第105話
はるかは、
「牛カルビの葱塩焼き」を小皿に盛り、木嶋に渡し、一口、食べたのだ。
「塩味が利いて、美味しい。」はるかが、木嶋に問いかけていた。
木嶋も、一口、入れて見た。
「なかなか塩味が利いていて、自分好みの味だよ。」はるかに答えたのだ。
はるかは、
「店員さんが、オススメする料理ですね!」食べながら感心していた。
店員さんが、
「鶏と玉子とじご飯」と「生ハムグリーンサラダ」を運んできたのだ。
木嶋は、ご飯党なので、お腹がいっぱいになる、このメニューが良かったのだ。
はるかが、先ほど運ばれてきた2品を、小皿に取っていた。
クラブ『H』では、自然な光景である。
木嶋は、最初にデートした時に、
「えっ、こんなことをされていいのだろうか?」驚きを感じながらも、一抹の不安を抱いていたことがあったのだ。
人は、慣れてくると驕りになってくるのである。
木嶋と、はるかは、出会った瞬間が、眩し過ぎて、まばゆい光りを解き放たれていた。
運命的な出会いは、どこで訪れるかは判らない。
木嶋の中では、一番、強烈な【インパクトフラッシュ】であった。
現実に戻れば、木嶋が、クラブ『H』に通うのは、はるかがいるからなのだ。仕事のストレス発散もあるのだ。
それは、麻美のクラブ『U』や玲のクラブ『O』に行くのも同じなのだ。
木嶋は、
「はるかさん以外の女性には興味がない。」はるかに話してはいる。
心の奥には、常に、富士松さんと交際が出来ないかと野望があるのだ。
誰でも野望はある。
それが、良い方向か?悪い方向?選択は、自分自身が思考しなければならない。
木嶋は、悩んでいた。
いつかは、決断しなければいけないことを…
《プツン》と心身のバランスを崩すと、人は、犯罪を起こしてしまう。
木嶋は、恵まれている。
はるか、麻美、玲の3人がいることにより、心身のバランスが保たれていると言っても過言ではない。
一挙両得と言う言葉はあるが、独占欲の木嶋は、はるかを抱きしめたいと、いつも思いを馳せていた。
はるかを立てれば、富士松さんとの距離が遠くなり、富士松さんを立てれば、はるかとの距離が遠くなってしまう。
小皿に盛られた、「生ハムグリーンサラダ」と「鶏と玉子とじご飯」を一口ずつ、木嶋と、はるかは、頬張ったのだ。
はるかの顔が、見る見るうちに笑顔に変わって行く。
木嶋は、地元や会社の最寄り駅近くで、美味しい物を売っていると、はるかに、買ってくることがあるのだ。
最近あまりない。《サプライズ》する《タイミング》を伺っていた。
はるかは、
「自然や…最高。生ハムのサラダも、ドレッシングが効いていますし、玉子とじご飯も美味しい。木嶋さんはどうでしたか?」木嶋に尋ねていた。
木嶋は、
「玉子とじご飯は、鶏肉でヘルシー。はるかさんが気にしている【コレステロール】も大丈夫なはず。サラダも、和風ドレッシングでいいよ。こういう店に来るのもいいよね!」はるかに伝えたのだ。
はるかは、
「木嶋さん、何回か一回は、ここに来ませんか?」木嶋に問いかけたのだ。
木嶋は、
「うん。そうしようよ。」
はるかが嬉しそうに、
「ヤッター」両手を挙げて喜びを表現していた。
オーダーした料理を食べ終わり、
はるかが、
「今、何時になりますか?」木嶋に聞いていた。
木嶋は、
「今は、夜の10時になりますね。」はるかに伝えたのだ。
はるかは、
「木嶋さん、そろそろ帰りましょうか?」
「そうだね。時間も遅いからね。」木嶋は、はるかの意見に同意をしたのであった。
はるかが、先に座席を立ち、木嶋が、会計伝票を持ち、出入り口近くのレジに持って行ったのだ。
会計が終わり、はるかと一緒に、ポルタ地下街を歩きながら、横浜駅に向かった。
はるかは、木嶋が改札口に入ったのを見送りながら、手を振っていたのだった。
木嶋は、手を振りながら、東海道線のホームに上がり、電車に乗って、横浜駅をあとにしたのだった。