プロローグ 、人魚の国の魔王様と異世界転移者
よろしくお願いします‼︎
ちょっとラブコメ色が強いかもしれません‼︎
深い深い海の底。
だが、そこには煌めく宝石のような国がある。
鮮やかな珊瑚で作られた国。
そこに住むのは見目麗しき人魚達。
と、なんか物語風の語りで始めたけど、やり辛いので俺の独白風に移ります。
まぁ、場所はさっきも行った人魚の国アクオリア。
真っ白な白亜の王城の王座で、一人の少女が小さく呟いた。
「暇ねぇ……」
緩くウェーブした海色の髪に、瞳は美しい珊瑚色。
色白で女性らしい身体が纏うのは、薄いレースを幾重にも重ね、若干……いや、かなり肌の露出が多い海色のドレス。
スカートの裾が後ろだけ長いから、彼女が足をだらけされるだけで、その美しい脚線美が惜しみもなく晒される。
この国の女王であり、《第Ⅵの魔王》レジーナ・ルゥ・アクオリア様は、玉座に横座りになりながら大きく伸びをしていた。
「……おい……王としての威厳がフライアウェイしてるぞ」
「いーんだもーん。どーせお客さんなんて来ないし〜」
「いや、来るだろ。つーかこの後、会議だわ」
「もぅ‼︎カイトは働き過ぎ‼︎もう少し休みなよぉ〜‼︎」
「そー思うならお前が働いて俺の仕事量を減らしてくれよ、女王陛下?」
レジーナは「今日は嫌っ‼︎」と満面の笑顔で即答する。
……いつもはやればできる子なのに、今日はやる気ゼロらしい。
俺は「はぁ……」と溜息を吐いた。
俺、堺海斗は異世界転移者ってヤツだ。
七年ほど前……中学二年生の時、臨海学校で海で溺れ、そのまま異世界転移してしまった。
そこで助けてくれたのが目の前にいる、まだ女王になる前のレジーナだった。
今はこんなほのぼのとやってるけど、ここにくるまでまぁ、大変だった大変だった。
この世界に来た時は「異世界転移きたー‼︎」って喜んでたけど……誰かが召喚した訳じゃなく、なんかの弾みで転移しちゃったから、元の世界へは戻れないと知った時の絶望は半端なかった。
だって、そうだろ?
家族も、友人も、生活も、夢も、何もかも置き去りにしてきたんだ。
絶望しない人間の方が凄過ぎる。
………まぁ、底抜けに明るいレジーナが俺と一緒にいてくれて。
なんとか立ち直ってこの世界で生きていこうと決めたんだが、本人にそれを言うのは恥ずかしいから言う気はない。
で、そっからは俺の教育な。
異世界人だから、最低でもこの世界の常識を知らなきゃいけなかった。
この国のこと、この大陸のこと、他の大陸のこと。
人魚という種族について。
あぁ、ついでだから人魚について説明しておこう。
ぶっちゃけると、人魚は普通に俺と同じように二本足で二足歩行してる。
人魚って言えば下半身魚類ってイメージだろーけど、この国にいる人魚達は普通の人間の姿だ。
なんでだって聞いたら、「いや、人魚の祖先は人間だから」って返ってきた。
………驚きました。
………なんでも、人魚とは海の魔力により突然変異した種族であるんだとか。
というか、元はみんな同じ人間で……世界にある色んな種類への魔力の適合により、エルフや獣人など種類が多様化したらしい。
「というか……人間としての姿がなかったら、魚みたいに葉っぱにメスが卵産んで、オスが精子をかけるとかしなくちゃいけなくなるじゃん」
…………とレジーナに言われた瞬間、なんか、こう……人魚に見ていた何かが儚く散ったよな。
まぁ、そんなこんなで。
海の魔力に適合したがゆえに水場だと人魚の姿になってしまうらしいが、ないところでは人間と変わらない……いや、人間よりも中性的な美男美女が多いし、魔力量も桁違いらしいんだが、人間と同じ姿になるらしい。
人間とそんな変わらないなら、地上で暮らせばいいと思うだろうけど、それはそれで問題があるとか。
なんでも、人魚の肉を食べると不老不死になるとか変な噂が出たのと、人魚の鱗が高く売れるとかで人魚は地上にいるとメッチャ狙われるんだと。
だから、この国では代々の王が結界を張って、他の種族に襲われないようにしている。
ちなみに、人魚の肉を食っても、不老不死にはならないらしい。
まぁ、そんなこんなで俺の一般教育が終わった頃。
俺は当時の女王陛下……つまり、レジーナの母親に呼び出された。
で、俺はある役目を任されることになったんだ。
それが………断罪の場の後始末である。
いや、それなんやねんって普通はなるよな?
大丈夫、俺もなったよ。
という訳で、約七年前から……いや、もっと前か。
かなーり前から始まって、つい二年ほど前に終わった長い話をしようと思う。