甘い殺人 3
解決編です
外の景色はすっかり変わり木も空も全てが朱を帯びだした頃、僕らはフォードに呼ばれ現場となった調理室に集まっていた。
「ねぇなんで私達はここに集められたの?」
何故呼び出されたのかが分からない先生は近くにいた僕に尋ねた。
「それはフォ・・、家村君から話があるそうなので」
僕がそう伝えると、その話を聞いていた加藤さん、泉さんは騒ぎ出した。
「なんで家村が!?」
「そういえばさっきから話聞きに来たりしてたし、もしかしてここで謎は全て解けた!って言ったりして」
「そのとおりだよ」
「「「「ウォ!」」」」
そんな話をしている僕らの背後に突然フォードが現れた。
「すまない、ついやってみたくなんて」
そんなことをさらりと静かに言うと僕らの前へと回り込んだフォードは話を始めた。
「まずは皆さん、お呼びしておいて遅れてしまい申し訳ありません、お待たせしました」
そう言いながら、彼は皆に一礼すると、そのまま話し始めた。
「それで、なんで私達を呼び出したのフォード?」
小倉さんはフォードに尋ねた。
「今回、塩原先生が殺された事件そのすべての謎が解けたのでこうして皆さんにお集まりいただいたというわけです」
そう言うと、そこにいた僕以外のメンバーはざわつきだした。
「まずは順を追って説明しましょう」
そういうとフォードはホワイトボードに今回の事件について書き上げた。
「まず、ここにいる人たちは全員アリバイが不確定のため容疑者に選ばれてしまいました」
「そ、そうだけど」
「まさか、この中にウソを言っている人がいるっていうの?」
佐藤先生と泉さんが口を開くと、その言葉にフォードは静かにうなずいていた。
「じゃあそれは誰か探してみましょう まず、佐藤先生のアリバイは供述通り業者の方のお話でアリバイが成立しています」
フォードがそう言うと佐藤先生はホッとした顔をしていた。
「次に亜里咲、君もスーパーの防犯カメラに姿がとらえられていた、よってアリバイ成立だ」
小倉さんもアリバイ成立という言葉に笑みをこぼしていた。
「さて残すは、ランニングをしていた加藤 千代子 一人自習をしていた泉 瀬里奈 このどちらかが嘘をついていたということになるんですが・・・」
そこまで言うとフォードは少し間を置き、また口を開いた。
「その答えは事情聴取の際にすでに判明しています」
その言葉に、その場にいた容疑者全員が驚いた顔をしてフォードを見た。
「失礼ながら、皆さんの事情聴取を撮影させていただきました」
そういうとフォードはスマートフォンを取り出して動画を再生した。
「あ!画面小さいですので寄ってください」
その言葉を聞いて、僕らはフォードのスマホに集まった。
「まずは加藤さん、彼女は部活の練習をギリギリまでしていたのでしょうすごく汗をかいている」
フォードが言うとおり彼女は頻繁に汗をタオルで拭いていた。
「確かに、部活の練習終わってすぐにみんなに合流したので」
彼女はフォードの言葉を肯定した。
「次に泉さん、彼女は図書室で自習をしていただから汗をかいていない」
これもまた、フォードの言うとおり彼女は汗をかくことなく話をしていた。
「そうよ、だってあそこのクーラー寒いくらい効きすぎるもの」
彼女もフォードの言葉を肯定した。
「はい!ダウト、この時点で嘘つきが見つかりました」
フォードは大きい動作をしながら話した。
この時点でわかる供述の嘘、それっていったいなんだろう・・・。
「あ!わかった!」
真っ先にわかったのは小倉さんだ。
「答えをどうぞ亜里咲」
フォードが小倉さんを指すと、小倉さんは、笑顔で答えた。
「クーラーだよ!今日は三階のエアコン全部止まってんだもん!」
「あぁ!確かにそうだ!今日一日三階の空調が壊れていたんだから・・・ということは・・・」
「そう、空調がきいていない部屋にずっといたのに汗をかいていなかった泉 瀬里奈 嘘つきは君だ・・・」
フォードは静かに、彼女を指さした。
「なんで私が犯人になるのよ!第一証拠が無いじゃない!それなのに犯人扱いしないでくれる!」
泉さんは、見てわかるほど怒りながらフォードに怒鳴っていた。
