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出来損ないの探偵物語  作者: Ⅾeka
6/7

罪人探偵

お昼の暖かい日光が入る冬の教室。


その教室にはクラスの人達でできた円がありその真ん中には二人の男が立っていた。


片方の男<加古 晴輝(かこ はるき)>は自信に満ちた顔をして、もう片方の男を指差し、もう片方の男<家村 英司(かむら えいじ)>は周りにいる生徒達に責められていた。


何故こうなったか話すには今日の朝に遡らなければならない。







朝 教室


この日は珍しく朝から来ていた家村 英司 フォードと僕<蒼井 和斗(あおい かずと)>は、僕らと一人の男子しかいない教室で何時ものように雑談をしていた。


すると


「おはよー!」


僕らの前に、<小倉 亜里咲(おぐら ありさ)>がやって来た。


彼女はこの日やけに上機嫌で、その理由を僕らは聞いてみた。


「あのね!聞いて!聞いて!昨日!お母さんが新しい財布を買ってくれたの!」


そう言いながら、買ったばかりだと言う真新しい黒い長財布を取り出した。


「おぉ!良いじゃん!カッコいいよ!シンプル・イズ・ベスト!で!」


「でしょ!でしょ!フォードばどう思う?」


ニコニコした顔で、フォードに尋ねた小倉さんを、当のフォードは、涼しい顔で彼女の買ってもらったばかりの財布を見ていた。


「俺のに似ているな?」


これが彼女の財布を見たフォードの感想だった。


「似てるってこの財布と?」


「あぁ見るか?」


そう言ってフォードが取り出したのは、小倉さんの財布と瓜二つの黒い長財布だった。ただフォードの財布は開くとイニシャルが刻まれていた。



「本当だ!見分けがつかないくらいだ」


「確かに…えぇ~」


「まぁ、財布なんて滅多に入れ替わることは無いだろう」


「それもそうだね!そんなへこまないで!小倉さん!」


「うん~そうだねー」


キーンコーンカーンコーン


こんな話をしているといつの間にか教室に多くの生徒と担任がやってきていた。


時は進み、四時限目の体育が早く終わり体育館から教室に戻ってきた頃事件は起こった。


「あれ!無い!無い!私の財布が無い!」


そう叫びながら鞄のなかを探しているのは小倉さんだった。



「みんな!悪いけど動かないで!」


教室の後ろから、大声がした。声のした方を向くとそこには、加古 晴輝が立っていた。


彼は、クラスの中では目立たない人間だが、クラス一のガリ勉と呼ばれており朝早くに学校に来て、ずっと勉強をしている真面目な男子だった。


「おい!どうしたんだよ!加古!急に!」


クラスの男子の一人が、彼に尋ねた。


「みんなには悪いが、この中に犯人がいるかもしれないからこの教室から出ないで欲しいな」


彼は教室にいるクラスメイトの視線を一身に浴びながら、どこか自信満々に答えていた。


「犯人?小倉のドジとか忘れたとかじゃないのかよ」


男子の一人が言うと、小倉さんと一緒にいた女子が「そんなことないわ!彼女持ってきてたし、今は本当にないもの!」と男子に噛みついた。


「そう!これは彼女を狙った犯行だ!そして犯人は必ずこの中にいる」


「なんでそんなこと、わかるんだよ!」


「え!それは・・さっき体育だったろ!だからここに近いクラスの生徒とご、合同だったろ!だから外部犯はありえない!」


そういう彼を僕と、フォードは遠くで見ていた。


「ねぇ、なんかおかしくない?あの推理。授業が合同でも今日は体育は自由だったから体育館からこっちにコッソリ戻ってこれたし、一番端のクラスとは体育一緒じゃなかったじゃん」


