冒険者を助けた
冒険者になって3日目、俺たちはDランクのクエストを受けてみることにした。
クエストボードを眺めると、Dランクのクエストとしてはグリーンウルフ討伐、ゴブリン討伐、希少薬草採取、護衛依頼などがあった。
アリスと話し合って、グリーンウルフの討伐をやってみることにした。
グリーンウルフ自体はEランクの魔物だが、大抵群れでいるのでDランクの依頼になっていることが多い。
「すみません、この依頼をお願いします」
「グリーンウルフ5体の討伐ですね、これは隣町のギーノの街周辺の依頼ですが大丈夫ですか」
「問題ないです」
ゲートがなくても隣町はそんなに遠くないのだけど、俺はゲートの魔法が使えるので、隣町でも一瞬でいける。
「アリス、行こう」
「ええ」
俺たちは人気の無い裏路地に入り、ゲートの魔法を使った。
「ええぇー、何この便利な魔法」
「アリスはゲートをくぐるの始めてだったよな。どこの街でも一瞬でいけるから、今後はジマリーノのギルドに限らず依頼を受けられるよ」
アリスはゲートをでたり入ったり裏側に回ってみたり色々している。
「裏側からは移動できないのね。今度は遠くのギルドにも行ってみようよ」
「次回そうしようか、よし、そろそろ仕事だ」
俺は空間把握で、アリスはキューちゃんとで索敵を開始する。
「右斜め方向150mぐらいに8頭ぐらいの群れがいる。ただ、誰かと戦っているみたい。既にグリーンウルフは4頭ほど倒れてる」
「そうなの?苦戦してるかもしれないから急ごうよ」
そういって走り出すアリスに声をかける。
「いそぐならこれだって、ゲート!」
アリスの正面にゲートの魔法を顕現させた。
アリスはわかったとばかりにゲートをくぐり、俺もそれに続く。
ゲートの先20mでは、男の子が一人と女の子が一人いて、男の子がグリーンウルフに噛みつかれていた。
「兄やん!うわーん!誰か、誰かー!!兄やんを助けて」
女の子の悲鳴が聞こえる。
「クロックアクセル10」
クロックアクセルは100倍だと衝撃波が発生したりして大変なので10倍速のクロックアクセルを使用した。
クロックアクセルの後についてる数字は倍率だ。
女の子は手持ちのメイスでグリーンウルフを牽制していた。
俺は急ぎ男の子に噛みついているグリーンウルフに向かい、槍を突き出した。
「キャウンッ」
胴体に傷を負ったグリーンウルフは男の子から離れた。
周囲には、まだ7頭のグリーンウルフが隙を狙っている。
「ミューちゃんいけっ」
アリスはミューちゃんをけしかけると、自分も弓でグリーンウルフを狙う。
「慈愛の神ヒーリスよ、我が魔力を持ってこの者を癒したまえ、ヒール!」
女の子が兄やんと呼ぶ男の子に回復呪文を唱えた。男の子の傷がちょっとずつふさがっていく。
その間に俺は3体をしとめ、ミューちゃんが1体、アリスが1体しとめた。
残りの3体のうち1体がミューちゃんに噛みついている。
「ミュミューッ!!」
「キャーッ!ミューちゃんが」
アリスは乱戦になってきたので先ほどから弓を使うのを控えている。
俺は急ぎミューちゃんに噛みついているグリーンウルフを排除した。
すると残りの2体は分が悪いとみて逃げ出して行った。
ミューちゃんは噛みつかれたお腹から血を流している。
「慈愛の神ヒーリスよ、我が魔力を持ってこの者を癒したまえ、ヒール!」
先ほどの女の子が魔法でミューちゃんを治療してくれた。
「ミュー♪」
「あなた、いい子ね!ミューちゃんを治してくれてありがとう」
「こちらこそ、兄やんを助けてくれてありがとうございました」
「危ないところ、助かった。俺はカイ。ギーノの街の冒険者だ。こいつはメグ、俺の妹で冒険者だ」
「俺はジマリーノの街の冒険者でケイだ。こっちは同じく冒険者のアリス」
「メグちゃんはヒーラーなの?」
アリスがメグに聞いている。
「そうだよ。まだ駆け出しだけどね」
「ケイ、この子たちパーティに勧誘しない?」
アリスが小声で聞いてくる。ヒーラーはぜひ欲しい所だ。
「カイ達は2人で活動しているのか?俺たちはやすらぎの庭という2人パーティなんだが、ヒーラーを探しているんだ。良かったら一緒に組まないか?」
「兄やん、この人たち強そうだから一緒にやってみようよ」
「そうだな、俺たちも戦力的に不安はあったから、まずはお試しってことで一緒にやってみて、相性がよければ本格的に一緒にやっていく、ってのはどうだ?」
「俺たちはそれでもいいぜ、なぁアリス」
「もちろんよ。それじゃひとまずよろしくね」
「こちらこそよろしく頼む」
俺たちはカイ、メグ兄弟と握手した。
