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ミリスお嬢様にバレた

 アースワンの拠点に戻って戯れていたところ、ミリスお嬢様がやってきた。

 咄嗟に、携帯PCは隠して!と言ったのだけどお嬢様にはばっちりみられてたみたいで。


「今隠したものを見せなさい!」


「はー、何のことでしょうか」


「しらばっくれても無駄よ。そこ、後ろ手で持っているものを見せなさい」


 メグがちょっとお嬢様に抵抗したが、メグの携帯PCは取り上げられてしまった。


「これは何!アーティファクトなの?みたこともない材質だわ。アーティファクトにしてはピカピカね」


「バレちゃったから仕方ない。それは携帯PCというものです。今できるのは、写真や動画を撮ったりすることです」


「写真に動画、それは何なの?」


 お嬢様は耳がピコピコして目がキラキラしている。


「実際にやってみるのが早いです。パシャッ。ほら、お嬢様が写ってますよ。これが写真です」


「何これ、すごいわ!!最高の画家に頼んでもここまで精巧な絵は描けないわ」


「ところでお嬢様、ダンスなどは出来ますか?」


「何よ唐突に。でもダンスぐらいならできるわよ」


「では少しだけここで踊って見せてもらえませんか」


「ま、まぁいいけど」


 そういってお嬢様はステップを踏みはじめる。

 俺はその様子を動画に撮った。


「もう大丈夫です、お嬢様。これが動画です」


 俺は今しがた撮った動画を再生する。

 お嬢様は覗き込むように動画を見ている。


「これは、私?自分が踊っている姿は初めて見たわ。ところでこれ、どこで手に入れたのかしら」


 お嬢様に真実を教えるとなると、俺たちが外国から来たという嘘を正さねばならない。

 お嬢様にも協力者になってもらってアースツーを冒険したほうがいいかもしれないと思い直しみんなにも聞いてみる。


「なあみんな、お嬢様に本当のことを話していいと思う?」


 俺はアセロスフィアの共通語で皆に話しかけた。


「お嬢様は財力も地位もあるし、この際協力してもらったほうがいいんじゃないかしら?」


「俺は頭脳労働は苦手だから任せる」


「本当のこと言わないとメグの携帯PC返してもらえないかもしれないから話そうよ」


「携帯PC1個ぐらいまた買えば済む話だよ。でもお嬢様に協力者になってもらうのはいいかもしれないな。分かった」


 俺はお嬢様にエッセン王国の言葉で話しかける。


「お嬢様、俺たちは外国から来たといいましたが、正確には違います。俺たちは別の星からやってきました。そしてこの携帯PCは、さらに別の星に行って手に入れたものです。なぜこの話を打ち明けたかというと、お嬢様にも協力者になってもらって別の星を探索するほうがいいかもしれないと俺たちは判断しました」


