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23、またかぁぁ・・・

線を引いたように連なる密度の濃い森。


ファルナが居たフェリテリュス王国と隣国のフロステス王国で国境線であった細長いその森は人の侵入を許さない死の森でもある。

一見すると緑の濃い豊かな森に見えるが魔獣以外の生き物が侵入すれば忽ちに生命力を根こそぎ吸い取られて絶命する。


なぜ そのような森が存在するのか誰も知らない。

一説には地中に住む凶悪な魔物が巣を作っているとされ、別の言い伝えでは遥かな昔の魔法使いが戦争を嫌い、国を隔てる壁を魔法で作り上げたとされている。


ただし、頭上を飛ぶ鳥などの生き物にとっては何の障害にもならない。


『空を飛ぶというのは良いものであるな』


『だねぇ。馬車でノロノロ進んだ後だと早さが際立つよ』


鳥に憑依したファルナとコロタンは徐々に大きな鳥に乗り換えながら国境まで到達していた。

眼下にはフォルカス領都であるシスティリーヌが、そして少し先には緑のラインに挟まれた堅牢な砦が見えている。


国境を越えれば別の国であり街も有る。

そこまで行けば一休みできるだろう。

ファルナはそう安易に考えていた。




見下ろせば二つの砦が有る。

多くの兵が慌しく動き回っている。

また何か有ったのだろう。


勿論 関わる気は無い。

そろそろ夕方でもあり早く街にたどり着きたい。


そして国境を越えて間も無く街が見えてくる。

そこには 黒い煙が立ち昇っていた。


街の周囲には多くのテントが設営され武器を持った男たちが動き回っている。

ファルナですら分かるほどにただ事ではない雰囲気だ。


火の手が上がる建物を他の屋根の上から見たファルナは失われた記憶を少しだけ取り戻した。

そこは自分が拉致され虐待を受けた忌まわしき神殿だった。


その神殿を多くの騎士が取り囲み、神殿関係者と思しき数人が拘束され剣を突きつけられている。


不思議な光景である。

ともすると権力者と宗教は癒着するものだ。


武力で物理的に人々を支配し、宗教によって精神的に支配する。武力がムチ、宗教がアメなのだ。

宗教が精神的侵略兵器として有効なのは大航海時代でも実証されている。


生前の地球の2大宗教が血で血を洗う戦いを続けるのは伊達ではない。

もしも仮に地球で宗教が統一されたとしても今度は派閥に分かれて戦いを始めるだろう。

宗教が一部の人間の我が侭を通す為の道具でしか無いからだ。



ファルナからすれば生前も今回も自分に酷い事をした彼らがどうなろうと ザマァ 程度の気持ちしか湧かない。

まして、この騒ぎで宿をとる事すら難しくしているのだから不愉快な思いが追加されただけだ。

とことん迷惑な集団である。


『はぁぁ、どうしようか・・』


『我輩の見立てでは今日、明日は雨の心配も無い。外で良いではないか』


『そりゃあコロタンは野生児なんだし、野宿が普通かもだけど』


生前の記憶が野宿する事に強い拒否反応を起こす。

とは言え、平時ですら子供だけで宿に泊まるなど難しいのに今の状況では宿そのものが休業しているだろう。

隣町まで行く時間も無い。

選択肢など無いのだ。



『しょうがないね、街から少し距離を取って野宿しよう』


『それが良かろう。我輩も久々に元の姿で眠れるというものだ』


『好きで人間ライフを楽しんでいたくせによく言うよね』


たわいも無い念話を楽しみつつも結局は国境沿いを街の姿が見えなくなるまで飛んで野宿する事になった。

暫くは草原が続いていたがその先は遠くの山まで荒野が続いている。


と、思っていた・・



『ぬっ!!』


『何?・・ええーっ』


何かを突き抜けた感じがした瞬間

それまで荒野が広がっていた視界にいきなり大きな建物が迫ってくる。

それはお城と言っても良いほどの巨大な建物。

何本もの尖塔を周囲に配した中央の塔は一際高く聳え立つ。


普通ならコストの掛かる高い建物を作ろうとはしない。

突然目の前に現れたのはどうやら神殿のようだ。


またかよ。

つくづく宗教には祟られる運命だな。



カーン☆ カーン☆ カーン☆ カーン☆


明らかに警報と思える鐘が打ち鳴らされる。

眼下に見えていた人たちは慌しく走り出し、建物の中からも少なくない人数が湧き出してくる。


『ふむ・・どうやら結界を突き抜けてしまったようであるな』


『結界?』


