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屋台のお面屋さん

屋台のお面屋さん ふたつのお面

作者: ウォーカー

 これは、神社のお祭にやってきた、ある男子中学生の話。


 その男子中学生は、クラスメイトたちと一緒に、神社のお祭に来ていた。

屋台のたこ焼きを頬張りながら、

クラスメイトの男子中学生たち数人と話をしている。

「この屋台のたこ焼き、すごく美味しいな。みんな、ちょっと見てくれよ。」

その男子中学生に話しかけられて、

クラスメイトの男子中学生たち数人が話し始める。

「本当に?じゃあ買ってみようかな。」

「お前、それ一個俺に食わせてくれよ。」

「嫌だよ。自分の金で買えばいいだろう。」

そうして男子中学生たち数人が、クラスメイトの集団から遅れていく。

すると、集団の先頭を歩いていたクラス委員長の女子が、

後ろを振り返って呼びかける。

「ちょっと男子!ちゃんと付いてきて。

 お祭りに行くときは集団行動でって、学校の先生に言われたでしょ。」

「はーい。」

「ちぇっ。うるさいなぁ」

「なんだよ、いつも偉そうに。」

クラス委員長の女子に注意されたその男子中学生たちは、

不満を口にしながら小走りでクラスメイトの集団に追いつく。

最後に追いついたその男子中学生に、

クラス委員長の女子が近付いてきて文句を言った。

「またあなたが原因なんでしょう。

 目を離すと、すぐどこかに行っちゃうんだから。」

その男子中学生は、自分だけ嫌味を言われたのが気に食わなくて、

クラス委員長の女子に言い返した。

「なんで僕にだけ文句を言うんだよ。」

「だって、あなたが話しかけたのが原因だったんでしょう。

 わたし、あなたのことをずっと見ていたんだから。」

自分の行いを監視されていたことに気が付いたその男子中学生は、

素直に謝るのも悔しいので、ちょっと強がって言った。

「わかったよ。じゃあ僕は別行動にすればいい。

 そうすれば、誰にも迷惑はかけないはずだ。

 後で合流すれば、学校の先生に言い訳が立つだろう。」

「あ、ちょっと!待ちなさい!」

その男子中学生は、ぶっきらぼうに言うと、

クラス委員長の女子が止めるのも聞かず、クラスメイトの集団から外れていった。

そうしてその男子中学生は、クラスメイトたちとは別行動で、

ひとりだけでお祭りをまわることになった。


 その男子中学生は、

クラスメイトの集団から外れた後、ひとりでお祭をまわっていた。

「あのクラス委員長の女子に監視されてたんじゃ、

 せっかくのお祭りが台無しだよ。

 いつも僕にだけ口うるさいんだから。

 あいつと別行動になって、これでやっとお祭りが楽しめる。」

その男子中学生は、持っていたたこ焼きを食べ終わると、

焼きそばやお好み焼きなど、屋台の食べ物を次々と平らげた。

そうしてお腹もいっぱいになった頃、お祭りの端にたどり着いていた。

お祭りの屋台もそこで途切れていたが、

そのお祭りの端から少し外れたところに、一軒の屋台があるのが見えた。

「あの屋台が最後かな。あの屋台を見てから戻ろう。」

その男子中学生は、お祭りの端から少し外れた屋台の方に歩いていった。


 お祭りの端から少し外れたところにあるその屋台には、

黒い壁が立てられていて、狐や狸など、様々なお面が飾られている。

「これは・・お面屋さんかな。お面がたくさん飾ってある。」

その男子中学生は、黒いお面屋の屋台に近付いた。

黒い壁に飾られているお面を眺めてみる。

飾られているのは動物のお面で、

