第144話
大通りの信号を、山下公園方面に向かって歩いていく。
麻美を先頭に、木嶋と富高さんが、後ろで、話しをしながら並行して歩いている。
大通りから3本目の細い道を右折した。
関内は、オフィス街と…木嶋は、認識していた。
ビルが、たくさん林立していても驚きはない。
麻美は、関内を《ホームグラウンド》である。
色んな店を点々と渡り歩き、この辺りは、詳しいのだ。
木嶋にも、雰囲気が合う店、合わない店が存在する。
会社の中で、《バブル世代》に入社した女性社員たちを多く見てきた。
その中で、一瞬だけ輝いて辞めた人、幸せを掴み、寿退社した人もいた。
自分たちの現場で、飲み会を開催した時に、来てくれた女性社員の人いたのだ。
出会いが眩し過ぎて、その人に《好き》と言えずに、ズルズルとここまで来てしまったのだ。
その中で、富士松さんが残ったのだ。
【何とかチャンスがあれば…】と、考えていても、出来ないのが現実なのだ。
麻美に案内されて、エレベーターで5Fに向かった。
エレベーターのドアが開き、少しフロアを歩いていく。
クラブ『U』に着いたのだ。
ドアを開けると、お姉さんたちが、
【いらっしゃいませ!】威勢の良い声が聞こえていた。
麻美は、
「木嶋君、富高君、着替えに行ってきますので、こちらの若いお姉さんのあとについて行って下さい。」木嶋に伝えたのだ。
木嶋は、
「了解しました!」麻美に答えたのだ。
若いお姉さんが、
「こちらです。」木嶋と富高さんをエスコートしたのだ。
テーブルには、
【予約席】の看板が置いてあった。
それを見た木嶋は、
《ズルッ…》と、コケてしまったのだ。
案内された席は、クラブ『U』の一番奥に近かったのだ。
木嶋と富高さんは、座席に座ったのだ。
若い女性店員さんは、木嶋たちのテーブルから離れていく。
富高さんは、
「木嶋君、雰囲気が良さそうな店だね!前に一度、来たことがあるよね?」木嶋に話していた。
木嶋は、
「麻美さんが、移動した当初に、一度、来たことはあるね!雰囲気も良さそうだね!」富高さんに答えたのだ。
着替えが終わり、麻美が、木嶋たちのテーブルに来たのだ。
「木嶋君、富高君、お待たせしました。」赤いドレスを着た麻美が、木嶋の左横に座った。
少し遅れて青いドレスを来た、お姉さんが来たのだ。
『こちらは、《らんさん》と言います。』麻美が、木嶋と富高さんに紹介したのだ。
【らんです。】改めて木嶋と富高さんに自己紹介していた。
麻美は、
「らんさんから見て、左手に木嶋君。右手に富高君です。」らんに紹介していた。
麻美が、らんに、富高さんの左横に座るように促したのだ。
らんが、
「富高さん、今日は、よろしくお願いします。」富高さんに頭を下げていた。
富高さんは、緊張した表情で、
「こちらこそ、よろしくお願いします!」らんに話したのだ。
らんが、
「麻美さんと木嶋さんたちの接点って何ですか?」麻美と、木嶋に尋ねていた。
木嶋が、話し始めた。
「麻美さんとの出会いは、21世紀の最初の年。11月に、横浜のクラブ『H』で知り合いました。」らんに答えていた。
続けて麻美が、
「私は、そのクラブ『H』では、2カ月間在籍していて、そこで、フリーで来たお客さんが木嶋君でした。」らんに話したのだった。
らんは、
「富高さんも、一緒に来たのですか?」富高さんに聞いていた。
富高さんは、
「いや、自分は、麻美さんが、クラブ『H』を辞める日に、木嶋君に飲みに誘われて初めて会いました。」らんに伝えたのだ。
らんは、
「麻美さんが、クラブ『H』を辞める日に会ったんだ!人の縁って判らないものですね!」少し驚きを隠せずにいたのだ。
富高さんは、
「自分が、麻美さんの店に行くたびに、辞めてしまうんだ。」らんに、自嘲気味に伝えたのだ。
「何故ですか?」富高さんに、らんは尋ねたのだ。
富高さんも、
「自分には解りません!」らんに、答えを話すのに困惑していたのだった。
麻美は、
「富高君が、私のいるクラブに来ると、巡り合わせが悪いみたいで、その月で辞めてしまって…罪悪感を感じているのも事実です。」らんに話したのであった。
「巡り合わせ…ね。」
らんの頭の中には、クエスチョンマークがついていた。
らんは、
「同じ店に、長く勤務出来ないのは、麻美さんに周りと協調性がないのでは…?」麻美に話したのだ。
麻美は、
「そうかも…」らんに答えたのだ。
木嶋と、富高さんも、首を縦に頷いたのであった。