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2、混沌プロポーズ


読んで下さり、ありがとうございます‼︎







「あんた……海斗なの……?」



名前を呼ばれて怪訝な顔になる。

しかし、ヒロインはボロボロと涙を零して……俺を見つめ続けた。



「なんでっ……なんでなんでなんでっっ‼︎あんたがここにいるのよぉっ、海斗ぉっ‼︎」



慟哭に近い叫び声。

その声は何故だか、恐慌状態に陥っていたその広場を静まり返らせた。

だが、しかし。



「いや、テメェ誰だよ」



しんっ……………。

再びの沈黙。

なんか、すっごい気まずい空気が流れてた。

まぁ、ほらね?

ヒロインは俺を知ってるみたいだけど、俺は知らないし。

周りの奴らも、え?どういう状況?状態なんだろ。


「あんたっ、幼馴染の顔も忘れたのっっ⁉︎」

「いや、知らねぇよ。つーか幼馴染なんていねぇーわ」

「なぁっっっ⁉︎」


ガーンっとショックを受けるヒロイン。

流石のレジーナも可哀想に思ったのか、俺の頬に手を添えた。


「カイト……あの子、凄くショック受けてるよ?大丈夫?」

「お前、自分を陥れようとした奴の心配するのかよ……」

「んー?私としてみたらカイトがいれば万事オッケーだから、心配したって問題なしなんだよ‼︎」

「………ヤバイ……さすが俺の天使」


そんな可愛いことを言うヤツにはキスしてやる。

俺はレジーナの頬や額、こめかみや首筋にキスの雨を降らせた。

唇には人前じゃ致しません。


「私は赤城あかぎ美智留みちるよっ‼︎」


赤城?

赤城アカギあかぎ……。

そこで俺の記憶の中でヒットする一軒の家。

それは……。


「………………あぁ、ご近所さんか」


三つ隣の家に住んでいた赤城さん。

普通にご近所さんである。


「いや、それを幼馴染って言うんでしょっ⁉︎」


しかし、彼女はご近所さんという関係ではなく幼馴染なのだと主張する。

は?馬鹿じゃね?


「いや、お前は何年経とうがご近所さんでしかねぇよ。つーか学校だって違うし遊んだこともねぇだろ」


スパンっと切り捨てると、ミッシェルは愕然と両膝をついて項垂れる。

俺は面倒になって、溜息を吐いた。


「女王陛下ー。こいつら全員斬首がオススメですー」

「うわぁー。棒読みで処刑をオススメしてくるー」

「いや、だってそうだろ?王女殿下への不敬罪、冤罪、国外追放の指示などの越権行為。後なんだ?あー……まぁ、国家どころか大陸滅亡に導いた大悪人?って感じ?」

「えー?いや、そーだけどさぁ〜……レジーナはこの国出て行っちゃう?」


レイーナ女王に言われて、レジーナは「うーん?」と顎に手を添えて考え込む。

そして、ニパッと笑った。


「だって、国外追放されたし?まだ魔王じゃないからここに縛られる必要もないもん」


つまり、滅亡決定。

子息の親達はもう号泣しながらレジーナに王位を継いでくれと懇願する。


「なんなら我が息子を処刑してでも構いません‼︎」

「貴女様のお気に触った罪人などっ……」


おぉう、その言葉に子息達は顔面蒼白になってるな。

俺はそんな彼らににっこりと微笑んだ。


「お前達の顔はこの大陸中に公開されるようにしてあるから。多分、地上の国の奴らも襲いにくるだろうけど、ファイト‼︎」

『ひぃっ⁉︎』

「なっ……なんでそんなことするのよっ‼︎」

「あははっ、当たり前だろ」


俺は拳を握り締めて思いっきり地面を殴る。

ガンッッッ‼︎と凄い音と共に、小さなクレーターができた。

人々はそれをみて顔面蒼白で黙り込む。

俺は殴った手を振りながら、笑った。



「俺のレジーナが婚約してもないのに婚約破棄されて?王女なのにたかが公爵子息風情に国外追放を命じられてる。ずっっと俺といたからレジーナがテメェなんか虐めてねぇのは確かなのに、どうして冤罪でそこまでされなきゃいけねぇーんだよ。本当なら俺がお前ら殴り殺してやりたいぐらいなんだぞ?でも、俺はそんなことしない。これから先、生きながらえたまま……大陸を滅ぼす罪人として生きた方がお前らが辛いだろうからなぁ?後ろ指さされて、悪意に晒されて‼︎時には殺意や実際に剣を向けられることもあるだろう‼︎だってお前達の軽率な行動がっ‼︎大人達が滅びの未来を回避しようと頑張っていたその徒労をっ‼︎たった一人の女に現を抜かしてしまったばかりにっ‼︎全て全て台無しにしたんだもんなぁっ⁉︎お前達が引き起こした悲劇だもんなぁ‼︎あははっ‼︎」



俺はケラケラと笑う。

ヒロインと子息達は俺を見て恐怖に震えていた。


「カイト〜…危険人物モードになってるよ〜」

「おっと、ヤベェ」


レジーナの声にハッと我に返る。

ちょっと興奮し過ぎたらしい。

さて、充分に理解できたか?



