第154話
いつまでも、客観的な答えを聞き続けるのも、考えなくてはならない。
実際に、行動をしようにも、
【金縛り】に掛かったような…目に見えない何かが存在するのだ。
その状況を打破しなければ…と、木嶋は理解をしていた。
月日が経ち、はるかが、卒業旅行に行く日にちが目前に迫っていた。
「自分に、何が出来るのだろうか?」ふと…思案していた。
頭の中で、一瞬、閃いた。
「そうだ。ハワイは、アメリカなのだから、多少でも、小遣いがあればいいのではないかな?両替するには、羽田空港に行くべきか?横浜ダイヤモンド地下街に行くべきか…?選択肢は、2通り。羽田空港に行くには、時間ロスがある!横浜に行こう!」大急ぎで、家を出たのだ。
最寄り駅に着き、腕時計で、時間を確認した。
「午後12時過ぎ。そんなに、時間は掛からないはず…。1時間もあれば往復出来るはず…。」
定期券で、自動改札を通った。
朝、会社に通勤する時は、京浜東北線だが、予定がある時は、東海道線を利用することが多い。
東海道線のホームに繋がる階段を駆け降りて行く。
「パァーン」
クラクションを鳴らしながら、電車が、ホームに入ってきた。
冬晴れで、気温が、少しばかり暖かく感じていた。
電車を降りた人が、階段を、忙しなく…駆け上がって行く。
木嶋は、電車に乗り、空いている座席を見渡した。
どこも、人が座っていて、空いている座席はなく、ドア付近の吊り革に、右手で、握っていた。
「チョット、暖房が効き過ぎているようだ。」
ホームに降りる時に、駆け降りたので、額に、《ウッスラ》と汗をかいていた。
「ガタン、ゴトン」
ゆっくりと走り出した。
電車に揺られながら、携帯を握りしめていた。
木嶋は、途中で、居眠りをしそうになっていた。
「ここ最近、仕事が忙しいから…疲れが、身体に、溜まっている。」自分に言い聞かせていた。
「間もなく、横浜、横浜に到着です。」
車掌さんの、車内アナウンスが、木嶋の耳に聞こえていた。
「やれやれ、横浜駅に着くのか?」
木嶋は、
「フー…」と、溜息をついた。
「プシュー」エアー音を立てながら、電車のドアが開いた。
電車を降り、近くの階段を駆け降りて行く。
自動改札を左に出た。
「横浜駅は、人が多いな!」木嶋は、一人で、呟きながら歩いていた。
ダイヤモンド地下街へ繋がる階段を、一段ずつ降りて行く。
歩いてすぐに、両替する場所があったのだ。
木嶋は、ダイヤモンド地下街は、はるかと知り合ってから、メインの通りに、どの店があるか…場所を把握していた。
木嶋は、
「ここの両替する場所は、人が多いな…。はるかが、ハワイに行く週は、【建国記念日】の辺り。この時期は、学生も、春休みや卒業旅行に行くのか…見た感じ、学生風の人たち。」そう思いながらも、若い人たちの後ろに並ぶのであった。
自分を入れて、7人待ちである。
一人、また一人と、両替を終えて行く。
木嶋の順番である。
女性スタッフが、
「いらっしゃいませ!どちらのご両替でしょうか?」木嶋に声をかけたのだ。
木嶋は、すかさず、
「アメリカドルでお願いします。」女性スタッフに答えたのだ。
女性スタッフは、
「いくら、ご両替致しますか?」
「100ドルでお願いします。」木嶋は、女性スタッフに話したのだ。
「100ドルですね!かしこまりました。そうしましたら、日本円で、手数料込みで、12000円なります」女性スタッフが、木嶋に伝えたのだ。
木嶋は、ズボンのポケットから財布を取り出し、12000円を、女性スタッフに手渡した。
女性スタッフは、金額を確認して、100ドルを木嶋に差し出した。
木嶋は、100ドルを財布に入れた。
ダイヤモンド地下街の階段を、
「ズッ、ズッ、ズッ」一段ずつ上がっていく。
横浜駅の自動改札を定期券で通り、再び、東海道線のホームへ階段を上っていく。
5分ぐらい…待ったのだろうか?
電車が、ホームに入ってきた。 木嶋は、
「これで、家に帰ろう!あとは、はるかからの連絡を待てばいい!小遣いを渡したら驚くかな?」大きな気持ちを抱き、電車に乗った。
「プルー…」発車ベルが鳴り響いていた。
「プシュー…」ドアが閉まり、木嶋を乗せた電車が横浜駅をあとにした。