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ゴバンの街、クスーシの街

 フォス、ゴバン、クスーシの街はくっついているのでフォスの街で門に入る手続きをしていれば自由に行き来が出来る。

 なので、カイ達を迎えにいった後、今日はゴバンの冒険者ギルドの近くの裏路地に直接ゲートで移動してきた。

 早速ゴバンのギルドのクエストボードに向かったが、生憎捕獲依頼も調査依頼も無かった。

 俺たちは相談して、ゴバンはスルーしてクスーシのギルドに向かうことにした。

 クスーシのギルドのクエストボードにはDランク依頼 グリーンウルフにゴブリン討伐 Cランク依頼 オーク討伐 ヨロイトカゲ討伐 ハイスピードバニー捕獲などがあった。

 クスーシの森にはBランクのオーガも出現するので気をつけなければならない。

 俺たちは捕獲クエストということでハイスピードバニー捕獲のクエストに挑戦することになった。依頼票を見ると1匹につき100万セリスととんでもない金額が書かれている。

 まずは受付に話をききにいく。


「すみません、この依頼を受けたいのですが、ハイスピードバニーとはどういった魔物ですか?」


「ああ、それはCランク帯の高難易度クエストね。ハイスピードバニー自体は危険な魔物ではないけど、逃げ足が早いので全然捕まえられないのよ。見た目が可愛いから欲しがる貴族なんかが多くてね。報酬もCランク帯では突出して高いわよ。1匹の捕獲につき100万セリスとなっているわ」


「100万セリスはヤバいですね。失敗したら違約金はどのぐらい払わないといけないんでしょうか」


「1匹の報酬の2割ね。だから20万セリス払わないといけないわ。多くの冒険者はわりに合わないと思っているからなかなか受け手がいないのよねこのクエスト」


「わかりました。この依頼受けます」


「話を聞いてなかったの?すごい難しいクエストなのよ?」


「はい、難しいことは理解していますが、俺たちのパーティにはおあつらえ向きの技能を持った者がいますので」


「わかった、受理するわ」


 受付嬢は冒険者の技能が飯の種であることはわかっているため詮索はしてこない。

 そして俺たちはクスーシの街の東方にあるクスーシの森へと向かった。

 フォスからゴバン、クスーシとくる間は街の中にいたので検問はなかったが、一度外の森にでるとなると検問がある。

 そのため、直接クスーシの森へワープすることはせず、検問の列に並んで街をでた。


「キューちゃん頼んだわよ。ここはコワーイコワーイオーガもでるからね、できるだけ魔物と会わないように移動していこう」


 アリスがキューちゃんと一緒に探索を始めた。俺もキューちゃんの探索範囲外あたりを意識して索敵を始めた。


「ここらは森の外周部だから、グリーンウルフとかはぐれゴブリンとかが多いみたいね。もっと森の奥に行かないとハイスピードバニーは見つからないかも」


「そうだね、近くの索敵は任せたよ。俺は奥の方を探してみる。エンカウント避けるため、全員にクロックアクセルをかけるよ」


 そうして、魔物とのエンカウントを避けながら進むこと体感で1、2時間、前方にハイスピードバニーと思われる反応を見つけた。


「ついに見つけたかも。川沿いで草を食べてるみたいだ。ここから500mってところ。ゲート出すね」


 俺はハイスピードバニーの近くにゲートを出現させた。全員に10倍のクロックアクセルを発動しているので捕まえられるだろう。

 俺たちはゲートをくぐってバニーの前にでる。


「みんな、逃さないように回り込んで!」


 アリスとカイは左右から、俺は正面から、メグは後ろに回り込むように移動して退路を断つ。

 バニーは気づいたのか、メグのいる方向へダッシュを始めた。


「逃さないよー」


 メグがハイスピードバニーを捕まえにかかった。

 さすがのハイスピードバニーも、10倍速で動く俺たちの動きにはついていけず、あえなく御用となった。


「やったー!捕まえた」


 メグが喜んでいる。あらかじめ準備しておいたリードをハイスピードバニーにつけた。


「全体的には可愛いけどなかなか逞しそうな顔つきをしてるな」


「1匹で白金貨10枚だもの。ハンターから逃げつづける戦士の顔ね」


「白金貨10枚じゃなかったらテイムしてたかな?」


「そうね。たとえ逃げることしかできない能無しだろうが可愛ければそれは正義だわ」


「もう一匹探してみるか」


「まだ時間はあるしできたらテイムしたいわ。今バニたろうが食べてた草を持っていこう」


 既に名前がついていた。


「川沿いにまだいるかもしれないから索敵してみるね」


川に沿って索敵をすること体感15分ほど、2kmぐらい先にまたハイスピードバニーらしき反応を捕らえた。


「見つけた。ゲート出すね。さっきと同じ作戦で」


 今度はアリスのいる方角に逃げ始めたハイスピードバニー。

 

