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異世界で家を購入した

 アイテムボックスの中の世界は、一種の異世界であるので総称して異世界と呼ぶことにしようと思う。

 俺たちは、異世界の最初の拠点となるべき家を購入するために、ミリスお嬢様のよこした不動産の専門家と話をすることになった。


「というわけでして、2000万リン以内でこのお屋敷の近くでおすすめできる物件はこの2件となっております。早速見て回りますか?」


「はい、お願いします」


 一軒目は、4人で過ごすにはちょっと広いかと思われる古めのお屋敷だった。

 庭付きで、リビングキッチントイレの他に個人部屋が10個ほどある。

 今後活動していく上で仲間が増えることも視野に入れてここはキープとして、一応次を見せてもらうことにした。


 二軒目は、一軒目よりは小さいが新しい建物ですごしやすそうだった。

 個人部屋も6部屋あるので、さしむき充分と言えた。


 一軒目が1800万リンで2軒目は1500万リンだそうだ。


「どっちもそれぞれいいところがあるな。みんなはどっちがいいと思う?」


「私は従魔のスペースも欲しいから庭のある一軒目のほうがいいかなー」


 アリスは一軒目がいいようだ


「2軒目のほうが過ごしやすそうだし、俺は2軒目がいいな。6部屋あるし、余った部屋を従魔部屋にしてもいいんじゃないか」


 カイは2軒目を推している。


「あたしも兄やんと同じで2軒目がいいかなぁ」


「俺は今後仲間が増えることも視野に入れて一軒目がいいかな。従魔が庭で飼えるのもポイント高い」


「見事に意見が2-2で分かれたわね」


「最終的にはケイの決定にしたがうよ。どちらでもそれなりに過ごしやすそうなことにかわりはないし」


「それじゃあカイとメグには悪いが大きいほうのお屋敷にさしてもらうね」


「はーい」「おう」


「すみません、決まりました。最初に案内してもらったほうにします」


「それはそれはありがとうございます。お代金はミリスお嬢様から預かっておりますので、この書類にサインをお願いできますか」


 万能言語能力はすさまじく、見たことのない文字だが読み書きが出来た。


「さらさらっと、はい、これでお願いします」


「それでは、本日からお使い頂けます。鍵はこちらになります。これはおつりの200万リンでございます。今後ともご贔屓にしていただけると幸いです」


 俺は鍵を受け取り、契約書類のコピーをもらうと、不動産屋に挨拶をして屋敷の中に入った。

 契約書類のコピーはスロウボックスに保管しておいた。

 

「異世界での一個目の拠点ができたわね。これからの冒険が楽しみだわ」


 さっそく庭に従魔を放った。


「従魔の小屋が欲しいところね。この世界で揃うかしら」


「200万リンあれば買えるんじゃないか?でもこのお金、返した方がいいかな。お嬢様に聞いてみるか」


 俺たちはミリスお嬢様の屋敷に戻った。

 まずは家を購入したことのお礼をいわないとな。

 お嬢様はいつもの大広間におられた。


「ミリスお嬢様、無事家を購入することができました。ありがとうございます」


「そう、良かったわね。でも、今後もうちの部屋を使ってもいいからね?」


「しばらくは、必要なものを集めたいと思っています。あ、あとこれ200万リンのおつりです、どうぞ」


「そのおつりは差し当たりのお金として持っていなさい。何かと入用でしょう」


「いいんですか?結構な大金だと思いますが」


「私がいいといったらいいの。持っておきなさい」


「そうですか、ありがとうございます。ところでお嬢様、従魔の小屋が欲しいのですがこの街にそういったものを扱っている店はありますか?」


「大通りにあると思うわ。具体的な店まではわからないけど、メリーに案内させるわ。メリー」


「はい、お嬢様。ダリヤ家具店に置いてあると思いますので案内して参ります」


「いつもすみません。お礼にゲートで行きたい場所があればどこでも連れて行ってあげますよ」


「それは魅力的な提案ね。街道を通らなければ危険もないし。考えておくわ」


「では行って参ります」


 メリーさんに連れられて大通りを目指すことになった。

 お屋敷は広いので外に出るまでにも結構時間がかかる。

 ただ、街の中央部にお屋敷があるため、大通りは屋敷からすぐの立地にあった。

 

「メリーさん、この国では従魔の証のようなものってあったりしますか?俺たちの国では赤いリボンがそうなんですが」


「一般的には黄色いスカーフがそうですね。でも今なさってる赤いリボンでも従魔の証としては通用すると思いますよ」


「そうなんですか、それなら良かった」


「おっと、着きました。ダリヤ家具店です」


 ダリヤ家具店に入ると、人懐っこそうな店主が迎えてくれた。


「すいません、今連れている従魔の小屋を買いにきたんですがいいのってありますか?」


「いらっしゃいませ。おっとこれは珍しい、異国の方ですかな。従魔もこの辺では見かけないものばかりですな。その狼のような従魔ならこちらの犬小屋がちょうどいいでしょう」


 確かにウーフは犬小屋で良さそうだ。


「バニ次郎とミューちゃんも犬小屋でいいな。ラッキーとポーちゃんはもうちょっと小さい小屋で、キューちゃんは一番小さい小屋で充分かな」


「実際に入ってもらってサイズが合うか確認してもらってもいいですよ」


「それは助かります。アリス、実際に入ってもらって確認していいってよ」


「それなら感覚をリンクさせて入り心地を確かめるわ」


 しばらくの間アリスは一匹ずつ小屋の入り心地を確かめていた。

 そして一通り確かめた後、6つの小屋を決めたようだ。


「それでは、これらをください」


「犬小屋3つで3万リン、もう少し小さい小屋が2つで1万リン、リス小屋が3000リンで合計43000リンになります。5万リンですね、では7000リンのおつりです。ご利用ありがとうございました」


 貨幣価値についてはメリーさんにさっき聞いておいた。一万リン玉が200個あるのでそれから支払いをした。

 5人でそれぞれの小屋を持ってダリヤ家具店を後にした後、まわりの人に見つからないようこっそりスロウボックスに回収した。

 その後フォイエルバッハのお屋敷でメリーさんと別れ、拠点の屋敷へと戻ってきた。

 庭にスロウボックスから小屋を取り出すと、従魔は思い思いに小屋に入ったりひなたぼっこしたりしていた。

 アリスから預かっている従魔のエサもスロウボックスから取り出し、置いておく。

 これでひとまず従魔については安心だと言えるだろう。


「各部屋、ベッドがついているね」


「誰がどこを使うか決めておこうか」


「はいはーい、あたしこの端っこから2番目の部屋がいい」


 メグの主張する部屋を覗いてみると、過去に女の子が住んでいたのかぬいぐるみなどが置いてある。


「可愛い部屋ね。私はその向かいがいいわ」


「俺とカイは角部屋にする」


 さしあたっての部屋決めは終わった。

 アリスは以前王都で買ったホーンロッピーのぬいぐるみを出して部屋に置いている。

 3匹のうち、一匹はアセロスフィアの自宅に、一匹はここ、そして最後一匹はスロウボックスの中にいる。

 この後、再び大通りに出て台所用品や食料(毒の確認済)を購入したりして拠点を整備した。


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