悲しいエンドマークⅡ
現場
「もう、終わるって、じゃあ犯人が解ったの? 」
「・・・あぁ、陸田君の話を聞きに行こう」
そう言って、僕らは陸田君たちがいる美術室へと、向かった。
美術室
美術室へ訪れた僕らは、土井さんの元へ行った。
「もう一度、彼と話をさせてもらえませんか?」
「えぇ、いいですけど、彼事件のことについて中々話をしてくれなくて」
「大丈夫です。彼と話せればこの物語は完結しますから」
「!わかりました」
そう言うと土井さんは、フォードが陸田君と話すのを許してくれた。
「・・・貴方も俺が犯人だと?」
「いや、彼女を殺したのは君じゃないが、君がついている嘘が気になる」
「嘘?」
陸田君はフォードの発言に対して静に尋ねた。
「君は、昨夜彼女を見ているね」
「なんで、そう思うんですか?」
そう聞いた陸田君の顔は一瞬曇っていた。
「簡単さ、さっき君の机を見に行ったら教科書なんてなかった。君は教科書を取りに行った後で、彼女の遺体を見つけたんではないのか?」
フォードがそう言うと、陸田君は俯いた。
そして、しばらくすると陸田君は口を開いた。
「えぇ、昨日、忘れ物に気づいたから、裏口から学校に入って、忘れ物をとったら、窓が開いたんです、それで窓から下を見たら彼女がいて。急いで降りて犯田さんの元に行ったんですが、その時にはもう・・・。それで雨が降り出しそうだったので、教室に彼女を・・・雨に濡れると可哀想だと思ったので」
「学校に入ってすぐには気づかなかったのか?」
「裏口から入ったので、彼女の死体があったのは、校門側だったから気づかなくて」
「そうか。これで確信した」
「な、なにを。まさか、やっぱり俺が犯人だって言うのか」
陸田君が、フォードの言葉に焦りながら尋ねた。
「違う、君は犯人じゃない・・・」
「じゃあ、誰が・・やっぱり、あいつらか」
「いや、犯人なんていないんだ」
「え!なんだよそれ」
「英司君、それって」
「自殺ってことか・・・」
僕らは、フォードの言葉に衝撃を受けた。
あの状況は、どう見たって他殺だった。争った形跡があるし、胸を刺されていた、なのになんで。
「そう、彼女は自分で争った跡を偽装し、胸にナイフを刺して、窓から飛び降りたんだ。自分は殺されたと思わせるために」
「なんで、そんなことを?」
混乱した僕は、フォードに尋ねた。
「彼女は、自分を取り巻く環境に殺されたと、そう訴えたかったんだ。クラスメイトにはいじめられ、教師はそれを黙認する。親に相談したくても近くにはいない。彼女は孤独だったんだ、だから苦しくなってこんな道を選んだ」
「な、なんで!そんなことが言えるんだ!彼女が自殺だなんて」
陸田君は、激しく怒鳴りながらフォードに尋ねた。
「彼女はつい最近、大掃除をしたそうだ。生活の中で必要なもの以外全て捨てたそうだ。それに、彼女は人体に関する本を読んでいたそうなのだがそれは恐らく自分の身体に防御創をつけるために。それに一番の決定打は」
そう言いながら、フォードが取り出したのは犯田さんのノートだった。
「ここに、彼女の心の声が書かれている」
そう言って、開いたノートは、彼女の遺書だった。そこにはこう書かれていた。
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・あいつらにいじめられていたが、最近陸田君が巻き込まれそうになった。彼は関係ないのに何で・・・
陸田君を巻き込むことはどうしても許せなかった。でも誰にも相談できない。先生も見て見ぬふりをするんだから。
だから私は決めたんだ。あいつらに、この世界に消えない傷を少しでも残してやると。
だから私は、ここで全てを終わらせる。
このノートを見つけた人へ
私の最後の言葉を見つけてくれてありがとう。
あなたも、このことを忘れないでね。
私という人間がこの世で生きていたということを。
そして、できたら私の苦しみを多くの人へ伝えてほしい。
お願い・・・。
最後に。
陸田君が私に告白してきたときは、嬉しかったな。けどごめんね。陸田君、私も大好きだよ。
さよなら
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という内容だった。
「これ、本当に彼女が?」
「あぁ悲しいことにこれが真実だ・・」
フォードは、静かにそう告げた。
「うぅ・・・うぅぅ・・・」
「本当に優しい人だったんだね」
僕は、泣き崩れた陸田君にそう告げた。
「あぁ!彼女は最高の女性だったよ・・・」
その言葉とともに、彼は、ダムが決壊したかのように泣き崩れていった。
夕焼けに照らされた道を僕とフォードは歩いていた。
事件が幕を閉じ、僕らは帰路についていた。
そんな中で、最初に口を開いたのは僕だ。
「今回の事件、色々と考えさせられたね。でも学校で死んだらすぐに隠蔽されたんじゃ」
「だから、校門が近いあそこから飛び降りたんだろう。あそこなら登校してきた多くの生徒の目に留まる。当然自分をいじめていた奴らにも」
「だけど・・守りたいと思った彼が、その計画を止めてしまった・・・」
「『悲しいエンドマーク』だな。この作品は絶対に忘れてはならないな」
「そうだね。それが彼女の願いでもあるし・・・」
彼女の思いを胸に刻み、僕らは朱く染まる道を歩んでいくのであった。
悲しいエンドマーク 完
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