第149話
麻美は、
「もしもし、麻美です。はるかさん、お久しぶり…。今、どちらにいますか?」はるかに尋ねていた。
はるかは、
「今、関内駅の横浜寄りの改札口を出たところす。どちらに向かえばいいのですか?」麻美に問いただしていた。
「横浜寄りの改札口を出たところにいるのですね!はるかさんの左に、コージーコーナーが見えますか?」麻美は、はるかに聞いていた。
はるかは、
「コージーコーナーが見えます。」
「そうしたら、左に歩いて行くと、少し右横になりますが、山下公園側に、みずほ銀行があります。目の前にある信号を渡らずに、右に曲がって下さい。大きな交差点の角に、コンビニがあるので、そこに着いたら、再度、電話を下さい。お願いします。」麻美は、はるかに伝えた。
はるかは、
「コッ、コッ、コッ」
ブーツの音を響かせ、麻美に言われた目印を頼りに歩いて行く。
大きな交差点の角のコンビニ前に到着した。
はるかは、木嶋に電話をかけたのだ。
「ピローン、ピローン、ピローン」呼び出し音が鳴っている。
木嶋が、電話に出た。
「もしもし、はるかです。」はるかが、木嶋に話したのだ。
木嶋は、
「はい。木嶋です。麻美さんに代わります。」携帯を、再び、麻美に手渡したのだ。
麻美が、電話に出たのだ。
「もしもし、麻美です…。」
「はるかです。今、大きな交差点の角にあります、コンビニ前から電話をしています。」はるかが、麻美に伝えたのだ。
麻美は、
「そのまま、大通りの交差点を、山下公園方面に向かい、歩いて下さい。3本目の小さい道の角に、私が、立っていますので、およそ、5分ぐらいで来れると思います。」はるかに話したのだ。
はるかは、
「判りました。」麻美に伝え、電話を切ったのだ。
麻美は、携帯を、木嶋に返して、エレベーターで、1Fフロアに降りていく。
1Fフロアに降りた麻美は、はるかとの待ち合わせの場所に、急ぎ足で向かって行く。
はるかと麻美が会うのは、クラブ『H』以来、1年2カ月振りである。
時間が、経つのは早いのだ。
冬の寒さが、一段と身に染みていく。
麻美の、
「カッ、カッ、カッ」
靴の音が人気のない夜空に、《こだま》している。
はるかが、麻美との待ち合わせ場所に、先に着いて待っていた。
麻美は、
「はるかさん、お久しぶり。私のいるクラブは、こちらです。木嶋君と富高君が、首を長くして待っていますよ!」はるかに伝えたのだ。
はるかは、
「迎えに来て頂き、ありがとうございます。」麻美に、頭を下げながら、お礼を述べていた。
「頭を下げなくてもいいのに…。」麻美は、はるかに答えたのだ。
麻美と、はるかが、一緒に歩くなど、初めてである。
麻美が、クラブ『H』に勤務していた頃は、お互いが、ライバル心を剥き出しにしていた。
今は、麻美が、クラブ『U』に移動したので、ライバル心はないはず…である。
クラブ『U』のビル、1Fフロアに着いたのだ。
エレベーターに乗り、5Fのボタンを押した。
麻美は、エレベーターの中で、
「木嶋君と、うまくいっているの?」はるかに問いかけていた。
はるかは、
「ボチボチ…って、感じですね。」麻美に答えたのだ。
エレベーターが、5Fに着いた。
クラブ『U』のドアを開けた瞬間、
「こんな雰囲気の良いお店は、初めて来ました。」はるかは、驚きを隠せずにいた。
無理もない。
はるかと麻美の店は、同じクラブと言えども、客層が違いが、
《ハッキリ》と違うのである。
はるかのいるクラブ『H』は、横浜駅から近いので、若い世代と年配の世代と、5割ずつ入り混じっている。
麻美のクラブ『U』は、官公庁が近く、年配の世代が比率に直すと、8割方なのである。
はるかは、どちらかと言うと、若い世代と話しが噛み合わないので、年配の世代が多くいる、クラブ『U』が最適だと…移動しようと考えても、おかしくはないのである。
ふと、気がつくと、はるかは、クラブ『U』店の雰囲気に飲み込まれていた。