「あぁ、それに少し気になることがある・・・。」


僕が気になることを、聞こうと思ったら加古君たちのほうが騒ぎになってた。


気になって見てみると、僕らが話している間に話が進んでいて、今からクラスのみんなの鞄の中を探そうとしていた。


「よし、まず僕のバックから・・・」


そう言って、加古君からバックを探し出した。


「入ってない・・じゃあ、次は・・下のロッカーの家村君のロッカーだ!いいよね」


彼はそう言うと、無許可で彼の鞄を探し出した。


「これは・・・」


そう言うと、彼の鞄から黒い財布を取り出した。


「この財布は彼女の物だ!間違いない!」


彼は、一目見ただけで、小倉さんの財布だと言った。すぐに確認すると確かに彼女のだった。


「これって、つまり・・・」


「家村君、君が犯人だ!」


彼は自信満々に宣言した。


こうして、『罪人探偵』の完成だ・・・。








こうして、冒頭へと戻る。


「家村君!君が犯人だね!」


「俺が犯人だという証拠はあるのか?」


いきなり、犯人と言われたフォードは反論をした。がその反論を聞いた彼は、


「証拠は上がっているし、なによりアリバイがないはずだ」


と相変わらず自信満々の顔で答えていた。


「アリバイって具体的に何時頃?」


「そうだな。さっきの体育の時間、君は保健室に行っていなかったかい?」


「確かに、行っていたぞ」


「ということは君にアリバイは無いということになるな」


「いやそれは!」


「とにかく!今の君が一番怪しい、だから今の君の発言は言い訳にしか聞こえない。僕は探偵として君の罪をかならず暴いて見せる!悲しい思いをした小倉さんのために!」


加古君はそう強く言い放った。


確かに、今はフォードにとって不利な証拠が多すぎる・・・証拠と呼べるかは別だけど。


それに、今フォードが犯人を見つけてもこんな状況だ。周りもフォードが犯人だと言っているから加古君の言う通り言い訳にしか聞こえないし誰も耳を貸さないだろう。


一体どうしたらいいんだ・・・。


そう考えていると、トントンと後ろから肩を叩かれた。


振り向くと、小倉さんがいた。


「どうしたの?小倉さん」


「ねぇねぇ、このままじゃ、フォードが犯人ってことかな」


小声で聞いてきた小倉さんの言葉に思わずムッとした。


「なに、小倉さんまでフォードが犯人だって言いたいの?」


「そうじゃないよ、フォードは絶対にやってない。ただこの状況じゃフォードが推理しても誰も信じないしきっと捜査だってできないから」


「たしかにそうだね・・・一体どうしようか」


僕がこれからのことに頭を抱えていると、彼女は衝撃の一言をくれた。


「じゃあさ!ワトが探偵になったら!」


そうか!その手があったか!・・・え?なんだって?


