第113話
現場に戻り、午後の仕事が始まる前に、木嶋は、残業があるのか解らず、
「今日って…残業…あるのですか?」溝越さんのデスクに訪ねて行った。
溝越さんは、
「今日は、定時でいいよ。今年は、まだ、始まったばかりで、先は長いぞ。何か予定があったのか?」木嶋に聞いていた。
木嶋は、
「横浜の若い女友達が、仕事が早く終わったら横浜で、会いたいと話しがあるのですが…どうしたら良いですかね?」溝越さんに問いかけていた。
溝越さんは、
「女友達だろうが、女性は女性なのだから…会って話しをすればいいよ。その女性は、横浜で、木嶋が良く行っているクラブの人ではないのか?」
木嶋は、
「そうです。自分が良く行くクラブの人です。もうすぐ成人式だと話していましたよ。」溝越さんに答えていた。
「成人式?20歳か?若いな…夜の仕事をしている若い女性たちは、まともな人は、極僅かだ。木嶋は、優しいから騙されるなよ。」溝越さんは、木嶋に諭していた。
木嶋は、溝越さんの話しに、首を縦に振りながら納得していた。
年齢を重ねている人の話しは、重みがあり良いものばかりである。
自分が必要か…不必要か…その時々(ときどき)で取捨選択すればいいのだ。
溝越さんや三谷さん、小室さんの話しを聞く時は、頭の中を空にして聞くことが大切であると感じたのだ。
それは、麻美や玲が、忠告しているのも、理解が出来て来たのだ。
その先輩たちや周りの人たちの言うことを聞けば、間違いないはすである。
木嶋の心の奥底にいる、《ジギル》と《ハイド》の戦いがいつも続いている。
優勢なのは、《ジギル》である。
《ジギル》を《ハイド》が倒さない限り無理である。
この世界で、木嶋が好きで交際、結婚をしたいと女性が、富士松さんと、はるかのどちらか選択しろと言われても、永遠に答えが出ないのだ。
木嶋には辛い。
「溝越さん、いい話しを聞かせて戴いてありがとうございました。」溝越さんにお礼を述べたのだ。
溝越さんは、
「女性は、そのクラブの人だけではないのだから、ダメなら他に切り替えることも大切たぞ。頑張れよ。」木嶋を激励していた。
木嶋は、
「ありがとうございます。」溝越さんに話して、その場を離れて行ったのだ。
仕事が終わるチャイムが、
「キーン、コーン、カーン、コーン」と鳴り響く。
自分の作業したエリアの清掃を終わらせて、ロッカールームに歩いていた途中…。
「ピローン、ピローン、ピローン」携帯の着信音が鳴っている。
ディスプレイを覗いた。
はるかからであった。
木嶋は、電話に出た。
「もしもし…木嶋ですが…。」
「私、はるかです。木嶋さん、今日は、残業ですか?」木嶋に尋ねていた。
木嶋は、
「残業はないです。今、ロッカールームに向かって歩いているところです。」はるかに答えたのだ。
はるかは、明るい声で…
「じゃあ…横浜に出てくることは可能ですか?」木嶋に聞いていた。
木嶋は、
「どちらにしても、横浜駅で乗り換えなので、待ち合わせするなら良いですよ。」はるかに話したのだ。
はるかは、
「ヤッター。そうと決まれば…待ち合わせしませんか?待ち合わせ場所は、メールで連絡します。それでいいでしょうか?」
木嶋は、
「いいですよ。その代わり…自分が判る場所で…。後は、はるかさんが遅れずに来ることですね。いつも、待ち時間が長いので、【ロスタイム】が発生してしまうので注意してもらいたい!」はるかに話したのだった。
「なるべく、早く行くようにします。横浜には、どれくらいで着きますか?」はるかは、木嶋に聞いていた。
「会社を出てから、40分ぐらいではないですか?」木嶋は答えたのだ。
はるかは、
「夕方6時過ぎぐらいですね。」
木嶋は、
「そのくらいで着くはずですよ。」
「時間を見計らって…メールします。」はるかは、木嶋に伝えたのだ。
木嶋は、
「了解しました。」はるかに話し、電話を切ったのだ。
ロッカールームに入り、富高さんが着替えていた。
「木嶋君、今日は、はるかさんと会うの?」木嶋に尋ねていた。
木嶋は、
「これから会うよ。」富高さんに話したのだ。
富高さんは、
「チョット、はるかさんに、《サプライズ》しようよ。」木嶋に伝えたのだ。