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22、私は自由だ。

その後、セルシニアはおとなしかった・・人前では。


しかし、今は夜。帰り道の宿場町、その宿の一室だ。


「おい、ファルナ。帰りもあの温泉が有る領地を通過するだろ。お前に興味深々のガキがいる所だ」


「そりゃあ・・通ると思うけど。何?」


まさにセルシニアお嬢様は別人になってしまった。

こんな急激に人格が変わるのは見慣れているから最初は何者かが憑依でもしたのかと思った。


しかしだ、


自分と同じ憑依能力を持つ人間がそう居るとは思えない。

となると、悪霊がとりつく本来の憑依現象となる。

だが、これは憑依では無い。

というか、この世界の死霊なら日本語なんて分からないから考えるまでも無いけど。


「何って、決まってるだろ。あの貴族のボンボンも巻き込むぞ」


「何で巻き込むとか言うわけ?」


「簡単な事だ、利用価値が有る。

風呂場に入った事をネタに下僕にできそうだしな」


あの時の記憶までしっかり持ってるのかよ。

しかも発想がいちいち悪党なんですけど・・。


「そんなに上手く行かないと思うよ」


「なんでだ?、例え貴族の教育を受けてたとしても所詮は子供の頭だぞ。調教すれば良いだけだ」


お嬢様の前世の性格はかなりゲスなようです。



しかし、まずいかも。

このまま相手をナメて迂闊に脅迫すれば逆に弱みを握られる可能性まである。なんせ相手も・・


「コネを作るまでは良いけど、それ以上はダメ」


「だから、何でだ!」


くそっ、セルシニアの姿でそんな言葉使いやがって。


「あの子も同じ転生者だからだよ、分かるでしょ」


「!!、マジかー」


やはりショックであったか・・。

この際、共有すべき情報は伝えたほうが安全かも。


ちなみに、自分ファルナも転生者なのは当然バレバレだ。

ラジオ体操なんていう日本固有の風習?まで教えたしね。

あはははは。乾いた笑いが心の中でこだまする。



「凄いな。あっちの世界の知識を持つ奴が3人も居るのか。大人に成ったら天下を取れるぞ」


「出来るわけ無いじゃん」


「いや、出来るさ。地盤が貴族だし、ゼロからのスタートじゃないからな」


「勝手にすれば・・私はやらないよ。めんどくさい」


幼女が2人で向かい合ってする会話じゃないよね。とほほ



「ほー、へー、そう。そんな事言って良いのかな?。

ファルナは俺よりも簡単に世界を取れそうなんだけどな」


「なんだよ・・片目の貧相な孤児の幼女に何言ってるの」


こっちの言葉使いも素に戻ってしまった。ヤケクソである。


「ふふん。俺のこの聖眼には鑑定の能力も備わっているから色々と分かるんだよな」


「私にチートでも有るって言いたいわけ?」


強気に見えるけどファルナの心は焦りまくっている。

憑依の能力が知られたのだろうか?。

この能力が世間に知られれば、恐れられ処刑されるかも知れない。


「ある意味でチートだろうな。ファルナリーア皇女殿下様だし」


「何だよ、それ」


「本当に記憶が無いんだな。

覚醒する前の俺が初めて出会った時、何故お前をファルナと呼んだと思う?。あの時すでにお前の本名が見えていたからさ」


「ファルナリーア・・それが本当の名前?」


「しかも皇女殿下様だ。本物のプリンセスなんだぜ、お前」


「本当にそうなの?」


「勿論。こんな面白い事なのに凄すぎて誰にも言えないけどな」


「それが本当だとしたら・・私はもう終わりだね」


「何でだよ。もうメイドなんてしなくて良いんだぞ。

大きくなったら手を組んで世界を手に入れようぜ」


すごい野心と情熱だね。セルシニアの中の人。

そして、メチャクチャ単純だよ。


そういえば、セルシニアはあの大司教ガビエルとのゴタゴタは見てなかったし、ファルナが何されたか知らないんだったね。


身分が高いほどスキャンダルは痛手になる。