「ウーフ、体当たり!」


 加速したウーフがバニーに体当たりを敢行した。

 するとバニーはひっくり返ってしまった。

 この間に首にリードを取り付けた。


「体当たりはやりすぎだったんじゃ……」


「てへっ。目をまわしちゃったね」


 しばらくして目を覚ましたハイスピードバニーは、逃げようとするがリードに引っ張られて逃げることができない。

 起きたようなので早速アリスがテイムを始める。


「汝、我が呼び声にこたえ、我と同じ時を歩まん。テイム!」


 魔方陣がハイスピードバニーの足元に現れる。

 ポッポーの時と同じく、魔方陣はすぐに収束した。


「成功ね。この草食べるかしら」


「ピピッ。キュー」


 さっきバニたろうが食べていただけあって、すぐに草を食べ始めるハイスピードバニー。


「決めた。君は今日からバニ次郎よ」


「ピキュー」


「たださ、ハイスピードバニー飼ってることがバレたら冒険者に狙われそうだな」


「あちゃー。そうだね、冒険には連れていかずうちんちでこっそり飼おう。そうしよう」


「じゃあ一度アリスんちに行ってから達成報告しよっか」


「了解〜」


そうして、アリスの家にバニ次郎を預けてからクスーシの検問をくぐってギルドへと戻った。


「おい、あれって、ハイスピードバニーじゃねえか?」


「おいおい、マジかよ。どうやって捕まえたんだ、罠か?」


 冒険者達にメグが連れているバニたろうが目立ちまくっている。

 100万セリスだからな、そりゃー目立つよな。


「すみません、依頼達成報告がしたいのですが」


「あら、あなたたち、もう捕まえたの!?」


「はい、この通り」


「ピピッ」


「確かにハイスピードバニーだわ……依頼主に連絡するからちょっと待ってて」


 そういうと受付嬢は何やら電話のような魔道具でどこかに連絡している。


「これから依頼主の娘さんがこられるそうよ。娘さんへ引き渡したら依頼完了とさしてもらうわ」


「依頼主は貴族の方でしょうか」


「そう、ゲン・フォン・クスーシ侯爵。この街の領主よ。娘のリネット様ががハイスピードバニーを欲しがっていたそうだから依頼がでてたのよ」


「どうしようアリス、粗相があったらどうしよう……」


「向こうもこっちが冒険者だとわかってるから少々のことは気にされないと思うわ、どっしりと構えてよ」


「そ、そっか。そうだよな」


 しばらく待っていると、金髪碧眼縦ロールの見るからにお嬢様な女の子がやってきた。


「ハイスピードバニーを捕まえたってきいたのだけど本当?まぁ!あなたたちが捕まえてくれたのね!」


 緊張気味にメグが話し出す。


「このリードをどうぞっ。結構力が強いから離さないように強く持ってください」


 お嬢様はちょっと心配そうな感じでおそるおそるリードを持つ。

 俺は万が一に備えてクロックアクセルの準備をしておく。


「会いたかったわ、なんて可愛いの。ちょっと逞しそうなところも素敵ね。私はリネット。代表者の方はどなたかしら」


「やすらぎの庭のリーダーをやらせてもらってるケイです」


「やすらぎの庭のケイね。覚えたわ。今度、うちでパーティをするから招待するわ、ぜひいらして?」


「作法とか服装とかわからないので、ちょっと遠慮したいのですがダメですか」


「内々でやるパーティだからそんなの気にしないでいいのよ。この依頼、3ヶ月も誰も達成出来てなかったの。もうダメかと諦めかけていたところだったわ。あなたたちには本当に感謝しているの。どうか参加して頂戴」


「招待状が届くまでに考えておきます」


「そうして頂戴。いくわよ、バニラ」


「ピキュー」


 早速リネットお嬢様は名前をつけたようだ。

 そうして、俺たちは依頼を達成した。


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