第107話
木嶋は、携帯の《メール受信ボックス》を開いた。
メールの着信順は、はるか、麻美、玲の順で来ていたのだ。
最初に読んだのは、着信順で最後にきた、玲のメールであった。
「木嶋君、もうすぐ誕生日なんだよね。随分、会っていないから、新年の挨拶を兼ねてクラブ『O』に来て…?」木嶋に誘いのメールだった。
木嶋は、
「どうするべきか…。3店、全部に行くべきか?行かないべきか?」思案していた。
悩める子羊みたいである。考えあぐねた結果は、
「今は、まだ回答が出来ないので、もう少し時間を下さい。」木嶋は、玲にメールを送信したのだった。
玲からメールがすぐ来たのだ。
「いつ頃、判るかな?」木嶋に問いかけていた。
木嶋は、
「一週間後に、返事が出来ると思います。」玲に送信したのだった。
玲は、
「木嶋君、前向きに考えて下さい。」笑顔の顔文字入りで、木嶋にメールをしたのだ。
木嶋は、
「了解しました。」敬礼している顔文字入りのメールを玲に送信したのだった。
次は、麻美のメールをチェックして読み出していた。
「木嶋君、今月、誕生日を迎えるだね。クラブ『U』に、富高さんと一緒に顔を出しに来て下さい。はるかさんのいるクラブ『H』より若い女性が大勢いますよ。」木嶋の心を揺さぶっていた。
木嶋も、一瞬閃いたのだ。
「そうだな。麻美さんに、会わないといけないかな!はるかのことで大分迷惑をかけてから…。富高さんに、話してみよう。」そう思ったのだ。
木嶋は、
来週、会社に行った時に、「富高さんに麻美さんからのメールの内容を見せてから、相談してみよう」と決めたのだった。
「麻美さん、ありがとうございます。来週、会社に行ったとき、富高さんに相談してから連絡をします。」木嶋は、麻美にメールをしたのだ。
麻美からの回答を待っていた。
最後に、はるかのメールを木嶋は、読んでいた。
「木嶋さん、先日は、ありがとうございました。もう少しで、誕生日を迎えますね。普段から木嶋さんには、お世話になってばかりなので、私に、誕生日をお祝いさせて戴けませんか?返信を期待して待ってます…。」はるかが、木嶋に問いかけていた。
木嶋も、はるかのメールを読んで、胸を打たれたみたいである。
「どうしようかな?はるかとは、いつも、クラブ『H』の出勤前に、カフェレストランなどで、一緒に過ごしている時間が多いからね…。今回は…悩むね。麻美さんも、玲さんも、誕生日のお祝いをしてくれるなんて話しがあるとは思わなかった。自分の身体が3等分あるならそうしたい気分。一年に一回の誕生日だし、好きなはるかと過ごすことが最善の選択かも知れない…!ただ、自分の誕生日に、富高さんを巻き込むのも良くない。、はるかのクラブ『H』に連れていくよりも、麻美さんや玲さんのいる店に行った方が得策かな?」木嶋は、ふと考えたのだった。
富高さんと、はるかでは年齢も離れすぎていて、話しが合わない。会話が続かなくなる確率が高いのだ。
それに、麻美さんや玲さんの方が、気心知れていて、話しをするにも話題も豊富だ。
はるかが、木嶋と富高さんに対して、気を使わないと言っても、気を使わせてしまう。
富高さんが、木嶋に遠慮がちになり、話しをしずらい雰囲気を味合わせてしまうのが、木嶋には、苦痛に思っていた。
木嶋は、
「ありがとうございます。はるかさんの提案を受けさせて頂きます。誕生日は、一年に一回しかないので、お祝いをして戴けるだけでいいですよ。」はるかにメールを送信したのだった。
木嶋が、3人のメールを読む前の険しい表情から一点して、緩やかな表情に変わっていたのだった。
あとは、麻美と、はるかからの回答待ちの状態だったのだ。
どちらが先にメールの受信が来るのだろうと、予想をしながら携帯の着信音が鳴るのを待っているのだった。