第130話
時間が、どれくらい経過したのだろう。
気がつけば、もう午後3時を過ぎていた。
木嶋の携帯が、
「プルッ、プルー、プルー」呼び出し音が鳴っている。
携帯の画面を覗くと、麻美からであった。
「もしもし、木嶋ですが…。」
「麻美です。午前中に電話を戴いたのに、出れなくて申し訳ありませんでした。」麻美は、木嶋に話していた。
木嶋は、
「自分も、麻美さんが、寝ている時間に、電話をしてしまい、本当に申し訳ない気持ちでいっぱいです。」麻美に謝罪をしていた。
麻美は、
「木嶋君から電話を戴いた時は、子供のことで起きていたのですが、着信があったことに気がつくのが遅く、仕事だと思っていたので、今の時間に電話をしたのです。」木嶋に伝えていた。
木嶋は、
「余計な気を遣わせてしまいゴメンね!」麻美に答えていた。
「メールを読みました。今週末の待ち合わせについてですが…時間は、何時が、木嶋君たちに、ベストな時間かな?」麻美は、木嶋に問い掛けていた。
木嶋は、
「何時がベストかと言うと、仕事が終わるのが、午後5時。どんなに早いルートを選択しても、午後6時30分前後だと思うよ。」麻美に話したのだ。
麻美は、
「それなら、午後7時に関内駅南口のコージーコーナー前でもいいかな?」木嶋に尋ねていた。
木嶋は、
「コージーコーナーって…改札口を出て、すぐ左側にあるところだよね?」麻美に聞いていた。
「そうですよ。改札口を出たところです。富高さんも一緒に来て戴けるのかな?」麻美は、木嶋に確認をしていた。
木嶋は、
「もちろんです。富高さんも楽しみにしていますよ。」麻美に力強い口調で答えていた。
「分かりました。木嶋君のその言葉を聞いて安心しました。何をプレゼントしようか?今、迷っていますよ。」
木嶋から見ると、富高さんのことで、麻美に気を遣わせているのが手に取るように分かっていた。
「麻美さん、そんなに気を使わないで…富高さんが聞いたら引いてしまいます。」木嶋は、麻美に伝えたのだ。
麻美は、
「木嶋君や富高さんに、気を遣っていませんよ!仕事柄、そんな性分なのです。」木嶋に話していた。
「分かりました。富高さんには、待ち合わせ時間と場所を伝えておきます。サプライズは、麻美さんに一任してもいいですか?」木嶋は、麻美に聞いたのだ。
麻美は、
「任せて下さい。」木嶋に伝え、
木嶋は、
「あとは、宜しくお願いします!」麻美に話し、電話を切ったのだ。
待ち合わせ時間と場所が決まったことに安心したのだ。
「あとは、食事する場所を探せばいいかな!今日は、時間もあるし、今から関内に行こう!」
木嶋は、携帯を持ち、家を出たのだ。
家から最寄り駅まで、歩いて10分ぐらいの距離である。
駅の改札口を通り、京浜東北線のホームに降りて行く。
ホームに着いた途端に、タイミング良く、電車が入って来た。
「ピコン、ピコン」
ドアが開き、空いていた、3人掛けのシートに座り、関内に向かった。
いつもは、はるかと横浜駅周辺で過ごしていることが多く、関内駅で降りることは少ない。
食事をする店が何処にあるか?検討がつかないのだ。
麻美に、食事する場所を決めてもらうのも、一つの案でもあるが、甘えてしまうのも良くない。
木嶋にも、【プライド】がある。
最寄り駅を出て、京浜東北線の車内で、《Yahoo!ホームページ》を開き、関内駅周辺をクリックしていた。
木嶋の探し方が悪いのだろうか?中々、ヒットせずに、少しばかりイラついていた。
食事をする場所が見つかった途端に、
『次は、関内、関内です!』車内アナウンスが聞こえてきた。
木嶋は、
『ズルッ』と、手摺りからコケてしまった。
関内に着いた木嶋は、電車から降りた。
階段を駆け降り、改札を出た。
この日は、週末の土曜日だと言うのに、閑散としていた。
木嶋の脳裏には、はるかの言葉が、浮かび上がってきた。
「私にとっては、関内は寂れた街。その印象しかないのです。」
「その言葉通りかも知れない」思わず納得してしまったのだ。