第114話
木嶋は、
「いいよ。着替えが終わったらロッカールームの外で待っているよ。」富高さんに話したのだ。
先に着替えを終えた木嶋は、富高さんが、ロッカールームから出て来るのを待っていた。
数分後、富高さんが、ロッカールームから出て、木嶋と合流したのだ。
会社の送迎バス乗り場まで歩いて行った。
バスに乗り込み、空いている座席に座り、
「富高さん、どんな《サプライズ》をしますか?」木嶋は、富高さんに問いかけていた。
富高さんは、
「簡単なことですよ。木嶋君の代わりに、自分が待ち合わせ場所にいれば面白いと思うよ。」木嶋に提案していた。
木嶋は、予想に反した答えに驚きながら…
「入れ代わり作戦だったの?」富高さんに、答えていたのだ。
「そうだよ。入れ代わり作戦です。木嶋君は、どんな考えでいたの?」富高さんは、尋ねていた。
「待ち合わせ場所に、一緒に行って驚かす作戦だと思っていました。」木嶋は、富高さんに話していた。
ふと会社のバス車内を木嶋が見渡すと…タイミングが悪いことに、富士松さんが乗っていたのだ。
「マズイ。今の会話を聞かれたかも知れない。」
木嶋の表情が、引き攣っていたのだ。
富士松さんに、
「あなたが好きです。付き合って下さい。」
木嶋が、素直な気持ちで想いを打ち明ければ悩むことなど要らないのだ。 富士松さんに、良い印象を与えたくてその機会を伺っていた。もどかしさを感じながらも、打開策を見出だせずに、一日、また一日、時間が過ぎ去って行く。
富高さんは、
「木嶋君、表情に余裕がないけど何かあったの?」冬だと言うのに、冷や汗を掻いていた、木嶋に聞いていたのだ。
「いや?何でもないよ。」木嶋は、富高さんに答えていた。
富高さんは、
「もし、具合が悪いなら…はるかさんと会えないと電話した方がいいよ!」木嶋に話していた。
送迎バスが最寄り駅に着いた。
「プシュー。」エアー音が聞こえ、ドアが開いたのだ。
「ありがとうございました。」乗車していた人たちが、一様に、運転手さんに声を掛けていく。
「お疲れさま。」
運転手さんが、一人、一人、丁寧に 言葉を返していく。
木嶋も、
「ありがとうございました。」
運転手さんに、会釈をして、バスのステップから降りて行く。
木嶋のあとに、富高さんも降りたのだ。
いつものように、最寄り駅のコンコースを歩き、一度、立ち止まったのだ。
「どのルートで行こうか…?」木嶋は、富高さんに尋ねたのだ。
富高さんは、
「木嶋君の考え方で…どっちでもいいよ。」
富高さんと飲みや野球観戦などを一緒に出かける時は、お互いの通勤ルートを利用していた。
以前、富高さんと、麻美さんのいるクラブ『U』に行った日は、相鉄線ルートであった。
今回は、市営地下鉄で行くの可能性が高かった。
木嶋は、迷いながらも
「今回は、市営地下鉄で行きましょう。その方が早く横浜駅に着くので…。」
「木嶋君、それでいいの?」富高さんは、木嶋の回答に疑問を持ったのだ。
「いいよ。」木嶋は、気さくに富高さんに答えたのであった。
市営地下鉄の乗り場に歩き出したのだ。
富高さんは、通り道に、【コンビニ】を見つけた。
「木嶋君、飲み物を買ってくるよ!何か飲むかな?」木嶋に話しかけたのだ。
「ありがとうございます。ホットのペットボトルのお茶でいいよ。出来れば短いサイズでお願いします。」富高さんの問いかけに、答えたのだ。
「了解しました。チョット…買ってくるから待っていてね。」木嶋に言い残し、富高さんは、コンビニの中に入って行ったのだ。
木嶋が、携帯のディスプレイを覗くと、メールの着信があったのだ。
受信メールボックスを覗くと、それは、はるかからであった。
「木嶋さん、今、どちらでしょうか?」
「今、会社の最寄り駅です。」木嶋は、はるかにメールを送信したのだ。
直ぐ、木嶋に、メールが返ってきたのだ。
「私は、今、横浜駅近辺にいますよ。着いたら連絡を下さい。」木嶋は、受信したメールを読んだのだった。
木嶋は、
「了解しました。横浜駅に着いたら連絡します。」敬礼をしているた顔文字を文章の最後に入れて、はるかにメールを送信したのだった。