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アイテムボックス経過50億年

 それから俺たちは順調に依頼をこなして行き、7月過ぎになった。

 現在アクセルボックス内の時間は52億年が経過している。

 そろそろいい具合な星が誕生している頃だと思い、アカシックリングで検索してみるとアセロスフィアの世界と似た環境で重力もほぼ同じぐらいの星が多数見つかった。

 一旦アクセルボックス達のクロックアクセルは解除して、そろそろいろんな星を冒険してみようと考え始めた。

 前世の言葉でいえば、地球と同じような環境の星はスーパーアースと呼ばれていたのを思い出す。

 アカシックリングでおすすめの人類と似た種族が暮らしている星をスーパーアース1号、略してアースワンと名付け、アースワンを探索するための準備を始めることにした。

 アースワンは今いる世界アセロスフィアと同程度の発展具合で、とっかかりとしては良いだろう。

 まずは、一緒に探索してくれるメンバーへの説明からだ。

 今日は俺の家にいつもの4人に集まってもらっている。


「今日は集まってもらってありがとう。実はみんなに話したいことがあるんだ。俺、実はイスファリア様に会ったことがあるんだ」


「イスファリア様に会っただって!?何言ってるのケイ」


「一番初めに会ったのは、俺が前世で亡くなってこの世界アセロスフィアに転生を果たす前になる。実は俺、すべてではないけど前世の記憶があるんだ。前世の世界はすごく文明が発展した世界だったから、普通の人が知らないことを俺は知っていたりする。例えばこの世界アセロスフィアが大きな球体になっていることとかね。球体だから、東方向にずっとずっと進んでいけば一周して西方向から同じ場所に戻ってこれる。でもこの世界ではまだそこまで船での移動手段が発達していないから、そこまで調べた人はいないでしょ。会ったのはその時だけじゃなくて、容量無制限のアイテムボックスの魔法が使えるようになった時にも夢で出会ったんだ。その時に、俺のアイテムボックスに世界の元みたいなアイテムをもらって、今俺のアイテムボックスにはいろんな世界がつまっているんだ。その世界を一緒に探索して欲しくて、今この話をしてる。まったくの別世界だから、みんなは言葉も通じないだろう。でも俺は万能言語能力というギフトも持ってるから、俺が通訳すればそれについては何とかなると思ってる。ここまで話、ついてこれてる?」


「別世界を一緒に探索してほしいというのはなんとなくわかったわ」


「結局そこのところだけ理解してくれたらいいかもしれない。それでね、俺、アカシックリングっていうイスファリア様にもらったアイテムがあって、それを使って色々アイテムボックス内のことを調べることができるんだ。俺は、空気の成分や環境がアセロスフィアと大体同じで人間に似た生物が暮らしている場所って条件で調べたら見つかった世界、アースワンを探索しようと思っているんだけど、まだ色々調べることができるから例えば何かにこまっている人で調べてその人の近くにゲートをつなげて俺たちが解決してあげれば友好的な関係が築けるかなって思うんだ」


