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侯爵家に招待された

 当面の目標だった王都行きを達成した俺たちは一旦クスーシの街に戻ることにした。

 クスーシのギルドにリネット様の招待状が届くと聞いていたからだ。

 ギルドの受付に向かう。


「すみません、やすらぎの庭ですがリネット様からの招待状って届いていますか?」


「あ、それなら届いているわよ。あなたたちがなかなか来ないからやきもきしてたところよ。ちょっと待ってね」


 そういって受付嬢は奥に招待状を取りに行ったようだ。

 しばらくすると戻ってきて、一通の封筒を手渡してきた。


「やすらぎの庭 ケイ殿当てで間違いないわね。確かにお渡ししたわよ。それとやすらぎの庭はカイさんとメグさんがDランクに昇格となったわ。これによりパーティランクが上がってCランクパーティとなるわ」


「えっ、もう昇格ですか」


「兄やん、やったね!これで一人前の仲間入りだね」


「ここ最近あなたたちはCランクの依頼を立て続けに達成してるでしょ。特に塩漬けだったハイスピードバニーの依頼の達成ポイントはCランクの中でも3倍に設定してあったから昇格が決まったのよ」


「そういえば俺たちは王都に行ってたんですがそういった情報はギルド内で共有されてたりするんでしょうか」


「個人またはパーティでCランク以上の人はギルド間で情報が共有されるわ。あなたたちは王都のギルドでは昇格のことを言われなかったでしょ。それはまだCランクになってなかったからよ」


「なるほど、分かりました。それじゃちょっと招待状の中身を見てきます」


「ちょっと待ちなさい。これ、侯爵家への地図だから持っていきなさい」


「ありがとういございます」


 そういって俺たちはカウンターを後にした。

 封筒には六芒星の封蝋がしてあった。おそらくこれがクスーシ侯爵家の家紋なのだろう。

 前回ハイスピードバニーを捕まえたのが4月3日で今日は4月12日、もしかしてパーティの日付が過ぎてやしないかとヒヤヒヤしたが、パーティはこの日はダメという日以外ならいつきても良いという風になっていたので助かった。

 今日は大丈夫な日だったので早速招待状を持ってクスーシ侯爵家を訪ねることにした。

 今回はせっかくなのでバニ次郎も連れてきた。

 あまり一目につかないようにアリスが抱っこしてタオルをかぶせている。


「ピピーッ」


 ごめんよバニ次郎。今は窮屈だけどもう少ししたらお仲間に会えるからな。

 侯爵家への地図をみながら進んでいると大きな建物が見えてきた。

 あれが侯爵家の建物だろう。

 

