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1、色々頑張った転移者


よろしくお願いします‼︎







俺が自分の世界に帰れないと絶望して、立ち直って、一般教育が終わった頃。



当時のレジーナは公爵家で暮らしてたんだけど、その理由が前女王陛下の《未来視》っていうスキルで見た未来が関係してたらしい。

まぁ、言ってしまおう。



前女王陛下レイーナ様は転生者だった。


で、この世界が《恋する人魚は君に優しいキスをする》とか恥っっっずいタイトルの乙女ゲームの舞台なんだとか。



聞いた筋書シナリオでは……人間でありながら偶然、人魚の国アクオリアに迷い込んでしまったヒロイン・ミッシェル。

彼女はこの国で暮らすイケメン人魚達と恋をしてしまい、人間と人魚……種族の違いに悩み、苦しみ、真実の愛を貫こうとするって物語シナリオらしい。

痛い。

痛過ぎる。

なんか聞いてる俺の身体が痒くなったよ。

俺、そーいう甘いの苦手だから。

あ、あくまでも個人の感想だから。

アンチ乙女ゲームとかじゃないから、叩かないで下さい。

まぁ、とにかく‼︎

そのゲームで出てくる悪役令嬢(悪役王女?)がレジーナだという訳だ。




前女王陛下は、ゲームスチルで見た前女王の姿と名前と、国の名前が一緒なのを見て、乙女ゲームの舞台やん‼︎と、レジーナを妊娠してる時に気づいたらしい。

で、自分の産まれた子供が婚約破棄されて、王位継承権を剥奪されて、国外追放になることに怒ったらしいんだよね。

ってかさ?

そのゲームって逆ハーレムルートがあったらしくて、将来、この国の重要人物になるヤツ全員ヒロインに首ったけになるんだと。

絶対、国が傾くって悟ったらしい。

ゲームの時はフィクションだからって割り切れたけど、現実は別ってことだ。

まぁ、運良く《未来視》なんて能力があったから……前女王陛下は、この国の重臣達を集めてその話をしたらしい。



将来、一人の人間がこの国に紛れ込み……レイーナ女王の子が婚約破棄され、王位継承権を剥奪され、国外追放になる未来が見えたのだと。

未来ではレジーナの従兄弟……レジーナの婚約者である公爵子息が王位を継承するが、王妃をその人間に据えるだけでなく、五人の男で王妃を囲うようになると。



それを言われた公爵家当主を始め、ミッシェルに首ったけになる子息が産まれる家は顔面蒼白で倒れかけたそうだ。

普通だったら〝自分の子供が王になるなんて、なんて幸運なんだ‼︎〟って思うだろうけど、そうは問屋が卸さないのが《第Ⅵの魔王》の役割だ。

ゲームの設定では、魔王なんて役割なかったらしいんだけど……魔王っていうのはこの大陸に住む人々の負の感情に汚された魔力の濾過装置みたいなものらしい。

つまり、魔王が死んだり、ちょっとずつ溜まるゴミカス(?)みたいなのが原因で濾過装置の役目を果たせなくなったら、大陸が死ぬ=その大陸に住む人々も死ぬ。

それに、他の大陸は分からないらしいけど……この大陸における魔王ってのは、王位と共に継承するシステムらしい。

魔王としての限界がくれば、魔王の血筋たる実子に受け継ぐ。

そうすれば、魔王として限界点に達し暴走することもなく……ゴミカスによる汚れも徐々になくなっていくんだとか。

つまり、レイーナ女王の子供以外が王位を継承しても魔王として力不足であり、滅亡に至るって訳。

…………そりゃあ喜べないわな。

で、その未来を変えるためにレジーナが産まれたら、運命の日まで王配たるジーニス殿下の実家の公爵家で、王女だということを隠して育てようってことになったらしい。

ついでに子供達に何かを言うと未来が悪い方向に変わってしまうかもしれないから、当事者となる子供達にも何も言わずに。




で、長々と語られたその話を聞いた時の俺の感想。

いや、だからそこに俺をブチ込んで何させる気ですか?って感じだった。

そしたらなんて言われたと思う?


