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緊急召集と指名依頼

 3日後、久しぶりに皆を迎えにいってギーノの街の冒険者ギルドに顔を出してみた。


「あっ、やすらぎの庭の皆さん、というかケイさん、探したのよ!緊急召集だわ」


「こんにちは、マリーさん。緊急事態か何かですか?」


「そうよ。フォスのダンジョンでスタンピードが発生してしまったわ。ケイさんにはジマリーノからセブンスまでの各ギルドをまわって緊急召集に応じてくれる人を探して欲しいの」


「緊急時はそういう約束でしたね、わかりました」


「お昼までにCランク以上の冒険者・パーティを集めておくのでお昼に転送してもらえる?」


「わかりました。では他のギルドにも声をかけてきます」


「悪いけどよろしくね」


 冒険者になってから初めての緊急召集だ。

 フォスは前にダンジョンの調査をしたけど異変がおこってるようだったな。

 その延長上の話なんだろうか。

 俺はとりあえずゲートでジマリーノのギルドに向かった。


「こんにちは、イライザさん。緊急召集がかかってるということで輸送役としてやってきました。冒険者を集めてもらえますか?」


「こんにちは、やすらぎの庭の皆さん。今Cランク以上のパーティは2パーティいます。さしむきすぐに送ってもらえますか。また、お昼までに冒険者を集めておきますので、お昼頃にまた来てもらえますか?」


「わかりました。あちらのパーティの人たちですね」


「そうです。昼にはケイ君のご両親にも声をかけることになると思います」


「それなら一度家に帰って伝えておきます」


「それなら助かります」


「すみません、緊急召集に参加してくださるパーティの方たちですよね?」


「あ、ああ。そうだがお前さんは?」


「輸送役のものです。ゲート!こちらを通ったらフォスです。よろしくお願いします」


「うわお、スッゲー!これが噂に聞く時空魔法ってやつか。スタンピードなら任せとけ。帰りもよろしく頼むな」


 そういって2パーティは移動していった。

 その後一旦家に帰って緊急召集のことを両親に伝えた。

 するとすぐ向かうといって準備を始めたので、直接送ってジマリーノのギルドに伝えておいた。

 その後もトライ、ゴバン、クスーシ、セブンスのギルドにも同様に声をかけ、すぐに動かせる戦力は即座にフォスに送り、お昼までに冒険者を集めておいてもらえることになった。

 お昼になったらまた各地をめぐりフォスへと戦力を送り込んだ。

 そしてフォスのギルドに様子を見にやってきた。


「こんにちは。輸送終わりました。今の戦況ってどうなってるんですか?」


「ケイさん、ありがとう。これだけの戦力があればすぐに収束すると思うわ。城壁があるから街への被害はまだないけど、ダンジョンからモンスターがあふれて街道を通るのは危険な状況よ。ある程度あふれたモンスターが討伐されるまでは通行止めね」


「街への被害がないようで良かったです。収束するまで毎日夕方5時頃に確認に来ますね。そのときに元の街へと送っていきますから」


「お手数をかけるけど、よろしくね」


 本来なら俺たちも討伐に参加する義務があるのだが、輸送役がやられてしまっては元も子もないということで戦闘は免除されている。

 クスーシの街に行ったときに指名依頼が入っているとちらっと言われたのでクスーシの街に移動することにした。

 さしあたりは緊急依頼を優先したので内容は聞いていなかったのだ。


――――――――――――――――――――――――――――――――


「リネット様から指名依頼が入っているわ。内容はデウラカワネコの捕獲。ゴバンの街の西方にデウラ島という島があるのだけどその島にだけ生息している珍しい動物らしいわ。出来ればオスとメスの番を捕獲してきてほしいとのことだけど、受けますか?一匹あたり50万セリスだけど番で捕獲したら200万セリスよ」