どれも本物の動物からとったような精巧さだった。

「すごいな。まるで本物の動物の顔みたいだ。

 こんなに精巧なお面、どうやって作ってるんだろう。」

その男子中学生は、そのお面屋のお面を見て感心していた。

すると、お面屋の屋台の裏面から、黒い法被を着た男が姿を見せた。

「・・お面に興味があるのかい?」

思っていたことを当てられて、その男子中学生はちょっと驚いて返事をする。

「う、うん。すごく良く出来たお面だと思う。」

「こっちには、もっとおもしろいお面があるよ。」

黒い法被の男が、お面屋の屋台の裏面から手招きをしている。

その男子中学生は、黒い法被の男に誘われて、

お面屋の屋台の裏面に回り込んだ。


 「うわっ、何だこれ。人の顔か?」

黒いお面屋の裏面にも黒い壁が立てられていたが、

その黒い壁一面に、動物ではなく人の顔のお面がたくさん飾られていた。

「人の顔のお面も、まるで本物みたいに良く出来てる。

 あそこに飾ってあるお面の顔は、テレビで見たことがある。

 向こうは、昔の有名人の顔のお面だ。

 それから・・・なんだあれ。まさか・・・?」

その男子中学生は、

黒い壁に飾られたお面の中に、よく知った顔があるのに気がついた。

それは、今日一緒にお祭りに来ている、クラスメイトたちの顔のお面だった。

「あれは、僕のクラスメイトたちの顔のお面じゃないか。

 有名人でもないあいつらの顔のお面が、どうしてお面屋に。」

その疑問を聞いて、黒い法被の男が話をする。

「あれは、さっき型をとったばかりのお面だよ・・。

 試着も出来るけど、よかったらやってみるかい・・?」

「お面の試着?」

その男子中学生は、顎に手を当てて少し考え込んだが、

興味深そうな顔になって、すぐに返事をする。

「人間の顔のお面なんて面白そうだ。試着してみようかな。

 どうせ試着するなら、クラスメイトたちのお面にしてみよう。」

その男子中学生は、クラスメイトの顔のお面を試着してみることにした。


 その男子中学生が、クラスメイトの顔のお面を試着をしてみたいと頼むと、

黒い法被を着た男が、お面をひとつ手渡してくれた。

手渡されたのは、嫌いないじめっ子の顔のお面だった。

その男子中学生は、手渡されたいじめっ子の顔のお面を、顔に被せてみた。

すると、お面は顔全体に吸い付くようにして、ぴったりと固定された。

お面越しに向けられた鏡で顔を確認すると、お面は本物の顔のように見える。

いじめっ子の顔のお面は、ホクロまで再現されていて、

お面を被っているようには見えない。

「このお面、すごいな。本物の人の顔みたいだ。」

そんな本物そっくりのクラスメイトの顔のお面を見ていると、

その男子中学生にちょっとした悪知恵が働いた。

「このお面を使って、

 あの口うるさいクラス委員長の女子に、何か仕返しをしてやろう。」

そうしてその男子中学生は、本物そっくりのクラスメイトの顔のお面を使って、

クラス委員長の女子に、いたずらすることにした。


 その男子中学生は、今被っているいじめっ子の顔のお面を外した。

いじめっ子の顔のお面を返却して、改めて他のお面を確認してみる。

お面屋の屋台の黒い壁には、

スポーツ選手や有名人の顔など、様々な人の顔のお面が並んでいる。

そしてそこには、

今日のお祭りに一緒に来ている、クラスメイトたちの顔のお面も全て揃っていた。

その中にはもちろん、クラス委員長の女子の顔のお面もある。

「クラス委員長の女子の顔のお面を被って、

 お祭りの屋台で、いたずらしてまわるのはどうだろう。

