第122話
木嶋、富高さん、はるかの3人が、横一列に並びながら、左手に、ファーストフード『M』を横に見ながら、相鉄ムービル映画館の2Fに繋がる橋を渡ろうとしていた。
この橋は、木嶋や富高さんが、クラブ『H』から飲んだあとに、横浜駅まで歩いて行く近道に良く利用していた。
普段は、相鉄線の1F改札出口から左手にある、証券会社を曲がり、そのまま歩いて行くと、橋の袂にある《セレクトショップ》を、右手に見ながら橋を渡り、呼び込みのお姉さんや若い男性たちが立っているのだ。
その両サイドを横切り、歩いて行くのだ。
いつもより、寒い日である。
ビルが林立しているので、風がなくても、ビル風が吹いている。
はるかの髪が、風に靡いている。
爽やかな香水の匂いである。
何度、鉄の階段を上がったのだろう?
クラブ『H』に、どれくらい来たのであろうか?
少なくとも、片手以上は来たはずである!
「カツン、カツン、カツン」
店の前の階段を上がって行く。
店内は、変わらぬ光景である。
「いらっしゃいませ!」男性店員、女性スタッフの声が、《こだま》している。
はるかは、
「少し待っててね!」
ドレスアップをする為、木嶋と富高さんに、声を掛けて、一旦、離れて行った。
木嶋と富高さんは、男性店員さんに、案内されたテーブルに座った。
「木嶋さんですね?はるかさんは、少しお待ち下さい。《メンバーズカード》を提示して頂けますか?」木嶋に問いかけていた。
木嶋は、
「クラブ『H』の《メンバーズカード》ですね?」男性店員さんに、聞き返しながら、ポケットから財布を取り出し、探し始めていた。
【パラパラと財布の中を探している。】
「あれっ…?《メンバーズカード》持ってきたはず…。」木嶋の表情が、少し焦り気味になっていた。
「在りました!」 安堵の表情になり、木嶋は、男性店員さんに、手渡したのだ!
「カードを預からせて戴きます!」男性店員さんは、木嶋に話し、テーブルを離れていく。
女性スタッフが、木嶋のボトルを持ってきた。
クラブ『H』は、横浜駅から近いため、客層が幅広く大勢のお客さんが来ている!
富高さんは、
「木嶋君、相変わらず…クラブ『H』は凄い人だよね!」木嶋に話していた。
木嶋は、
「いつも来る度に、人の多さに驚かされるよ!」富高さんに答えたのだ。
「不況なんて…ここには、関係ないのかな?」木嶋や、富高さんも思うことは同じであった。
男性店員さんが、
「はるかさんです!」
はるかが、ドレスアップを終えて、木嶋たちの席に戻って来たのだ。
「木嶋さん、富高さん、お待たせしました。」はるかが声を掛けたのだ。
「待ちくたびれましたよ!」少し自虐的に、ジョークを言っていた!
そのジョークは、意外にも本音に近かった!
富高さんは、
「はるかさん、今日のドレスは、随分、素敵なドレスではないですか?」はるかに尋ねていた。
はるかは、
「このドレスは、木嶋さんが、私の誕生日プレゼントして戴いた物ですよ!」富高さんに答えたのだ。
「木嶋君、本当なの?」富高さんは、木嶋に尋ねていた。
木嶋は、
「本当ですよ。はるかさんと最初のデートをした時に、誕生日プレゼントとして渡しました。」富高さんに話したのであった。
「いい値段だったでしょう?」 「そんなに高い物でないから…はるかさんに、聞いてくれてもいいよ!」木嶋は、富高さんに答えていた。
富高さんは、
「はるかさん、今、着ているドレスって…高いイメージがあるんだ。値段も高かったのかな?」はるかに尋ねていた。
はるかは、
「全然、高くないですよ。金額は…3万円ぐらいではないですか?」富高さんに話したのだった。
富高さんの表情は、少し、驚きを感じていたのであった。
木嶋は、
「今まで、女性に誕生日プレゼントをしたことがないから、いくらが相場なのか判らなくてね…会社の女性社員にも聞くわけにも行かないよ!」富高さんと、はるかに話したのだった。