「いや、異世界人なら理解があるだろうから、ざまぁのお手伝いしてもらおうと思って」


………………まぁ、ほら。

レジーナに助けてもらったからな?

ちょっと恩返し気分で了承したら大変だったよね。

いや、マジで。

何が悲しくて


レジーナの侍従兼

女王補佐兼

王配殿下補佐兼

宰相補佐


をしなきゃいけねぇんだよっっっ‼︎

いや、マジで何事って思ったよねっ⁉︎

なんで俺、こんな目に遭ってんのってなったし‼︎

………つーか、レジーナの付き人やってっからそのついでに同じことさせられてただけか。

ほら、女王教育ってヤツ。

一応、公爵家にいても次期女王だからな。

裏では普通に親子として親しくしていたらしいし。

…………いや、待てよ…?

今だから言えるけど、もしかしてあの時点で俺が今の身分・・・・になる未来が見えてたとかじゃ……よし、なんかそれはそれで恥ずかしいから気づかなかったことにしよう。




まぁ、こうして。

レジーナの侍従をしつつ、なんだーかんだーと拳闘術(剣術の才能がなかった)と風魔法が使えるようになり……。

エグい策略家な宰相閣下に教育され、公務や政務のお手伝いを始め、なんか色々とできるようになってしまって。

貴族連中にも〝敵対するな〟、〝危険人物〟扱いされ始めた頃(確か十六歳の時か?)。




とうとうヒロインが迷い込んできた。

亜麻色の髪に桃色の瞳。

可愛らしい顔立ちではあるんだろうけど、ちょっと腹黒そうな雰囲気が隠しきれてないヒロイン。

俺は面倒そうだと思い、レジーナに「関わるの止めようぜ。面倒ごとになる」と言って了承してもらった。

この時点でゲームと違う点は……。


一、レジーナは王女としてではなく公爵家令嬢として暮らしている。

二、レジーナと他の公爵家子息との婚約は、あくまでも婚約者候補の時点でストップしてる。

三、俺がいる。

四、実は既にレジーナと恋人関係になってました。


…………えっとですね、はい。

なんか、もう気づいたらこうですよ。

ほら、考えてみて⁉︎

普通に美少女なレジーナが俺の名前を呼んで、ふにゃふにゃ笑うんだぞっ⁉︎

で、俺には懐いてるけど他の男にはちょっと人見知り気味とかっっ‼︎

ほんの少し手が触れただけでも恥ずかしそうに頬を赤らめるとかっっ‼︎

愛らしくて仕方なかろうっっ⁉︎

……………いや、マジで……アレで我慢できるヤツがいたら、そいつは勇者だわ……。

あ、きちんと女王陛下と王配殿下には報告しました。

ニマニマ微笑んでくれました。

普通に親公認出ました。

予想以上に何も言われなくて驚きましたよ、はい。



とまぁ、そんなこんなで。

俺とレジーナはイチャコラしながら、ヒロインの行動を傍観してたんだわ。

あ、言っとくけど関わるの止めてますから、悪役王女の行動はしてません。

他の婚約者がいる男に媚び売ろうが注意しないし。

ずっと公務で忙しかったから、顔を見合わせたこともないし。

ってか勝手にやってろ状態?


まぁ、それでも。

時々、影にミッシェルの監視報告をさせてたけど……まぁ、そりゃ凄い。

マジで乙女ゲーム街道真っしぐらってヤツ?