 いや、いくら精巧なお面でも、女子になりすますのは無理か。」

黒いお面屋のお面は、顔しか変えてはくれないだろう。

体格が全然違う女子中学生になりすますのは無理のようだ。

「やっぱり被るなら赤の他人よりも、

 知り合いのクラスメイトたちのお面がいいと思うんだけどなぁ。

 何かいい方法はないものかな。」

クラスメイトたちの顔のお面が並んでいるのを前にして、

その男子中学生は、腕組みをして考え込んだ。

そして、あるお面を目にした時に、ふと、いたずらのアイデアが浮かんだ。

そのお面とは、今日のお祭りに一緒に来ていたクラスメイトたちの一人で、

サッカー部のエースの男子のお面だった。

「あいつ、サッカー部のエースだから、女子たちにモテモテなんだよな。

 そのお面を使えば、クラス委員長の女子に仕返しが出来るかも。」

その男子中学生は早速、サッカー部のエースの男子の顔のお面を被ってみた。

そのお面も精巧な作りで、鏡に映った顔は本物と変わらないように見える。

お面を被ったまま、黒い法被の男に尋ねる。

「このお面、ちょっと借りたいんだけど、被ったまま他の場所に行ってもいい?」

「・・ああ、お祭りの中なら構わないよ。

 でも最後には必ず、お面を返しに来てくれよ・・。」

そうしてその男子中学生は、

サッカー部のエースの男子のお面を被って、お祭りに戻っていった。


 その男子中学生は、

サッカー部のエースの男子の顔のお面を試着したまま、

お祭りの方に戻ってきた。

まわりには、お祭りの人たちがたくさんいるが、

その男子中学生が人の顔のお面を被っているということには、

誰も気がついていないようだった。

お面の効果を確認しながら、クラス委員長の女子の居場所を探す。

「クラスメイトたちはどこに行ったのかな・・・うん?あれかな?」

少し離れた場所に、中学生くらいの男女数人がいるのを見つけた。

「よし、早速合流しよう・・おっと。

 お面の顔の本人がいるところに出ていくのはまずいか。

 いくらお面が精巧でも、同じ顔の人がふたりいたら不審だものな。

 どうにかして、サッカー部のエースのあいつだけでも移動させられないかな。」

その男子中学生は、物陰からクラスメイトたちの様子を伺った。

しばらくそうしていると、クラスメイトの集団から、

数人の男子中学生たちが外れていくのが見えた。

その数人の男子中学生たちの会話が聞こえてくる。

「おい、あの屋台、見てみろよ。」

「どれどれ、くじ引きか。面白そうだな。」

「おっ、景品にサッカーボールがあるぞ。」

クラスメイトの集団から外れていくその数人の男子中学生たちの中に、

お面の顔の本人である、サッカー部のエースの男子もいた。

その数人の男子中学生たちが、クラス委員長の女子に向かって話しかける。

「クラス委員長、俺たちちょっと向こうを見てくるよ。」

「また別行動なの?君たち男子って、つくづく自分勝手ね。」

「悪いな。でも後で合流すれば問題ないんだろ?」

「仕方がないわね。わかったわよ。

 他に別行動してる協調性が無い奴もいるわけだし、

 さらに何人か別行動になっても問題ないわよ。」

他に別行動をしている協調性が無い奴、というのは自分のことだろう。

自分がいないところでまでクラス委員長の女子に嫌味を言われて、

その男子中学生はさらに腹を立てた。

「クラス委員長の女子め、これから吠え面をかかせてやるからな。」

サッカー部のエースの男子たちがいなくなるのを待って、

その男子中学生はいたずらを開始した。


 その男子中学生は、サッカー部のエースの男子のお面を被ったまま、