「別の星?星ってあの空にあるピカピカしてるあの星?」


 初めての人にエッセン王国があるここも星の一つだということを説明するのは難しいと思われたのでかるく流すことにした。


「そうです。このエッセン王国のあるここも星です。俺たちはここをアースワンと呼んでいます」


「アースワン、ね。もしかして、あの移動魔法で移動するのかしら?」


「正解です。俺が神様からもらったギフトで星を探して移動しています」


「何それ、すごい面白そう!私も連れていきなさい!」


「お嬢様にはバレてしまいましたからね、仕方ないです。お金が足りないのであっちの世界で換金するため来月またミスリルをもらったらまた行こうと思ってます」


「それなら私が用意するわ!早く行きたい所だけど仕事が溜まってるから二週間後ぐらいに連れて行ってくれる?」


「わかりました。待ってますね」


 俺たちは一度アセロスフィアに帰ることにした。


――――――――――――――――――――――――――――――――


 アセロスフィアとアースワンはこないだの調整で時間が大まかに同期しているので生活リズムをあまり崩さずに行き来できる。

 いつものようにカイ、メグを家に送り届け、ジマリーノの街でアリスと別れて自宅に戻ってきた。

 アースツーに行ったことで、両親に前世のことを話そうという思いが大きくなった。

 ちょうどそれを証明するのに都合がいい携帯PCも手に入ったことだし。


「父さん、母さん、重要な話があるんだ、今時間いい?」


「大丈夫だ」「いいわよ」


「まずはこれを見てほしい。これは古代のアーティファクトじゃなくて作られたばかりの道具なんだ」


 俺は携帯PCを両親に見せ、写真や動画を撮ったりしてみせた。


「これは、俺のギフトの時空魔法で別の世界にいって手に入れて来たものなんだ」


「こんなすごい道具よく手に入れたね」


「それなんだけど、俺には前世の記憶があって、前世の世界は文明の発展した世界だったからこういう道具にも馴染みがあるんだ。俺が生まれる前に神様にあって、時空魔法と万能言語能力のギフトが与えられることをその時に聞いたんだけど、それを思い出したのは成人の儀の後なんだ。神様には、世界を管理してほしいと頼まれて、今俺のアイテムボックスの中に色んな世界が入っているんだ」


「ちょ、ちょっと待った。いっぱい情報がありすぎて話についていけない。ケイは神様に会ったのか?」


「うん。イスファリア様に会ったよ。生まれる前と、時空魔法でアイテムボックスが使えるようになったときの2回会ってる。2回目は夢をみてるときにあったんだけど、起きたら夢で言われたことが現実になっていたから。このアカシックリングっていう指輪はイスファリア様にもらったんだ」


 そういって俺はアカシックリングを使ってアースツーの様子を映し出して見せた。


「これが、この携帯PCっていう道具が売っている世界だよ」


「まぁ、見たこともない街並みね。道が光ってるわ」


「携帯PCもすごいけど、神様に頂いたこのアカシックリングのほうがよっぽどすごいんだけどね。これは、アイテムボックス内のことならほぼ何でもわかるんだ。アセロスフィアのことはわからないから、アイテムボックス内に拠点を持つ方がいい暮らしが出来るとは思ってるんだ」


「アイテムボックスの中に世界があると言ったな。それはどういうことなんだ?」


「神様が俺のアイテムボックスの中に、世界の元となるアイテムを入れてくれて、アイテムボックスの中の時間を50億年ぐらい進めて色んな星が出来てるんだけど、そのうち俺たちにも住める環境の星をアカシックリングや時空魔法で調べて行き来してるんだ」


「世界の元か、とんでもないアイテムなんだろうな」


「そうだね、父さん達には想像もつかないぐらいたくさんの世界があるよ。俺たちが探検したのはまだそのうちの2個だけなんだ。ただ、文明が発達した世界を探検したら、父さん達に前世のことを話そうとは決めていたんだ。最初に行った世界はネコミミ獣人の暮らしてる世界で、文明の発展度合いもこちらとそんなにかわらなくて、アカシックリングの力で権力者と知り合いになって拠点もあるんだ」


「獣人の世界か。アセロスフィアにもネコ系獣人がいるがそれと大体同じ感じか?」


「多分そうだと思う。アカシックリングで僕達の姿に近い文明を持った生物がいる星を検索して出てきたから」


「そんなことまで調べられるのか。しばらく家を留守にしてたけどそっちの世界を探索してたんだな」


「そうそう。良かったら父さん母さんも連れていこうと思うけどどう?あ、でも言葉は通じないから俺が通訳するよ」


「そうだなー。文明の発展した世界ってのはちょっと行ってみたい。冒険者の血が騒ぐな」


「私は一度だけ行ければ十分かな。ジマリーノのおうちも守る人が必要でしょ」


「それなら二週間後にまた行く予定があるからその時に一緒に行こうよ。仲間にも伝えておくよ。猫獣人の世界をアースワン、さっき見せた発展してる世界をアースツーって呼んでるんだけど、アースワンの貴族の人も一緒にいくから無礼のないように気をつけてね」


 その後も50億年もどうやって経過させたのかとか、前世の家族の記憶があえて消されていることとか、アースワンでどんな活動をしたかとかをじっくりと両親に話した。

 一つ心のつっかえがとれたような心地がした。



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