「それだったら、それなりに地位のある人を助けた方がいいかもしれないわね」


「なるほど。それなりの地位にあって困っている人か」


「例えばそれなりの地位にある人が魔物に襲われているところを助けるとかしたら、わかりやすいんじゃない?」


「地位のある人は充分な護衛もつけてるだろうから、護衛が少なかったり魔物に負けそうになってるという条件もつけた方がいいかも。やってみるね」


 俺はアカシックリングを操作して、今の条件で検索してみた。すると、何件かヒットしたのでその中で一番地位の高い人で絞り込んだ。

 アリス、カイ、メグはホログラムが珍しいのか目をぱちくりしている。


「突然だけど、今から手助けにいこう。みんな戦闘準備OK?」


「ちょっと待て、すぐ準備する」


 カイが愛用の剣を取りにいってすぐ戻ってくる。

 アリスも弓をとってきたようだ。メグもメイスを準備した。


「空間接続!」


 俺たちはもう加速はしていないアクセルボックスの中に入って行った。

 場所は森の中。馬ではなくロバみたいな生物がひいている馬車を取り囲むゴブリンの亜種のような魔物が10体ほどいる状況に出くわした。

 護衛の人たちが戦っているが、護衛の数が2人と少なく負けそうになっている。

 俺は万能言語能力を意識して叫ぶ。


「助太刀する!」


「どなたか存じないが助かる」


「みんな、クロックアクセルをかけるからやっつけちゃって。クロックアクセル10」


「ソードエンチャント ファイア」


 カイが剣にエンチャントをかけて異形に斬りかかった。


「行け、ミューちゃん、ラッキー、ウーフ」


 ミューちゃんは自慢の角で、ラッキーは火魔法で、ウーフは噛みつきでそれぞれ異形を攻撃した。


「えぇーい!」


 メグもメイスでぶっ叩いている。

 みんなの活躍で、すぐに魔物は葬りさられた。

 俺はクロックアクセルを解除した。


「何とかなりましたね、無事ですか?」


 俺は護衛の人に声をかけた。


「ええ、ちょっと怪我はしましたがほっとけば治ります」


「メグ、回復魔法をかけてあげて」


「慈愛の神ヒーリスよ、我が魔力を持ってこの者を癒したまえ、ヒール!」


「おお、痛くなくなりましたぞ!ありがとうございます」


「痛くなくなってありがとうだって、メグ」


 言葉がわからないであろうメグに通訳した。


「それは良かったです」


 そういってメグは微笑んだ。

 改めて護衛の二人を見てみるが、耳がネコミミになっている以外は俺たちとほとんど見た目は変わらなかった。

 アセロスフィアにも獣人はいるのでもうほとんど同じ人種が住んでいる感じだ。


「ゼノ!バノ!無事なの?」


 馬車から村娘といった恰好の少女が現れた。

 地位が高いで検索したので、お忍びなのかもしれない。


「お嬢様、とおりすがりの冒険者に助太刀頂き、グーゴどもはやっつけましたぞ」


「見事なお手前でしたな。動きが素早いのなんの」


「あなたたち、ありがとう。私はミリスという。あなたたちは私たちの命の恩人ね、一度うちにお招きしたいのだけどいかがかしら?」


「俺はケイといいます。すみません、俺たちは外国からやってきて言葉が分かるのは俺だけなんです。ですがお招きして頂けるのであればそれに預かろうと思います」


「見たこともない可愛い動物を連れているわね。それに耳は怪我してるの?」


「耳はありますよ。こういう種族なんです。それとこちらのアリスがテイマーです。外国の動物ですから珍しいのでしょう」


「触ってみてもいいかしら?」


「アリス、触ってみてもいいかって」


「いいんじゃない?普段は大人しいし」


「いいそうですよ。普段は大人しいから大丈夫だそうです」


 そういうとミリスお嬢様はミューちゃんにおそるおそる触った。


「フワフワだわ、すごい」


「フワフワだって、アリス」


「ブラッシングしてあげてるからね、毛並みはいいのよ」


「お手入れしてるからフワフワなんだそうですよ」


「そうなのね、愛されてるわね、この小動物は」


「ミューちゃんです」


「ミューチャン」


「ミミュー」


 ミューちゃんが名前を呼ばれたのに反応した。


「名前が呼ばれたことが分かるみたいですよ」


「賢いのね、ミューチャン」


「ミュッ」


 俺はアイテムボックス内の世界では自重しないことにした。

 何か困ったことがあっても最悪その星に行かなければいいだけなので、メリットのほうが上回ると判断したからだ。


「ミリスさん、この馬車はどこまで行くのですか?」


「この街道を抜けた先にあるフォイエルバッハの街までよ」


「そこまではおおよそどのぐらいの時間がかかりますか?」


 距離を聞こうとしたが、距離の単位がわからないので時間を聞くことにした。


「バーロ馬車で20分ぐらいよ」


 バーロとはこのロバみたいな動物のことだろう。

 俺は空間把握を使って街道の先まで見た。

 街道の突き当たりっぽい場所が見えたのでそこに馬車も通れるサイズの大きめのゲートをつないだ。


「それならここを通ってください」


「えっ、どゆこと。えっ、もうフォイエルバッハの街に着いてる!?」


「これは俺の能力です。知覚できる場所なら一瞬で移動できます」


「そ、そんな能力は聞いたことがないわ!でも、実際に着いてるし、信じるしかないわね」


「この能力でパーティメンバーは外国からやってきたんですよ」


「な、なるほど、それなら納得だわ」


 フォイエルバッハの街には検問などはなくそのまま街に入ることが出来た。

 お招きしてくれるということなので、ミリスお嬢様について行く。

 しばらくして、かなり大きな建物が見えてきた。

 西洋風のお城のような建物だ。お城の四隅には尖塔のような塔が立っている。


「ミリスお嬢様、またお忍びで城下に出ていらしたのですか。お嬢様がいないということで大騒ぎだったんですよ」


 館の門番らしき人が声をかけてくる。


「悪いわね。今回は本当に危ない目にあったから、ちょっと懲りたわ。次からは気をつけるわ」


「危ない目にあったんですか!?お嬢様は大事なお体なんですから気をつけてください」


「こちらの方たちが助けてくれたの。命の恩人だからおもてなしするように伝えて頂戴」


「そうですか、わかりました。早速伝えて参ります」


 そうして、俺たちは大きなリビングのような場所に通され、そこで寛いでいてと言われた。

 しばらくするとドレスアップしたお嬢様が戻ってきた。



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