何食わぬ顔でクラス委員長の女子に近付いていった。

気がついたクラス委員長の女子が話しかけてくる。

「あら、サッカー部の。もう帰ってきたのね。君ひとりだけ?」

「あ、ああ。そうだよ。」

どうやら、クラス委員長の女子は、

話している相手がお面を被っていることに、気がついていないようだ。

その男子中学生は、クラス委員長の女子と話を続ける。

「ちょっと話があるんだけど、ふたりだけになれないかな。」

「話?ここじゃだめなの?」

「あ、ああ。」

「仕方がないわね。じゃあみんな、しばらく自由時間にしましょうか。」

こうしてその男子中学生は、サッカー部のエースの男子のお面を被って、

クラス委員長の女子とふたりだけで話をすることになった。


 その男子中学生は、サッカー部のエースの男子のお面を被って、

クラス委員長の女子と一緒に、お祭りから少し離れた場所に移動した。

「それで、話って何?」

お祭りから離れると、クラス委員長の女子がすぐに話を促してきた。

その男子中学生は、サッカー部のエースの男子のお面を被ったままで話をする。

「話っていうのは・・・」

お面を被って他人になりすましていても、

いたずらをいざ始めるとなると、心臓がドキドキしてくる。

それでも、さっき嫌味を言われた恨みがあるのもあって、

いたずらを続けることにした。


 「実は・・・好きです!付き合ってください!」

頭を下げて、握手を求めて手を差し出した姿勢になった。

その男子中学生が思い付いた、いたずらというのは、

女子たちに人気があるサッカー部のエースの男子になりまして、

クラス委員長の女子に嘘の告白をする、というものだった。

頭を下げたままで密かにほくそ笑む。

「しめしめ、サッカー部のエースから告白されて、

 それを断る女子なんていないだろう。

 クラス委員長の女子が告白に返事をしたところで、

 お面を外して見せて驚かせてやろう。」

そう考えながら、こっそりクラス委員長の女子の顔を伺った。

すると、予想とは違って、クラス委員長の女子は困った顔をしている。

そして、すまなそうに言った。

「・・・ごめんなさい。お断りします。」

告白を断られて、その男子中学生は演技をするのも忘れて聞き返した。

「ど、どうして!?サッカー部のエースの告白なのに?」

その質問に、クラス委員長の女子は、少し恥ずかしそうに応えた。

「・・・わたし、好きな人がいるのよ。」

「好きな人って、サッカー部のエースのあいつ・・・

 じゃなくて、俺のことじゃないのか?」

その男子中学生は、

自分がサッカー部のエースの男子のお面を被っているのを、

あやうく忘れるところだった。

クラス委員長の女子は、首を横に振って応える。

「違うわよ。」

「じゃあ、誰?」

「それは・・・。」

「クラスメイトの中の誰か?」

「・・・ええ。」

クラス委員長の女子は、顔を少し赤らめながら頷いた。

「名前は言えないけれど、その人のことはずっと前から見ていたの。

 わたしが好きな人は、怠け者で、だらしがなくて、協調性がなくて、

 でも、その人に悪気がないのは知っているの。

 あの人は、自分を抑えるのが苦手なだけよ。

 誰にでも欠点はあるのだけれど、

 自分の欠点がわかっている人は、人の欠点も受け入れてくれる・・と思うの。

 だから・・・」

そこまで聞いたところで、

その男子中学生は居ても立っても居られなくなって、早口でまくし立てた。

「ご、ごめん!僕、じゃなくて俺は・・

 とにかく、それ以上言わなくていいよ!

