第155話
木嶋は、自宅のある最寄り駅に着いた。
「ズッ、ズッ、ズッ」靴の音を響かせながら歩いていた。
「いつ、アメリカドルを渡せばいいのだろうか…?」胸の中にある不安を抑え切れないでいた。
「はるかに、メールを送って聞いてみよう…。」
木嶋は、携帯を取り出し、アドレス帳から、はるかの携帯番号を探し出した。
はるかのメールアドレスを選択した。
「はるかさん、卒業旅行で出かける前に、会う時間がありますか?」木嶋は、少し疑問形のメール文を送信した。
直ぐに、メールが返って来ないのは判っていた。
家で、月極め契約をしている日刊スポーツを、部屋の中で読んでいた。
芸能面やプロ野球、競馬とあらゆる記事に目を通すが、全く、興味がないところも、日刊スポーツには多々あるのだ。
日刊スポーツを読み終え、朝日新聞を取り、読み出した。
「世間は、毎日、色んな事件や事故が起きるな…!」木嶋は、感心していた。
いずれ新聞が無くなる日が来るかも知れない…
インターネットが、かなりのスピードで、普及して行くのも、時間の問題である。
木嶋の世代は、パソコンなど触ったことなどない。
ハイスピードの時代変化を、肌で感じ取っていた。
はるかと、一緒にいる時間があれば、今のIT時代のことを知ることが出来る。
木嶋には、一番の理解者なのだ。
「チラシ広告で、これだけ、パソコンの値引きがあるなら、1台は欲しい。値段の比較をしないと判らないが、参考までに、見に行ってみよう。」再び、家を出た。
木嶋の家から、大型電気店は最寄り駅の近くにある。
「ズッ、ズッ、ズッ」私鉄の駅に向かっていた。
大型電気店の前に着いた。
「いらっしゃいませ!」男性、女性スタッフの威勢の良い掛け声に、圧倒されそうになった。
木嶋は、
「へぇ〜、パソコンも、種類がたくさんあるんだ。あとは、値段次第か…?」パソコンコーナーを眺めていた。
「いらっしゃいませ!何か…お探しでしょうか?」
若い男性スタッフが、木嶋に問いかけていた。
木嶋は、
「自分は、パソコンを、一度も扱ったことがないので、どれが良いのか解りません。どれが、初心者向きなのですか…?教えて下さい!」男性スタッフに問いかけた。
男性スタッフは、困惑しながらも、
「そうですか!初心者向きとなると…難しいですね。こちらの機種なんかは、いかがでしょうか?」右手を差し出した。
東芝製のパソコンであった。
「東芝ですか…?今、パソコンに、力を入れているメーカーはあるのですか?」木嶋は、男性スタッフに聞いていた。
「ソニーや東芝が、今、一番、勢いがありますね!」男性スタッフは、木嶋の質問に、丁寧に答えていた。
「ソニーか…東芝か…?少し、勉強不足だな!もっと、事前リサーチしないとダメだな!」木嶋は、ボヤくしかなかった。
「今日、ご購入されますか?」男性スタッフは、木嶋に聞いていた。
木嶋は、
「今日は、買わずに、一旦帰ります。他店舗をリサーチをして、また、こちらに来ます。」男性スタッフに、お礼の言葉を返していた。
「かしこまりました。またのご来店をお待ちしています。」男性スタッフは、頭を下げ、木嶋は、大型電気店をあとにした。
木嶋は、悩んでいた。
「比較対象をするのにも、他に店舗がない。どこかにあったような気がする。家に帰り、車で出かけて見よう。」
家に戻り、車のキーを取りに行く。
駐車場まで、歩いて10分ぐらいである。
車のキーを差し、
「プルッ、ブルー」エンジンが、スタートした。
ギアを、バックに入れ、ハンドルを切り、大きな交差点を、東京方面に曲がった。
2コ目の信号を右折して、木嶋の家の前を通って行く。
港湾近くに、大きな家電量販店があるのを思い出した。
直ぐに、車を向かわせた。
駐車場に車を止め、店の中に入って行く。
「いらっしゃいませ!」女性スタッフの声が、響き渡っている。
木嶋は、
「先ほど、私鉄の駅近くの店といい…ここも、店内は広いな!」
今まで、良く見に行った家電売場は、少し、家電コーナーがあるだけで、全く、比べものにはならなかった。
それが、木嶋には、新鮮に映って見えたのだ。