「………という訳で。俺のお仕置きおしまーい」



『………………へ?』


ヒョォォォォ……………。

人々の顔が固まる。

俺はそんな彼らに呆れたような顔になった。


「いや、そもそもの話……こんな雑魚どもに国外追放言われたからって行く訳ないじゃん」

『え?』

「あはは〜。大丈夫だよ〜?ちゃんと私が魔王になってあげるよ」


レジーナもケラケラ笑って俺にスリスリしてくる。

俺はもう一度彼女のこめかみにキスをしてやった。


「えっと……説明してあげて?カイト君」


ジーニス殿下に言われて俺は説明する。


「そもそもの話、冤罪なのに国を出てく訳ないじゃん。影にお前ら監視させてたから、ちゃんと証拠も揃ってんだぞ。お前らを正論で論破するのは簡単だったけどつまらないから……いっそのこと、レジーナが消えてたらどうなるかを教えてやろうかと」

「……………つまり?」

「大人達は《未来視》を絶対視し過ぎだから。頭が硬くなってるみたいだから、未来は変えられるぞってこの際伝えようかなぁと。あ、でもお前ら六人はちゃーんと捕まえるぞー?さっき言ったように不敬罪やら越権行為とかあっから。ってかお前らが国外追放されろよ。人魚だってバレたら喰われたり、鱗剥ぎ取られて売られるだろうけど」

『ひぃぃぃぃっ⁉︎』


子息達は泡を吐いてそのまま気絶する。

…………人魚じゃなくて蟹だったのか。

だが、まだ気を失ってないのが一人。


「なんでなんでなんでっ‼︎ここは乙女ゲームの世界でしょうっ⁉︎なんでヒロインの私がっ……」


ヒロインは錯乱したように髪を掻き毟る。

そんな彼女を見て、レジーナは優しく微笑ん……。



「黙りなさい」



「っっっ‼︎」


レジーナの冷たい声にヒロインは言葉を失くす。

それほどまでに、レジーナは王として相応しい威厳を見せていた。


「確かにこの世界には転移者、転生者が存在します。時々、似たような世界観の物語が貴女達の元の世界にあるようですが……我々をそんな物語と一緒にしないで頂戴。私達は今ここで生きて、苦しんで、それでも前を向いて生きているのよ。何故、今回このようなことをしたか分かりますか?貴女はまだこの国を、生きている人を物語の登場人物だと思っているからです。物語の中であると思っているからです。ここはリセットが効かないのだと、物語通りに進む世界じゃないと、理解して欲しかったのよ」

「…………嘘だ……だって……だってっ‼︎」

「ここで死んでも、大丈夫だって。元の世界に戻れると思わないで。死んだらそこまでよ」


ヒロインはそれを聞いて……絶叫する。

俺はそれを無視して、レジーナに聞いた。


「レジーナさん」


小声で声をかけると、レジーナはパチクリと目を瞬かせて、ピシッとピースサインをした。


「いぇい。私が言ったのは嘘っぱちだい☆」


……………。

いや、さっきの威厳ある姿はどこ行った。


「………多分、言ってることは間違ってないけど……真面目キャラは合わないのな?」

「そうなんだよ〜……真面目キャラやるとその分、面白おかしくしたくなっちゃう……ってこら‼︎私、頑張ったよ‼︎褒めて‼︎」

「レジーナはいい子だなぁー。可愛いぞー。愛してるぞー」

「あぅ‼︎」


猫撫でしながら、褒めちぎるとレジーナは顔を真っ赤にして目を逸らす。

だけど、彼女の両頬に手を添えて微笑んだ。


「つーことで俺と結婚しない?」

「……………へ?」

「いや、諸々終わったら告ろうと思ってたんだ。でも、なんか真面目な感じでプロポーズとか俺ららしくないし」


レイーナ女王とジーニス殿下が呆れたような顔をしてますが、それは無視。

いや、女にとってプロポーズって大事だって分かってるけど……俺だって恥ずかしいんだよ。

だから、せめてシチュエーションはロマンチックにできないけど、素直な言葉は紡ぐから。



「一生大事にしてやんよ。つーか黙って俺のモンになれ」



……………俺は俺様系かっっっ‼︎

初プロポーズですからねっ‼︎

テンパったらこうなったわ、畜生っっ‼︎


「…………うわぉ……」


なんて言いつつも彼女は俺の首に腕を回していて。

俺はそれを見て笑う。


「結婚するぞ、レジーナ」

「いいぜ、カイト‼︎」


王女へのプロポーズがこれでいいのかって感じだが、これが俺ららしい。




ちなみに、歴代の王の中で一番混沌カオスなプロポーズだと有名になったのはここだけの話だ。






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