「お嬢様にはお世話になっているので受けたいと思います。一言お屋敷に挨拶に行きたいのですが、ギルドからの紹介状って書いてもらえたりします?」


「ちょっと待ってね。すぐ書くわ。……さらさらっと、はいどうぞ」


「ありがとうございます」


 リネット様には、お世話になってからまったくお返しが出来ていないので少しでもお返しがしたい。

 突然訪問してもお屋敷には入れてもらえないかもしれないので紹介状を書いてもらった。

 リネット様のお屋敷につくと、門番さんに話しかけた。


「すみません、リネット様の指名依頼を受けたものなんですが、リネット様はいらっしゃいますか?こちらがギルドからの紹介状になります」


 門番は紹介状を受けとると少々お待ちくださいといって奥に入っていく。

 しばらくすると戻って来た。


「リネット様がお待ちです。邸内へ案内します」


「よろしくお願いします」


 俺たちはリネット動物園ことリネット邸の庭へと案内された。


「久しぶりね!あなたたち、指名依頼は受けてもらえるのかしら?」


「はい。リネット様にはお世話になりましたのでカワネコの一匹や二匹は捕まえて見せましょう」


「デウラカワネコは個体数もそんなに多くないと聞くわ。絶滅の危機に瀕しているといってもいい。だから、お屋敷で増やして保護したいと思ったから番で捕まえて欲しいのよ」


「それでしたらできるだけ多く捕まえて来た方がいいですかね」


「そうだと助かるわ」


「わかりました。期待して待っててください。早速行ってきます」


「早いわね。少しこの庭園で休んでからでもいいのよ?」


「いえ、見つけた後でじっくり休ませてもらいますから」


 俺たちは気が変わらないうちにとリネット邸を辞した。

 まずは、デウラ島の場所を調べなければならない。

 空間把握だと20m四方ずつしか調べられないので、目視出来る距離までまず行ってからゲートを使うのがいいだろう。

 まずはゴバンの西の海岸沿いへとゲートをつないだ。

 道行く人に声をかけてみる。


「こんにちは、すみません、デウラ島ってどこだかわかりますか?」


「こんちゃ。デウラ島ならあそこに見えとる島だべ」


「あの右から二番目の?」


「そうそう。あんたたちデウラ島へ行くのかい?だったらあそこの港から船が出てるよ」


「そうですか、ありがとうございます」


 船は使わないけどお礼は言っておく。そこまで言って気分を害されても意味がないし。

 教えてくれた人と別れた後、俺たちはゲートでデウラ島へと移動した。


「ジャングルって感じだね。アリス、キューちゃんよろしく。俺も探してみるよ」


「任せなさい」「キュキュー」


 俺は空間把握でまずは生物ではなく水場となる川を探した。


「ここから北へ一キロ行ったところに川があるから、川沿いを探索したほうがいいかもしれない」


 俺たちはキューちゃんに索敵してもらいながら川を目指した。

 

「ここは島だから独自の生態系が出来上がってるみたいね。他ではあまり見ない動物がいるわ。残念ながら猫ではないみたいだけど」


「気になる動物がいたらテイムしていいからな」


「あいよー」


 しばらく索敵しながら歩くこと20分。川に到達した。


「あっあそこ!川で魚をとってる猫がいる」


「本当だ。捕まえてみようか。クロックアクセル10」


 加速の魔法をかけ、猫に近づいていく。

 魚とりに夢中になっていた猫だが、野性の猫だからかすぐにこちらに気づいて逃げ始めた。

 川沿いを走っているのだが、猫は川の反対側に行ってしまった。

 川は浅いので、思い切って川を横切って進む。

 少ししたら猫は後ろを振り向いて、俺の姿を確認するとまた逃げ始めた。

 だが、川を渡りきった俺のほうが速度が早いので最後にはおいついて猫の首の部分をつまんで持ち上げた。


「ウニャー!ニャウニャウニャッ!」


 加速を解除したのだが、猫が暴れる暴れる。

 捕まえた猫はオスのようだ。

 とりあえずスロウボックスに放り込んだ。

 そして、みんながいるのとは反対側の川辺まで戻ってきた。


「まずは一匹、オスゲット!」


「やったー!幸先がいいね」


「ズボンびしょびしょになったけど、こうなったら後はどーんと来いだ」


――――――――――――――――――――――――――――――――


 その後も索敵を続け、合計でオス3匹メス2匹を捕まえた。

 

「こんなもんか。そろそろお屋敷に戻ろう」


 門番さんに取り次いでもらってリネット邸の庭に戻ってきた。


「リネット様こんばんわ。5匹捕まえてきましたよオス3メス2です」


「さすが早いわね。ありがとう。早速見せて?」


 俺はスロウボックスから猫を取り出した。

 ついさっきまで魚とりをしていたからか猫は濡れている。


「川で魚をとっているところを捕まえました。まだ濡れているので気をつけてください」


「それならお腹が減ってるかもしれないわね。アイリ、お魚の刺身を準備してもらえるかしら」


「わかりました、お嬢様」


 5匹の猫はさっきまでとはまったく環境がことなることに戸惑っているようだ。

 色々な動物がいるので警戒している。


「それとあなたたちへの報酬を払うわね。番二組と一匹で450万セリスだけど、ボーナスで上乗せして500万セリス払うわ。この依頼達成書を渡しておくわ。また次も頼むわね」


「ありがとうございました。カワネコ達増えるといいですね」


「ええ。成功させてみせるわ」


 こうして、俺たちは初めての指名依頼を達成した。


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