第141話
白菜、しめじ、豆腐などに醤油ダシがいい色に染みていた。
麻美は、
「富高君から採ろうか?」
採り皿に野菜などを盛りつけ、富高さんに渡していた。
木嶋は、
「さすがに、手慣れているな!」感心していて、麻美から手渡された採り皿を受け取ったのだ。
富高さんと、同じぐらいの量であった。
最後に、麻美が、自分自身に採ったのだ。
外の気温が寒かったせいか、チャンコ鍋を食べたら、身体が暖まって来た。
木嶋と富高さんは、ビールを飲んでいた。
「富高さん、熱い料理を食べていると、ビールがちょうどいいね!」木嶋は、富高さんに話したのだ。
富高さんは、
「そうだね!いい感じだよ!麻美さんも、店で飲むなんて言わずに、ここで一杯、飲めばいいのに…!」麻美に伝えた。
麻美は、
「今、ここで飲んでしまったら、クラブ『U』で、木嶋君、富高君と一緒に飲めなくなってしまいます。私は、富高さんが、潰れたところを見たことがないので…今日は、たくさん飲みたいのです。」木嶋と富高さんに話したのだ。
木嶋も、麻美の話していることに、頷いていた。
富高さんは、偶然かも知れないが、過去に2回、玲のいるクラブ『O』で潰れてしまったことがあるのだ。
その話しを、麻美は、玲から聞いていたのだ。
麻美から見たら、自分と付き合いが長いのに、そこまでにはならないのは、
【何故?】と疑問心を抱くのも不思議ではない。
玲の店で、富高さんの隣りにいた女性が、その場の雰囲気を作るのが、一枚、上手だったのだ。
富高さんは、はるかのいるクラブ『H』でも、周りの女性たちが若く、会話が続かない。飲み過ぎるまでには程遠いのだ。
逆に、木嶋は、どこの店にいても、警戒心が強く、女性の連絡先を貰っても、はるか以外は、興味がないのだ。
ただ、麻美と玲は、同年代なので、どんな会話でも続くのだ。
木嶋の横に来た女性は、最初は、手探りの状態で入るから帰る頃には、やっと打ち解けられるのだ。
富高さんは、
「今日は、飲み過ぎないようにしますよ!」笑いながら、麻美に話したのだ。
麻美は、
「一度くらい見てみたい〜。」甘い声で、囁いていた。
その話しを聞いていた木嶋は、
「どうだろうね!」
そう答えるしかないのだ。
「そう言えば木嶋君。はるかさんに物を買ったりしていないよね?」麻美は、木嶋に聞いていた。
木嶋は、一瞬《ドキッ》とした。
続けて、麻美は、
「若い世代は、ブランド品が欲しくて仕方ないからね。木嶋君は、優しいから騙されているのでは…と。」木嶋に話したのだ。
木嶋は、心臓に、
《グサッ》と突き刺されたような気分であった。
冬なのに、冷や汗を掻きながら、
「はるかさんに、ブランド品を買ったりしていないよ!何で…そうなるの?」麻美に尋ねていた。
麻美の言っていることには、正論である。
この時、木嶋は、
麻美に対して…嘘をついてしまったことに、罪悪感を感じずにいられなかった。
麻美に、
「ブランド品を買っているよ…。」
正直に、伝えればいいのに、背伸びをしたようになってしまった。
麻美のことだから、
「木嶋君は、はるかさんにブランド品を買っている…。」
そう感じているはずである。
麻美は、そこまで、【ツッコム】ことはなかったのだ。
木嶋の言葉を信用していたのだ。
麻美の左隣りに富高さんも、
「木嶋君、はるかさんにブランド品を買わない方がいいよ!」木嶋に問いかけるように話していたのだ。
木嶋は、
「そうだね。麻美さんと富高さんの意見を真摯に受け止めます。」麻美と富高さんに伝えたのだ。
チャンコ鍋を食べ終わり、ホッケの塩焼きを食べはじめた。
焼き色、塩加減、程よい出来具合であった。
ビールや烏龍茶も、飲むスピードが早くなっていく。
富高さんが、
「木嶋君、ビールをもう一杯飲もうよ。」木嶋に問いかけていた。
木嶋は、
「麻美さん、クラブ『U』に行く時間は、大丈夫なの?」麻美に尋ねていた。
麻美は、
「富高さんが、もう一杯のビールを飲み終えたら、ここを出ましょう。」木嶋に伝えたのだ。
木嶋は、手元にあったボタンを押したのだった。