「俺たちはグリーンウルフの討伐クエストをうけていたんだが、カイ達もか?」
「いや、俺たちは癒し草の採取だ」
「カイが倒したグリーンウルフ4体と俺たちが倒した6体合わせて10体のグリーンウルフがいるが、5体ずつに分けてそれぞれ報酬をもらうってのはどうだ?」
「報酬の2割はケイ達に返すのならそれでもいい」
「じゃあ決まりね。癒し草は集まったの?」
その間に俺はアイテムボックスにグリーンウルフをしまった。
「ああ、そちらは達成した。それにしてもケイは魔法のアイテムバッグを持っているのか!」
「ああ、そんなところだ。荷物は俺に任せろ」
「それじゃギルドに報告しにいきましょう。カイ達はギーノの街のギルドよね」
「そうだ。そちらはジマリーノのギルドか?」
「そうそう。私たちは独自の近道があるから、まずはギーノのギルドに行きましょう」
そうして俺たちはギーノの街まで歩いて行った。
ゲートの魔法については現時点ではまだ伏せておいたほうがいいと判断した。
ギーノの街に着くまでに、カイの戦闘スタイルなどを聞いた。
カイはギフトの関係で武器に魔法をまとわせて戦う魔剣師というジョブだそうだ。
グリーンウルフの群れも最初は処理出来ていたのだが、不意をつかれて利き腕に噛みつかれて剣を取り落としたところに俺たちが助けに入った、という経緯のようだ。
カイ達は二人共Eランクだそうで、グリーンウルフ討伐の実績が着けばDランクも近くなるという話だった。
そうこうしているうちにギーノの街の門に到着した。
「身分証を提示してくれ」
俺たちはそれぞれの冒険者証を提示した。
「問題ないな。入ってよし」
ギーノの街のギルドは門のすぐそばにあった。
ジマリーノの街のギルドと同じ作りで、左手に酒場、右手にクエストボード、中央にカウンターという風になっている。
クエストボードからグリーンウルフ5頭の討伐依頼の依頼票もとっていく。
「クエストの達成報告に来た。こちらが癒し草。あと、グリーンウルフ5体の討伐もしてきた」
「癒し草5束で5000セリス。グリーンウルフ討伐が5体で3万セリス。グリーンウルフの討伐証明の耳はどこかしら」
「ケイ、頼む」
俺はクエストカウンターの横の素材置き場にグリーンウルフを5体出した
受付のお姉さんはちょっと驚いた表情をしていたが、すぐに立ち直って話を続ける。
「毛皮にほとんど損傷がないわね。毛皮も1頭あたり2000セリスで買い取るわ」
「あの。俺たちジマリーノの街でクエストを受けたんですが、こちらで報告することはできますか?」
「大丈夫よ、ギルド間で連絡をとる魔道具があるから伝えておくわ」
「それじゃ、これもお願いします」
そういってさらに5頭のグリーンウルフを出した。
「それではムラーノ兄妹に45000セリス、やすらぎの庭に40000セリスね」
「ムラーノ兄妹は解散して、やすらぎの庭に合流したいんだがお願いできるか」
カイが受付嬢(ネームプレートからするとマリーさんというみたいだ)にお願いした。
「分かったわ。あと1人Eランクが入るか、Dランクに昇格すればパーティランクはCになるわ。頑張って」
Eランクが3人でDランク1人分、Dランク3人でCランク1人分とカウントするようだ。
お金を受けとった後、8000セリスをカイから受け取った。
「兄やん、今日は大漁だね」
「ケイ達のおかげだ、本当に助かるな。今から俺たちの家に帰るんだが、お前たちも来ないか」
「そうだね、家の場所も覚えておきたいしお邪魔するよ。今日は俺たちがお邪魔するけど、今度は俺たちが招待するね」
「それは楽しみだ」
ギーノの街は門付近に商店街などが並んでいて、西部に住宅街があるようだった。
カイ達についていくと、小さな一軒家にたどり着いた。
庭には整えられた花が咲いた花壇があり、よく手入れされているのがわかる。メグの趣味だろうか。
「母さんただいま。まぁ、上がってくれ」
「「お邪魔します」」
俺とアリスは一声かけてからカイ達の家に入っていく。
やさしそうな目をしたカイのお母さんであろう人に声をかけられる。
「おやおや、お友達かい?狭いとこだけどゆっくりしていって」
「母さん、今日は採取依頼の途中で魔物に襲われて、危ないところをこの人たちに助けてもらったんだ。しばらく一緒にパーティを組むことにしたよ」
「あらま、命の恩人さんだったとは。街で今流行ってるフレーバーティがあるから飲んでおゆき。あったまるよ」
俺がピニャ味(りんご風味)、アリスはマスキー味(マスカット風味)を頂いた。
ほっとする味がした。




