第118話
はるかは、富高さんの右横に座り、正面には、木嶋が座っていた。
「木嶋さん、富高さんと一緒にいるなら、何故、話してくれないのですか?」はるかが、木嶋に問い詰めていた。
木嶋は、
「富高さんが、一緒来るか?来ないか?は、曖昧に(あいまい)だったので、はるかさんに話すことが出来ませんでした。」はるかに伝えたのだ。
はるかは、
「木嶋さん、今日は、何日か…覚えていますか?」木嶋に尋ねていた。
「えっと…今日は…1/11(土)。アッ…思い出した。はるかさんと約束した日ですよ。」木嶋は、はるかに答えていた。
はるかは、
「木嶋さんの誕生日をお祝いするって、私は、言いましたよ。」
「そうだよね…。」
木嶋は、冷や汗を流していた。
「どうしよう?」
目を閉じ、両手の人差し指を、頭の側頭部に円を描くように、
「ポク、ポク、ポク、チーン」
閃いたみたいである。
この《スタイル》は、アニメの【一休さん】の困ったときに、トンチで解決する方法であった。
木嶋が、子供のときにテレビ放送を観ていて、悩むと、解くやり方である。
富高さんは、
「木嶋君も、人間だからこういう時もありますよ!はるかさんの顔を見たいから、木嶋君に聞いたら、今日、会う約束をしていると聞いたので、お願いをして一緒に来たのです。責めないで下さい。」木嶋のフォローを、はるかにしていた。
「富高さん、ありがとうございます。約束を忘れるなんて木嶋さん、酷いですよ。」はるかは、少し機嫌が悪くなっていた。
木嶋は、何も言えず、いつも背負っているリュックの中から黄色の手帳を取り出した。
パラパラとページをめくり、今週の予定を確認していた。
紛れもなく、はるかとデートの約束をしていたのだ。
木嶋は、
「はるかさん、すいませんでした。富高さん、いい機会ですので、一緒にクラブ『H』に行きませんか?」富高さんに話していた。
はるかも、
「富高さん、一緒に行きましょう!」富高さんを誘惑していた。
富高さんは、
「チョット…待って…。」慌てていた。
無理もない。
当初は、はるかと別れたあと、木嶋と二人で、横浜駅周辺で飲む予定であった。
富高さんから見れば、木嶋とはるかに、嵌められたような感じがしてならない。
木嶋が演技をするはずもない。
ただ、忘れていたのだ。
「どうしようか?」
富高さんは、苦悩していた。
今週は、今日が普通出勤日なため、日曜日、一日だけであった。
「体力的に持つかな?スポーツをやるにしても、まだ寒い。ヘタに運動でもして、肉離れはしたくはない。釣りをするにしても、一日だけの休みでは、行ってもムダかな?木嶋君の顔を立てるかな!」心の中で葛藤があったのだ。
富高さんは、
「木嶋君、はるかさんのクラブ『H』に一緒に行こうよ!」木嶋に話したのだった。
木嶋は、
「富高さん、ありがとうございます。」机に両手を当て、頭を下げたのだ。
はるかも、
「ありがとうございます。」富高さんに、お礼を述べていた。
「はるかさん、クラブ『H』に連絡をしないのですか?」木嶋が、はるかに尋ねていた。
はるかは、左腕にしている腕時計で時間を確認した。
「クラブ『H』に電話しますので一度、席を外しますね。」はるかが、席を立ち、
「カッ、カッ、カッ」階段を下りていく。
店員さんが、木嶋の席に来てメニューを渡したのだ。
木嶋は、
「単品で、ホットロイヤルミルクティーをお願いします。」店員さんに伝えたのだ。
店員さんは、
「ホットロイヤルミルクティーですね。少々、お待ち下さい。」メニューを下げて行った。
富高さんは、
「木嶋君、勝手にオーダーしていいの?」木嶋の行動に、疑問を投げかけていた。
「ホットロイヤルミルクティーをオーダーしていれば大丈夫。はるかさん、クラブ『H』へ連絡入れるのに、時間は掛からないと思うよ。」富高さんに話したのだ。
富高さんは、
「それならいいよ。」木嶋に話していた。
階段を、
「カッ、カッ、カッ」上がって来る靴の音。
はるかが、電話を終えて戻ってきた。
「お待たせしました。」木嶋と富高さんに伝えた。
木嶋と富高さんは、
「お帰りなさい。」はるかを、笑顔で迎えたのだ。