「お城って感じではないけど豪邸って感じ」


「そうだね。飾ってあるツボとかを割ると弁償が出来ないレベルの請求が来そうだ」


「あまり調度品には近づかないようにしとこっと」


 アリスは少し冗談っぽく言うが、俺も近づかないでおこうと思った。くわばらくわばら。

 しばらく歩いて門番のところについた。


「すみません、パーティへ個人的に招待された者なのですが」


 そういって招待状を見せる。


「話は伺っております。ケイ様ご一行ですね、案内しますのでどうぞこちらへ。従魔も一緒にお入りください。お嬢様は動物がお好きなので喜ぶと思います」


 門番さんが門をあけると、待合室のような場所に通された。


「ピニャ茶をいれますのでしばらくこちらでごゆっくりください」


 そうしてお茶とお茶請けを出されると門番さんは多分リネット様を呼びにいったのだろうと思われる。


「豪邸だから中もきんきらきんかと思ったけどそうでもないわね」


「落ち着いた色合いの調度品だから落ち着くね。メグ、気になってもあまり触らない方がいいよ」


「は、はいっ。ちょっとこのふわふわしてそうなやつが気になったけどやめておくから!」


 メグがちょっと危なっかしい。


「このお饅頭美味しいなー。ミューちゃんも食べてみるか?」


「ミュッ」


 ミューちゃんは基本肉系を食べるのだが、あまいものもいけるようだ。

 カイはウーフを撫でている。前も撫でていたし犬系が好きなのかな。

 バニ次郎はもう抱っこから解放されてそこら辺でくつろいでいる。


 すると誰かが近づいてくる足音がする。

 ギギーとドアがあいたらリネット様が現れた。


「ケイ!招待に応じてくれてありがとう!お茶を飲み終わったらうちの庭園に案内するわ。あら、あなたたちもハイスピードバニーを連れているのね」


「普段は連れあるかないのだけど、バニラちゃんも同族に会いたいかと思って今日は特別に連れてきましたわ」


 アリスが答える。


「そうね!バニラも喜ぶわ」


「ハイスピードバニーはお金になるせいで狙われるから外は散歩できないでしょ。ここはお屋敷が広いからお屋敷内を散歩できそうでいいわね」


「うちは広い庭園があるからその点は大丈夫よ。あなたの、ええと」


「バニ次郎ですわよ」


「バニ次郎も喜ぶと思うわ」


「しかし、あなたたちよくバニラを捕まえたわね。その辺のことを詳しく聞きたいわ」


「俺たちは採取や捕獲、調査を専門にやっていこうと思っているんです。戦力的には十分あるんですけど、生き物を殺すのは苦手でして。詳しくは言えませんが捕獲に便利な特技を持っているんです」


「私たちもあなたたちについて調べたのだけど、それってもしかして時空魔法のこと?」


 俺はアリスのほうを見た。アリスは首を横にふっている。隠すのは無理そうだ。


「ご存知でしたか。まぁ王都には連絡はいってるはずなので貴族のネットワークには知られてしまっているのかもしれませんね」


「普段は隠しているのね。でもそれだと不便なことも多いんじゃないかしら。各ギルドマスターと掛け合って特例を作ってもらう方がいいかもしれないわね」


「特例というのは?」


「時空魔法にはゲートという魔法があると聞くわ。あなたがもしそれを使えるのに隠しているなら、毎度街の門を通ったりしているのだと思うのだけど、街への入場をフリーパスにするかわりに魔物のスタンピードなんかが起こったときにゲートの魔法を使って戦力を各地から集めるといった約定を交わすことができるわ。もちろん、それだけじゃなく、権力者のいいなりになって時空魔法を使わされることのないようにきっちりと契約を結ぶわけよ」


「なるほど、そういう約束が出来れば俺としても安心なところがあります」


「あなたたちはもうCランクパーティになったかしら。本来ならば街を移動する際に行き先を告げる必要があるのだけど、ゲートを使えるような冒険者の場合は特例でそれを免除することができるわ。街を離れていてもすぐに戻って来られるから問題はないというわけよ。要は、特別扱いされる地位を手に入れてはどうかということなのだけど。私からも口利きしてあげるわよ。そのかわりといってはなんだけど、また私が飼いたい動物とかがいるときは指名依頼を出させてほしいの」


「クスーシ侯爵家が後ろ盾になってくれるなら確かに心強いです。アリスはどう思う?」


「うーん、確かに今のままってのは不便なのよね。いい話のように思うけど、デメリットはないのかしら」


「デメリットといえるほどのことがないように契約を結べばいいわ。緊急事態発生時に冒険者を集めるぐらいの仕事はしてもいいと思っているんでしょう?ならばギルド側も条件を飲んでくれると思うわ」


「そのぐらいならしてもいいと思ってます。戦争のために力を貸してくれみたいなのは断ろうと思いますが」


「それも条件に入れるべきね」


「ある程度案が固まったらまた訪ねますので力になってもらえますか?」


「ええ、私にもメリットがあるから手伝うわよ。それじゃそろそろ庭園にいきましょう」


 俺たち4人と従魔6体は揃って庭園へと向かった。


「うわぁー、兄やん、動物がいっぱいいるよ」


「これは、すごいな」


 ミニチュアパンサー、鹿、うさぎ、ポッポー、フワーピッグ、ゴバンイタチ、クダギツネ、ワイルドドッグ、モップドッグ、雪ネコ、ラクミー、それにバニラことハイスピードバニー。他にもよく知らない動物が色々いる。


「バニラ、おいで。バニ次郎が来てくれたわよ」


バニラとバニ次郎は互いのお尻の匂いをスンスンと嗅いでいる。

動物特有のコミュニケーションだ。


「この豚すごーい!こんなモコモコしたの見たことない」


 メグはフワーピッグを観察している。


「ああ、ここは天国だわ。私もいつか……あああ……」


 アリスはなんだかトリップしてるみたいだ。


「ワイルドドッグに雪ネコかー、やっぱペットといえば犬猫だなー」


 そうしてリネット動物園ならぬ庭園で遊んだのち、一週間後にまた来るという約束をして解散となった。

 


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