第115話
木嶋は、はるかとのメールを終えて、富高さんが、コンビニから出てくるのを待っていた。
富高さんが、ホットコーヒーとビール、つまみが入れたビニール袋を右手に下げ、
「木嶋君、お待たせ。」
声を掛けていた。
木嶋は、
「いいえ。キップを買って来るね。」富高さんに話したのだ。
富高さんは、
「了解です。先に、改札口の中を通って待っているよ。」木嶋に告げて、市営地下鉄の乗り場に足を向け、歩いて行った。
木嶋は、キップ売り場に向かって行った。
「え〜と。戸塚駅までは…260円か…。」
木嶋は、ポケットの中から財布を取り出し、小銭を出したのだ。
キップを購入して、市営地下鉄の自動改札を通った。
一足早くに、自動改札を通り、待っていた富高さんと合流して、地下の市営地下鉄のホームまで《エレベーター》で降りていく。
《エレベーター》が、ホームに着いた。
木嶋と富高さんが、ホームに待機している電車に乗ったのだ。
乗って直ぐに、発車ベルが、
「プルー」と鳴っている。
続いて、
「ドアが閉まります。ご注意下さい。」構内アナウンスが流れたと同時に、
電子音が、
「ピンポン」言いながら、ドアを閉めたのだ。
「プー」と、電車の動力が伝わり始め、ゆっくりと走り出したのだ。
市営地下鉄は、【ワンマン運転】で、転落防止柵が各駅に設置されているのだ。
ドアと同時に転落防止柵も一緒に閉まるので、【駆け込み乗車】が出来ないのだ。
車内は蛍光灯が一日中、点いていた。
市営地下鉄に限らず、相鉄線や私鉄各線、JR全線も同じである。
今、世界の人たちが、共通の認識と話題は、地球温暖化が1番、重要である。
私たちが、生活をしている中で、何より深刻な問題である。
「今、自分たちが出来ることって…何があるのだろうか?ふとした疑問を持つのも大切な心がけである。人は、最低でも、一人以上の人とすれ違っている。二人でも生活をしていることには変わりはない。手探りではあるが、どこかに改善出来る《パーツ》が見つかると思うのだ。」
どう探せば、良いのだろうか?
それは、一人一人が、
「昨日を変えられないが、今日より明日を夢見ることが大切である。」木嶋は、心の中で考えていた。
富高さんや木嶋のいる会社は、エコロジーにチャレンジしている。
周りの小さな積み重ねで合っても、一人、また一人と協力することで、小さな力が大きな力となって行くのだ。しかし、木嶋は、思案しながらも効果的なものが考えつかずに頭を悩ましていた。
車内の長いシートに座り、富高さんが、木嶋に、コンビニで買ってきた飲み物を渡していた。
木嶋が手にしていたのは、ホットコーヒーだった。
「富高さん、ありがとうございます。」
中には、挨拶、お礼を述べることが出来ない人が多くいる。
はるかと交際していく中で、木嶋は、自然とお礼が言えるようになり、少しずつ謙虚な気持ちを持ち始めていた。
富高さんは、帰り道の電車内で、ビールを飲むのが日課になっていた。
木嶋も、たまには、車内でビールを飲みたい気分もあるが、これから、はるかと会うのに、赤ら顔で行くことはしたくないのだ。
今の時期は、ビールを飲むと、トイレに行く回数が多くなってしまう懸念もある。
富高さんが、
「木嶋君、どこまでのキップを買ったのかな?」木嶋に問いかけていた。
木嶋は、
「戸塚駅で乗り換える想定で、キップを買いましたよ!何で…。」富高さんに尋ねたのだ。
「横浜駅まで、市営地下鉄で行くのかなと思ったんだ。」富高さんは、木嶋に答えたのだ。
木嶋は、
「戸塚駅で乗り換えた方が、お互い、定期を使用出来るよね!」富高さんに話したのだ。
富高さんも、
「それもそうだね!」納得した表情だったのだ。
電車が、戸塚駅に着いたのだった。
「戸塚、戸塚です。東海道線、横須賀線は乗り換えです。」
構内アナウンスが流れていた。
木嶋も、富高さんも、市営地下鉄の自動改札を出て、JRの戸塚駅の改札口に向かって行った。