第131話
木嶋は、関内駅周辺を見渡した。
神奈川県庁があるため、駅周辺は、証券会社や銀行が多いのに気がついた。
「食事をする場所は、どこにあるのだろう?」
大通りの角には、寿司の『泉平』(いずへい)があったのだ。
一本、通りを奥に入り、店がたくさん出てきた。
「ここに、あったのか!解りにくい場所だ!これでは、見つけづらい。」木嶋は、ボヤいていた。
そこから更に、歩いていると、『勝烈庵』(かつれつあん)やファミリーレストラン『R』、などがあったのだ。
『泉平』は、大通りの角にあるため、営業終了時間は、午後8時であった。 木嶋は、歩きながら、『泉平』の寿司を帰りに買って行こうと決めていた。
『勝烈庵』は、大きな提灯が目印で見つけやすかった。
桜木町駅の方面に歩いて行くと、ポツン、ポツンとラーメン店が点在している。
木嶋は、その通りから逆方面に戻っていく。
最初は、大通りを歩いていても気がつかなったが、居酒屋のチェーン店と、カラオケの『BIG Echo』があったのだ。
その瞬間、
「寂れた街ではない。意外に、店がたくさんあるではないか?はるかに、話しをしないといけないな!」木嶋は、そう感じていたのだ。
まだ、どこで、食事をしようかと迷っていた。
「参ったね!今日は、決まらないから引き上げよう!」木嶋は、関内駅に足を向けた。
木嶋は、関内駅のキップ売り場前に、一旦立ち止まり、ふと、考えた。
「いや、待てよ。ここに来る機会はないから、甘栗を買って帰ろう。」
「ここから近い店は、どこだろう?」
木嶋は、携帯を取り出し店を検索していた。
柱に背中を預けた。
伊勢佐木町の商店街が近いと結論が出た。
目の前には、地下に入る階段があった。
「ズッ、ズッ、ズッ」と、靴の音が、地下の中で反響している。
「地下街があるんだ。」木嶋は、驚いた表情を見せていた。
「自分の地元や、横浜のダイヤモンド地下街から比べると、こぢんまりとしているが、コンパクトに店が纏まっている。誰がどの店にいるのか判りやすい。」木嶋は、納得していた。
地下街を抜けて、地上に出る階段を上がる。
目の前には、伊勢佐木町の商店街が、視界に入ってきた。
関内には、一年に、両手で数えるくらいしか来ることがない。
その内の1割ぐらいは、伊勢佐木町にある甘栗専門店で買っていくのだ。
木嶋の家族は、甘栗が好きで、駅の構内にある【KIOSK】や、中華街に食べた帰りに、『萬珍楼』(まんちんろう)や『聘珍樓』(へいちんろう)で購入していた。
木嶋は、甘栗専門店前に着いた。
「お兄さん、いらっしゃい。」50代前半の年配の男性が、声を掛けてきた。
木嶋は、
「いくらのにしようかな?」
ショーケースの中にある、甘栗の種類を覗いていた。
「お兄さん、今なら炒り立ての栗があるよ!いくらぐらいがいいのかな?」男性が、木嶋に話してきた。
木嶋は、
「2000円ぐらいで、お願いします。炒り立てがあるなら、それを下さい。」男性に言葉を返したのだ。
男性は、
「ありがとうございます。」
炒り立ての栗を、袋に詰めていた。
「少し、多く入れておくね。」
木嶋は、
「ありがとうございます。」男性に話し、会計をしていた。
甘栗を、包装紙に包んでいた。
木嶋は、財布を取り出し、
「いくらですか?」男性に尋ねていた。
「2000円です。小さな手提げに入れておくね!」
手提げ袋に、甘栗を入れて木嶋に手渡し、財布からお金を、2000円を男性に支払いをしていた。
支払いを終えて、商品を受け取り、木嶋は、再び、地下街の階段を降り、関内駅に向かったのだった。
木嶋は、関内駅に着き、キップ売り場の料金表を見上げ、最寄り駅までの料金を見つめていた。
「210円か…。」
財布を取り出し、キップを購入したのだ。
ホームに行く階段を、上がっていく。
木嶋は、京浜東北線がホームに入ってきた。
「ガタン、ゴトン」
電車に揺られながら、関内駅をあとにしたのだった。