彼女の一言に僕は混乱した。


「ぼ、僕には無理だよ」


僕が否定すると、彼女はこう返答した。


「大丈夫だよ!だっていつも一緒に事件を解決してるワトソンでしょ!相棒のピンチは貴方が救わないとね!私も協力するから!ね?」


そうだ…今フォードを救えるのは僕しかいないはずだ…やってみよう…。


「わかったよ、小倉さん。やってみるよ」


「うん!あと前から思ってたけどありさって呼んで!今からは私が相棒になるんだから!」


「わかった、ありさ。まず財布はいつ頃まであったか教えて?」


こうして、探偵ワトが誕生した。








「じゃあ、改めて。財布はいつ頃まであったか教えて?」


僕らは、騒ぎの場所から少し離れたところで、話を始めた。


「う~んとね、体操服に着替えた時はまだあったよ。で、着替えて体操服を鞄にしまおうと思ってみたら無くなってたんだよ。だから思わず声をあげちゃって」


彼女は苦笑いしながら答えてくれていた。


「そっか・・・まだ何とも言えないな~・・・他のクラスでこの教室に入る人物を見ている人がいないか聞いてみよう」


そう言って僕はクラスからでた。




そのあと僕は、クラスを周り情報を集めてきた。


そんな中で、授業中にトイレに行った男子から興味深い証言が2つあった。


トイレに向かう12:20頃に、教室で何かしている男子を見た。


トイレから帰る大体12:25頃、教室に入っていくフォードを見たそうだ。


う~ん、これだけじゃフォードの無実を証明できない・・・。


よし!フォードに話を聞いてみよう。



「どうした?何か用か?」


僕とありさは、先程のほとぼりが冷めて窓際の自分の席に座っているフォードの元へ来た。ちなみに加古君は、他のクラスに聞き込みに行ったそうだ。


「事件時のアリバイを聞きたいんだ」


「アリバイも何も、俺は飛んできたボールで怪我をして保健室に行っただけだ。時間は確か・・12:10頃だ。その時間からずっと保健室にいたが?」


彼はクールな口調で答えていた。


「でも、君が教室に入っていくのを見たって人がいたんだけど?」


「暇だったから、俺の本を取りに来ただけだ。すぐに出た」


「本を取りに来たって・・さぼる気満々じゃない」


「ウッ!そ、それは・・」


ありさの一言に、はじめて彼は取り乱した・・・図星だったな・・・。



こんな会話をしていると、僕らの所に加古君が近づいてきた。


「おい!家村!12:25頃にお前を見たって人が居たけど、どういうことだ?」


ついさっき、聞いたことを、彼はまた聞いていた。


僕は、おもわず彼に声をかけた。


「加古君、なんて声聞き込みしたの?」


「え?四時間目に家村を見かけなかったかって?」


加古君は、当たり前だろ? と言いたそうな顔でこちらを見てきた。


「それって「とにかく!これでお前が盗ったってことで間違えないな」えぇ~」


なんか、彼は意地でもフォードを犯人にしたいようだ・・・。他にも教室にいた奴だっているのに。


頭を抱えている僕の姿を見てか、フォードが僕に話しかけてきた。


「なぁワト、今暇なんだ。少し話に付き合ってくれないか?」


と、加古君に睨まれている状況で話しかけていた。


当然、加古君はすかさず割り込んできた。


「ダメに決まっているだろ!今の君が一番怪しいんだぞ!外部との接触は禁止だ!」


「そうか・・・双子の見分け方について話したかったんだがな」


怒りながら、文句をつける加古君を、尻目に僕の方を見て話してきた


「なんだよ!双子の見分け方って!ふざけているのか!」


「だって気になるだろ!君も気にならないか?親でも混乱するかもしれないし」


あのな~加古君余計怒っちゃたよ・・・ん?待てよ・・・


また何かが引っかかった僕を見て、フォードは微笑んできた。


もしかして、あいつ何かに気づいてるんじゃ・・・ってことはもしかして今の言葉はヒント・・


「そうそう加古君、探偵になるなら覚えておきたまえ。急な変化には疑問を持つことだ」


「な!なんだよ・・それ!お前みたいなサボリ魔が探偵を語るな!」


加古君はフォードの発言に疑問を抱いたが、また怒り出し喧嘩?を始めた。


ただ、今の僕はそんな彼らのやり取りは頭に入ってこなかった。


フォードの言った言葉「急な変化には疑問を持つことだ」・・・。


「なんか、変わったな~加古君」


「どういゆこと?」


僕は、疑問に思い、ありさに聞いてみた。


「だって、さっきと口調違うしあんなに自信満々に人前で話せるような人じゃなったし。それに急に眼鏡なんかかけてるし」


「眼鏡?朝からかけてなかったけ?」


「ううん、朝はコンタクトの容器を持ってたし眼鏡かけてなかったから。朝教室に来て、すぐに気づいた。そうとう眼が悪いらしいよ」


「そうなんだ・・・あ!」


その言葉で、僕の頭にかかっていた靄が晴れだした。


急な変化・・双子の見分け方・・そうかそうだったのか・・・。


「フッ!」


僕と目のあったフォードはこちらを見て微笑みかけてきた。


あいつわかってたな!


「ねぇワト?フォードと同じ顔してるけど、もしかしてなんかわかった?」


「え!同じ顔してた?まぁ、でもそうだよ。あいつ風に言うなら、この事件(物語)はもう終わる」


僕は、探偵(フォード)のように静かに笑いながら答えた。


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