第127話
富高さんと別れた木嶋は、一人で思いに更けていた。
「自分が、本当に好きな人は、誰なんだろうか…?麻美さん?玲さん?はるか?富士松さん?」
頭の中には、いつもクエスチョンが成り立っている。
「いつかは、答えを出さないと行けない!その答えを出す前に、みんながいなくなってしまう確率は高い!そんな自分が情けなく、胸を締め付けられそう!」
そんな境遇になっていた。
〜不安な夢を見ても…眠れない夜が来る…快楽の全てを与えたい…届けたい…惜しくない。〜
この歌の詩は、木嶋が良く好んで聞く曲の《ワンフレーズ》である。
この曲を聞く度に、
「なるほど…」と納得するのであった。
自分の誕生日を理想的な形で終わり、
また、明日から一年間、頑張ろうと言う気持ちになっていく。
「はるかが本命なのだから、素直な気持ちで自分の思いを打ち明けたら、消えてしまうのかな?」
心の中に、不安感が襲う。
「いなくなったら、富士松さんに告白しようかな?」
これも、また、安直な考え方なのである。
「明日、麻美さんに、今日のことを報告しよう!」
木嶋は、歩きながら、呟いていた。
腕時計を見ると、富高さんが、もうすぐ最寄り駅に着く頃であった。
家の中に入り、風呂の中でも、興奮が冷めることがなかった。
布団の中に入っても、なかなか寝付けずにいた。
それだけ、誕生日のお祝いをしてくれたことに感激をしていた。
いつの間にか寝てしまったのだ。
翌日、朝早くに目が覚めたのだ。
手元にあった置き時計を見た。
時刻は、午前8時であった。
「もうそんな時間になるのか…。」木嶋は、眠い目を擦りながら起きたのだ。
ふと、携帯を見ると、チカチカと光っている。
「なんだろう?」
携帯の画面を覗いた。
はるかからのメールであった。
「木嶋さん、昨日は、ありがとうございました。とても楽しい一日を過ごさせて頂きました。富高さんにも、宜しくとお伝え願います。」
木嶋は、
「はるかさん、昨日は、有意義な一日を過ごさせて頂き、ありがとうございました。家に帰宅しても寝付けなかったのです。今、起きたばかりで、頭の中は、【ボーッ】としていますよ!」はるかに、メールを返したのだった。
「あっ、そうだ。麻美さんにも話しをしないと…。」
木嶋が、冷静なら、今の時間に、麻美に電話をしても出ないことは判っているのに、何を、慌てているのだろう。
携帯の『メモリダイヤル』から麻美の番号を検索して、発信したのだ。
「プルッ、プルー、プルー」呼び出しているが、電話に出る様子もない。
考えれば、麻美は、深夜に帰宅したばかりである。
今は、熟睡中である。 それに気がついた木嶋は、すぐに電話を切ったのだ。
「自分は、何を焦っているのだろう!」自問自答していた。
「謝罪のメールを入れよう!」
瞬時に考えたのだ。
「麻美さんの迷惑を、顧みずに電話をしてしまい申し訳ありませんでした!起きたら連絡を下さい。」木嶋は、メールを送信した。
「今日は、退屈だな!これから…どうしようかな!マンガ喫茶でも行こう!」
着替えて、家をあとにした。
木嶋の家から歩いて、15分ぐらいの所に、行きつけのマンガ喫茶がある。
そこにたどり着いた時に、携帯が、
「プルッ、プルー、プルー」
鳴っていた。
着信画面を見ると、麻美からであった。
木嶋は、電話に出た。
「もしもし、木嶋ですが…」
「麻美です。朝、電話を戴いたみたいで…。」麻美は、木嶋に話していた。
木嶋は、
「寝ている時間に申し訳ないです。」麻美に伝えたのだ。
麻美は、
「娘が、どこかに行きたいと話していたので、木嶋君から電話を戴いた時は、起きてきたいましたよ。電話に出ようとしたら切れてしまい、そのあとからメールを受信したので、読んでから今、電話をしたのです。」木嶋に、答えたのだった。
「そうだったの?昨日、はるかさんのクラブ『H』に、富高さんと一緒に行ってきました。」木嶋は、麻美に話したのだ。
麻美は、
「はるかさん、元気にしていたのかな?」木嶋に尋ねていた。
「元気にしていましたよ。」木嶋は、麻美に答えたのだった。