「証拠か、手っ取り早いもので行くと凶器を出せばいいんだろう、それならすでに見つかっている」
その言葉に、またもこの場の今度は僕を含めた全員が驚いていただろう。一斉にフォードのことを見たのだから。
「英司君!出たよ!被害者の血液が冷蔵庫のゼリーから、また被害者の傷口と周辺からからこのゼリーの成分が」
遅れてやってきた、土井さんが冷蔵庫にあった泉さんのゼリーを持ってやってきた。
「ありがとうございます、さて何故君のスイーツから被害者の血液が出たのか?それは簡単!凶器がこれだからだよ」
「「「「「はぁ!?」」」」」
全員驚愕していただろう、僕もおもわず思ってしまった。コイツナニイッテンダって。
けど、僕は先程の小倉さんとのやり取りを思い出した。
「あぁ!お米でできた!お皿!」
僕は自分の中で生まれた答えが思わず口から漏らしてしまっていた。
「その通り、お米に特殊な加工をほどこすと食器になるように、ゼリーも乾燥させると刃物になるようなんだ、おそらく彼女は家でゼリーのナイフを作り、それを本物のゼリーに紛れ込ませて持ってきた その後、犯行を実行する前に凶器をゼリーから取り出して、凶器を運搬するために持ち込んだゼリーを被害者に食べさせているすきに殺害!・・だがここで予期せぬアクシデントに見舞われた」
「アクシデント?」
皆が思っているであろう疑問を僕が代表して尋ねた。
「そう、倒れた時に先生はゼリーを落としてしまいそこに入っていたゼリーの大半をこぼしてしまった だから被害者の周りからゼリーの成分がでた、そんな落ちたゼリーを見て、貴女は焦ったゼリーがダメになってしまった!これじゃあ凶器が特定されるかもしれない!そう思ったあなたはしかたがないから、凶器と食べられそうな部分のゼリーを集めて新しくゼリーを作った そのせいで、大量にあったゼリーの量が少量になってしまった」
「そうか、だから冷蔵庫のゼリーに血液が出たんだ!溶かして流してしまえばいいものをそれをしなかったのはゼリーが無くなってしまって怪しまれるんじゃないかと」
「その通り、さて改めて聞こう 犯人は君だろう?」
フォードの鋭く静かな言葉に、泉さんは俯きながら震えていた。
「瀬里奈!嘘だよねぇ!」
「泉さん!」
佐藤先生、加藤さんはそんな泉さんを見て、心配そうに尋ねた。
そんな中で、泉さんはついに口を開いた。
「そうよ、私が殺したの・・・」
「なんでなの!瀬里奈、先生の事大好きだったじゃん!」
「だから・・だろ?」
フォードがそう口にすると彼女は静かにうなずいた。
「大好きだった、愛してた!だから許せなかった!先生をとられて、なんで佐藤先生なんか選んだんだろうってそう思ったらもうなんかモヤモヤしてて、こんな事誰にも言えないし、そしたらだんだんどうしても私のものにしてやろうって思った このモヤモヤを晴らすために」
「だったら、標的を私にすれば良かったじゃない!なんで塩原先生を!」
佐藤先生が目に涙を浮かべながら、彼女に尋ねた。
「先生なんかで私の手を汚したくない・・・だから、まだ誰のものにもなってないうちに塩原先生を永遠のものにしたかった、永遠に私の中に残るように・・・」
それが、彼女の語った動機だった。
その後彼女は、土井さんと共に警察へと連行された。
帰り道、空は暗くなり、町に光が灯りだす頃、僕とフォードは帰路についていた。
そんな中で、僕は静かに口を開いた。
「今回の事件悲しい事件だったね」
「あぁ、心が幼かったがゆえに、芽生えた甘い誘惑に負けてしまいこの様なことが起こった」
「うん、もう少し彼女が周りに自分の気持ちを話せていたら、もう少し周りが彼女の気持ちに気づいてあげていれば・・なんて思ってしまうよ、それは、いまさら言ったって遅いことなのにね、この子なら一人でも大丈夫だろう、一人で何とかできるだろう・・・そんな甘い考えが時に誰かを追い詰めて、悪魔を生んでしまうのかもね・・」
「そんな甘さが生んだ殺人『甘い殺人』か・・この作品も胸にとどめておこう・・」
そう口にして、僕らはきっと悲しい顔をしながら、光が灯る道を歩んでいく。
甘い殺人 完
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