イケメン五人と順々にデートしたり、勉強したり、キスしたり、ちょっとグレーゾーンに突入気味だったり。

逆ハーレムルート目指してましたよねー。





そして……そんなこんなで運命の日がやってきた。

海神祭アクオリスの日。

レジーナと俺が王城前の広場でやっていたダンスサークルに混ざっていた時。

唐突に、レジーナの婚約者候補・・の男とその他四人+ミッシェルがレジーナの名前を呼んだんだ。



「レジーナ・シェリフ‼︎君の悪行を今ここで断罪する‼︎」



「「…………………」」


いや、マジで何言っちゃってんの、コイツ?状態だよね。

そっから語られるのはまぁそりゃ作り話に妄想話。

レジーナがミッシェルを虐めたとか、暴言を吐いたとか、殺そうとしたとか。

思わず「テンプレかっ‼︎」とツッこまなかった俺を褒めて欲しい。

隣で聞いてるレジーナなんて居眠りしかけてたぞ。



「加えて、婚約者たるボクを指し終えて……そこにいる男との不貞‼︎まさに売女だなっ‼︎ボクはそんな女と結婚するつもりはないっ‼︎貴様との婚約は破棄させてもらうぞっ‼︎」



公爵子息アウトォォォォォォォオ‼︎

しかし、まだまだ茶番劇は続く。


「さぁ、心優しいミッシェルに跪いて謝るのです‼︎」

「まぁ、謝ったところで国外追放は避けられんだろうがな」

「人殺しを国に置いておくほど、この国は優しくないし、彼女が受けた傷は深い……」

「早くお姉ちゃんに謝れよ‼︎そして出てけっ‼︎」


ピーチクパーチクひよこのように囀る男ども。

ミッシェルは涙目になりながら「みんな……」と感動した風だった。

でも、俺から言わせればな?



なんの権限あってそんなこと言えんだ、馬鹿どもぉぉぉぉぉぉぉおっっっ‼︎



「ねぇ、カイト」


レジーナの声が凛っと響き、俺の心の声も、周りの音も一切消える。

俺は彼女に「なんだ?」と首を傾げた。



「婚約してないのに婚約破棄を言われたんだけど、どうすればいいと思う?」



しんっ……と静まり返った会場。

俺は大きな溜息を吐いて、答えた。


「馬鹿につける薬はないから放っておけばいいと思う」

「えー‼︎でもでも、私、売女とか言われちゃった‼︎っていうか国外追放だって‼︎どうしよう⁉︎」

「いや、売女も何もまだ処女だろ。後、国外追放になるなら俺もついてく」

「いやんっ‼︎カイトったら、あけすけ‼︎でも一緒に来てくれるのは嬉しいよ‼︎」


レジーナが顔を赤くしながら、ペシペシと俺の腕を叩く。

ナチュラルにセクハラかましてるから、多少の耐性はできたらしい。



「あれ?まだカイト君のお手つきになってなかったんだ?」



そして現れたのはレジーナを大人にしたような女性……レイーナ女王と、珊瑚色の髪と瞳を持つ美青年……ジーニス殿下だった。

俺は怪訝な顔で答えた。


「いや、普通に考えて手を出すのはちゃんと結婚した後でしょ」

「うわ、まっじめー」

「ジーニス殿下と約束してるんで」

「あら?自分の娘が男に奪われるのが嫌だったの?ダーリン」

「あはは……可愛い愛娘だからねぇ……」


そんなほのぼのとした会話をしてたら、ガバッと視界の端っこで土下座している大人達。

攻略対象の父親だった。


「我が家の愚息が申し訳ありませんっ‼︎」

「どうかっ……どうかっ‼︎レジーナ様にはこの国に残って頂きたくっ……」

「えー?でもさぁ〜……そこの子に国から出てけって言われたし〜……」


クスクスと、レジーナは笑う。

しかし、その瞳は一切笑っていなかった。



「最悪それで大陸が、人々が滅んでも仕方ないよねぇ〜?」



『………………え?』


ヒロイン&攻略対象達がその言葉にギョッとする。

俺は両手を叩いて、注目を集めた。


「はい、ご注目〜‼︎大人の皆さんは知ってますけど、若いヤツらは耳の穴かっぽじってよーく聞けよ〜‼︎」


俺はレジーナの手を取り、恭しくその手の甲にキスをした。



「こちらに在わすお方は、レジーナ・ルゥ・アクオリア王女殿下である‼︎正統なる王位継承者……即ち次期女王である‼︎つーか、普通にレイーナ女王陛下と名前似てるし、顔一緒だろーがっ‼︎少し考えたら分かるだろ、馬鹿か‼︎お前ら‼︎」



