」木嶋は、小室さんに怒った口調で話していた。
「今日は、自分が、大森に話しがあって、《飲みに行くぞ!》と誘ったら、行きたいと言うから、会社の送迎バスに乗ったんだ。富高とは、バスの中で、《バッタリ》会って話したら、OKとの返事。明日は、全員休みなんだよ!」小室さんが、木嶋に答えたのだ。
木嶋は、
「いいね。明日、全員休みなんて羨ましいね。行く、行かないは別にして、話しだけでも、してくれれば良いのに。冷たいよね。」小室さんに投げ掛けたのだ。
小室さんは、
「今日は、ゴメンな!またの機会に誘うからな!」木嶋に、苦し紛れに答えたのであった。
「分かりました。次の機会を、麒麟のように、首を長くして、楽しみに待ってますよ!」木嶋は、小室さんに話したのだ。
小室さんは、
「了解しました。チョット、待て。富高が話しをしたいみたいだ。代わるぞ。」
小室さんは、大森さんの携帯を、富高さんに渡したのだ。
「もしもし、木嶋君。富高だけど…」富高さんが、木嶋に話したのだ。
木嶋は、
「富高さんが、平日に飲みに行くなんて、珍しいね!」富高さんに尋ねたのだ。
富高さんは、
「明日、メモリアル有休なんだ。」
富高さんの誕生日は、
【建国記念日】である。 「えっ、そうなの?もう、そんな時期?」木嶋は、驚きを隠せずにいた。
「そうなんだよ!木嶋君、はるかさんの卒業旅行に、何か渡すのかな?」富高さんが、木嶋に聞いていた。
木嶋は、
「小遣いとして、日本円で、12000円分のアメリカドルで、明日、はるかさんと会って、直接、渡すよ!」富高さんに答えたのだ。
富高さんは、
「そうなんだ。じゃあ、自分も、何かした方がいいかな?」木嶋に聞いていた。
木嶋は、
「富高さんの判断に一任しますよ…。」富高さんに伝えたのだ。
富高さんは、
「それなら木嶋君、お金を立て替えてくれるかな?来週の月曜日に、渡しに現場まで行くから…!」
「いくらぐらいかな?」木嶋は、富高さんに問いかけたのだ。
富高さんは、
「日本円で、10000円。それでお願いします!」木嶋に依頼をしたのだ。
木嶋も、富高さんの頼みを断る訳にもいかず、
「いいよ。はるかさんには、別の封筒を用意して渡します!」富高さんに話したのである。
富高さんは、
「よろしく!」木嶋に伝え、電話を切ったのだ。
木嶋が気がついた時は、もうすぐ、乗り換え駅であった。
リュックを右手に持ち、反対側に来た急行に乗り換えたのであった。