『左様。いきなり人の巣が見えたであろう、我輩でも気が付かない隠蔽がほどこされていたようだな。余程この場所を隠したいのであろう』


コロタンの言葉を裏付けるかのように下から多くの矢が打ち出されてくる。

ただの鳥が侵入しただけなのに血の気が多い連中だ。


『ただの鳥があの結界を突き抜けるはず無かろう。おおかた何者かの使い魔とでも思われておるのだろう』


『いや、この鳥はただの鳥だよね。魔物じゃあるまいし、何で結界を抜けられたのさ』


『我輩をこの程度の結界で止められるはず無いのである』


『・・・・・・』


まぁ良いか。いまさらだ


幸い高度が有るから矢は殆ど届かない。

このまま逃げよう。

そう、油断大敵 火がボーボー



『ぎゃっ、あちーぃぃぃぃ』


下ばかり見ていたのが悪かった。

突然炎に包まれて火達磨になる。

窓を開けて杖を向けている人影を見たのが最後。

目を焼かれたのか何も見えない。


やばい! やばい! やばい!


当然 羽根も焼かれて落ちていく感覚が有る。

幸い? この世界の鳥は航空力学だけで飛んでいない。

無意識の魔法で浮力を身に纏っている。

だから妙に羽根の小さい鳥がパタパタと飛んでいたりもする。

そのおかげで羽根を焼かれてもフラフラと落ちていく。


とりあえず、痛いのだけはゴメンなので痛覚を切り離す。


何かにぶつかり その後すべり落ちていくのが分かった。

屋根の上にでも落ちたのだろう。

また浮遊感を感じた後 今度は地面に落ちたらしい。


急いで誰かに憑依・・・って目が見えないから出来ない!


『コロタン、元の姿に成って助けてよ』


『無理であるな・・身動きがとれぬぞ』


おまえもかぁ・・



かすかに足音が聞こえる。

耳は何とか無事らしい。


「結界を越えたのはコレか?」


「どう見てもただの鳥だよな。くそが人騒がせな」


「まぁそう言うなよ。今夜のスープは鶏肉が入るぞ」


「おぉ、これこそ神が我等に施された恵み」


に、逃げないと・・あぁ、立てない。

くっ、首をつかまれて持ち上げられた。

殺される!ジタバタ


また憑依したまま死ぬのかぁぁ



「何してるの?」


場の雰囲気が変わった。

見えないのに周囲の人たちが緊張して姿勢を正したのが分かる。

声だけで判断するなら少女くらいのはずなのだが。


「こっ、これは聖女アーレナ様。何故このような所に、危険です」


「ふふっ、あなたが手に持っている鳥が危険とでも言うのかしら?。むしろ神殿の庭で殺生をしようとする方々のほうが恐いですわ」


「いえ、それはその・・」


「早く手を離しなさい。聖女リリシアの結界を超えた鳥なのです。ただの鳥ではありません」


「ははっ」


ドサッと落とすなよ、おっさん。

それにしても・・またしても聖女か。

聖女って希少な存在じゃなかったか?。

大安売りじゃん。・・自分も含めて


「あらあら・・丸焼けの鳥さんなのにまだ元気です。素晴らしい生命力ですわ。すぐに治してあげますからね」


あれ?痛覚とか遮断してるのに暖かくて気持ち良いんですけど。何コレ


「このような者に完全治癒の魔法など勿体無い」


「私の能力などこのような時にしか役に立ちません。ならば使うべきでしょう。

ふふっ、羽根までは再生できませんか・・。

自然に生え変わるまでは少し不細工ですわね」


目の前には金色の刺繍がほどこされた白いローブ?姿の少女がいる。

あっ、目が復活したのか・・見えるって素晴らしい。

少女ではあるが年齢は15歳くらいだからこの世界では成人した女性だ。

大人の聖女は初めてだな。


「不細工な鳥さん、貴方は今日から私のペットです。スープになりたくなければ付いて来るのですよ」


この状況で選択肢は無いだろう。

今なら憑依できるだろうから手は有るが、世話になった鳥がスープの具になるのは可愛そうだ。

しばらくはこのまま様子見するとしよう。


「おおっ、まるで聖女アーレナの言葉が分かるみたいだ」


「本当にただの鳥ではなかったか・・さすが聖女様」


歩き出した彼女の後ろに付いていくと周りがうるさい。

まぁ、とりあえず野宿だけは回避できたし良しとしよう。


コロタンは・・寝てるのかよ。大物だな



・・・セルシニアのそばから脱出したのに、また聖女か。








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