沈黙が満ちること数秒。

そして、若者達の驚愕の声が響いた。

大人達は昔、レイーナ女王が話した未来が実現してしまったことに歯がゆそうな顔をしていて。

もう漂う空気が悲痛だった。


「ちょっ……ちょっと待てっ‼︎どういうことだ、レジーナ‼︎」

「それはわたくしから話しましょう」


公爵子息の質問にレイーナ女王が答える。

そして、過去に見た《未来視》の話をした。

レジーナが王位継承権を剥奪され、国外追放されること。

それが理由で、公爵子息が王となり、ミッシェルをそこにいる男達が囲うこと。

それが原因で……この国が、大陸が、人々が滅びることを。


「ちょっと待って下さい、女王陛下‼︎何故、ボクが王になったら国が滅びるのです‼︎」

「あら、簡単よ?貴方が魔王の器ではないだけの話じゃない」

「…………魔王…?」


若い者達がキョトンとした顔をする。

レイーナ女王は頬に手を添えながら答えた。


「そうねぇ……レジーナなら数百年は安泰だろうけど、君じゃ多く見積もって一、二年くらいかしら?」

「……一体、どういう……」

「君が無事にこの国を支えられるであろう期間よ?」


公爵子息はそう言われて顔を真っ赤にする。

ミッシェルは不安げな顔で、攻略対象の男の一人に聞いた。


「ねぇ、魔王って……」

「あれー?あんた、魔王のこと聞いてないの?」


俺はワザと彼女に話しかけるように大声で言う。



「君は人間だから知らないのかぁ〜?いや、若いヤツらは全員知らないのかな?魔王はこの大陸の穢れを綺麗にする濾過装置みたいなものだ。魔王がその役目を果たさなくなれば、この大陸が死ぬ。つまり、この大陸で暮らしてる奴らも全滅だ。その役目は代々、この国の王が引き継ぐんだけど……正統な王位継承者は君達の手によって国外追放されるようだし?滅亡待ったなしだな‼︎はぁ、可哀想に」



ワザと明るく言ってやったのに、それを聞いた瞬間……人々は絶叫した。

それもそうだろう。

たった六人の愚かな行いで大陸滅亡が決定したようなものだ。

それを回避するためにレジーナを公爵家で育ててたのに……大人達も絶望するしかないだろうなぁ。


「あらあら〜……カイトくーん。コレ、どう収拾つけるの?」

「えー……そりゃあソイツら次第っしょ?俺はレジーナと一緒にいれたらそれでいいし」

「私もカイトと一緒にいれたらそれでいいよ‼︎」


俺はレジーナの腰に腕を回し、彼女の頬にキスをする。

レジーナは頬を赤く染めながらお返しとばかりに、俺の頬にキスしてくれた。



「あんたっ‼︎一体、何者なのよっ‼︎」



だが、そんな俺に叫んでくる人物が一人。

ギロリッと睨んでくるヒロイン様に微笑んでやった。


「何が?」

「あんたがシナリオぶち壊したんでしょうにっ‼︎何がじゃないわよっっ‼︎」

「おや。お前も異世界転生者か」

「っっっ⁉︎」


それを聞いたミッシェルは目を見開く。

俺はレジーナを抱いたまま告げた。


「俺は堺海斗。異世界転移者ってヤツだ」

「……………え?」


しかし、俺はそこで思いもよらぬ事態に陥る。


「あんた……海斗なの……?」








どうやら、ヒロインは俺の知り合いらしい。









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