 それじゃ!」

その男子中学生は、お面を被っているのも演技をするのも忘れて、

その場から逃げるように走り去っていった。

「あの後ろ姿って・・・。」

走り去るその男子中学生の後ろ姿を見て、

クラス委員長の女子は、何かに気がついたようだった。


 その男子中学生は、クラス委員長の女子の前から逃げ出した後、

屋台のお面屋にお面を返却すると、すぐにひとりで家に帰ってしまった。

家に帰ったその男子中学生は、罪悪感でいっぱいになっていた。

「まさかあのクラス委員長の女子が、サッカー部のエースの告白を断るなんて。

 他に好きな人がいるって言ってたけど・・・。」

クラス委員長の女子は、好きな人は自分がずっと見ていた人と言っていた。

怠け者だとか、協調性がないとか、半分悪口のようなことも言っていた。

でも不思議と、嫌な感じはしなかった。

「ちょっと驚かせるだけのはずだったのに、

 聞いてはいけないことを聞いちゃった。

 悪い事したな。明日、謝れるかな・・。」

その日その男子中学生は、悶々と眠れぬ夜を過ごした。


 お祭りの次の日。

その男子中学生は、学校に行くとすぐに、クラス委員長の女子のところに行った。

クラス委員長の女子に、昨日のお祭りのことを謝るために。

しかし、クラスメイトたちの前では話しづらい内容だったので、

ふたりっきりで話をしようと考えた。

クラス委員長の女子を見つけて話しかける。

「あ、あのさ!」

「あら、あなた。何か用?」

「話したいことがあるんだ。昼休みにふたりで話せないか?」

クラス委員長の女子は、急な呼び出しにも関わらず、嫌な顔ひとつせずに応える。

「良いわよ。じゃあ屋上にしましょ。」

そうして、クラス委員長の女子とふたりで話をする約束をした後も、

その男子中学生はソワソワとしていた。

「ちゃんと話が出来るかな。でもお祭りのことを謝らないとな。」

それに対してクラス委員長の女子は、とても落ち着いていた。


 そして学校の昼休み。

その男子中学生は、しばらく躊躇してから、

待ち合わせ場所である学校の屋上に上がっていった。

屋上には、既にクラス委員長の女子が先に待っていた。

クラス委員長の女子は、その男子中学生の姿を見て口を開いた。

「まったく、人を呼び出しておいて、来るのが遅いんだから。」

口にした言葉とは違って、クラス委員長の女子は、怒ってはいないようだ。

その男子中学生は、クラス委員長の女子と屋上でふたりっきりになった。

それを確認すると、喉をごくりと鳴らして、

遅れたことには言い訳せず、深々と頭を下げた。

「ごめん!

 昨日のお祭りで、サッカー部のエースに化けて話をしたの、

 実は僕だったんだ。」

その男子中学生は、上ずった声で一気にまくし立てた。

それを見て、クラス委員長の女子は、ふっと笑って応えた。

「・・・気がついてたわよ、そんなこと。」

「わかってたのか!?」

「どんな方法で化けてたのかは知らないけれど、

 顔以外は変わってないんだから、あなただと分かるわよ。」

「あんなに精巧なお面を被っていたのに?」

「当たり前よ。

 わたしは、ずっと見ているあなたのことを、見間違えたりはしないわ。

 あなたこそ、気が付かなかったでしょう。

 わたしもお面を被っていたのよ。

 あなたは顔に、わたしは心に、ね。」

なんてこった。

その男子中学生は、クラス委員長の女子に仕返しするために、

いたずらを仕掛けたつもりだったのに、

逆にそれを見抜かれて、いたずらを仕掛け返されていたのだ。

その男子中学生は、観念してクラス委員長の女子にもう一度謝った。

「本当にごめん。

 やっぱりクラス委員長にはかなわないや。

 じゃあ、好きな人がいるっていうのは・・」

「・・・そ、そんなの、嘘に決まってるでしょ。

 あなたをからかうために言っただけよ。」

「なんだ、そうだったのか。ごめん・・・。

 昨日聞いた話は、誰にも言わないから。

 用事はそれだけだよ。それじゃ・・。」

その男子中学生は、クラス委員長の女子の返事を聞いて、

肩を落としてトボトボと校舎の中に戻っていった。

学校の屋上にひとり残されて、クラス委員長の女子は、

その男子中学生の後ろ姿が消えていった方を見ながら零す。

「わたしが心にお面を被って偽っていたのは、昨日と今日と、どっちかしらね。」

その言葉は、その男子中学生には届かず、屋上の空に消えていった。



終わり。


 この話は、

以前書いた「屋台のお面屋さん」という話と、舞台や人が共通の話です。

前回はオーソドックスな話を書いたので、

今回は別の可能性を書きました。

物事にはいくつも顔がある、というようなことがテーマです。


お読み頂きありがとうございました。


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