もしも仮にファルナが皇女に戻ったとしたら誰にも知られないように幽閉されるか、どこかの修道院みたいな施設に収監されるかになるだろう。

うは、寒気がする。



「ところでセルシニア、何時からその性格になったの?」


「ん?、気が付かなかったか。あの変なカードゲームで遊んでる途中だな。前世でもカードゲームは好きだったし 思い出すカギになったのかもな」


変なカードゲーム言うな!!。力作だぞ。


でも、そうか・・墓穴を掘ったファルナでしたか。


セルシニアを育てるゲームミッションはフリーズした。

どう考えてもバッドエンドしか見えない。

おまけに、このままだと高い確率で戦略シュミレーションゲームにログインする事になる。


幸いにも憑依能力はまだ知られて無いようだ。


・・・潮時、かな。



**************




次の日の朝。

何時ものようにセルシニアのお世話をこなし、出発準備のゴタゴタを利用して外に出た。


「んー・・、あの鳥が良いかな」


魔物の鳥なら安全に飛べるけど街の中で目にする事は無い。魔物だし、討伐されるか追い払われるからね。

なので比較的大き目の鳥で妥協する。


『コロタン、馬車の旅は終わりだ。世界を見に行くよ』


『おおっ、某はその言葉を待っていた』


『ではでは。一緒に憑依出来ないから、先にコロタンがあそこの鳥に乗り移って。すぐに私も行くから』


私の中からコロタンが抜け出し、鳥が逃げないうちに自分も憑依し体を乗っ取った。ごめんよ鳥さん。


久しぶりに鳥の目線で街を見下ろす。

宿の前では馬車が横付けされ出発の準備に忙しい。

居心地が良くなってきた職場だし 時間が経つほど執着ができてしまう。

出て行くなら今のうちだ。

仲良くしてくれた人々には心の中で詫びよう。


別れを告げるメッセージカードは置いてきた。

セルシニアの聖眼に見つかる前に飛び立とう。




なーーんちゃって。哀愁を込めてみたけど、湧き上がる嬉しさは隠し切れない。


私は自由だ。


この世界の常識や ある程度の情報は働きながら手に入れた。

資金面では心許ないがアイテム袋の中には自分が見つけた香辛料のイガラシが大量に保管されている。

上手く売り捌ければ当座の資金には困らないだろう。

もう危険を冒してまでこの場に残留する意味は無い。



さて、飛び立ったは良いけど目的が有るわけでもない。


『コロタンは行きたい所ある?』


『某は何処でも良いがファルナよ、そなたは逃げて来たのであろう。ならば追っ手に見つからぬ国に向かうのが定石であろう』


『んー・・追っ手は無いだろ。逃げたと言えば確かにそうなんだけどね。具体的には何処の国?』


『某に人間どもの国の事を聞くか?。そうであるな・・

人も魔物も敵対する相手のテリトリーには行かぬものよ』


『おおっ、なるほど。それなら目星は付くよ』


来た道を戻ることになるけど、あの砦のむこうは敵対していた他国のはず。



******************************




「ファルナ、ファルナ何処です」


「何事だね。朝から騒がしい」


「あなた方は・・ファルナを何処にやったのです」


「「「はぁ?」」」


メイドのシャルナが護衛の冒険者達を見る目は殺気すらこもっている。

出発に合わせて自分たちの宿泊した宿からやって来た冒険者3人は必死な彼女に圧倒されていた。


「落ち着きなさい、シャルナ。

同僚が失礼いたしました。実は子供が1人見当たらないのです。最初はフラフラ街を見ているのかと思ったのですが、出発の鐘が鳴っても帰って来ないのです。気ままな子ですが今まではそんな事無かったので探しておりました」


「・・・その子供とは?」


「はい。お嬢様の専属メイドのファルナといいます」


「なんだとぉ!、あの子が居ないのか?」


大男の冒険者が先ほどのシャルナなど問題になら無いほどの殺気を放って大声を出す。他の2人の冒険者も声は出さないが鬼気迫る雰囲気を撒き散らしはじめた。


殺さんばかりの迫力にメイドの2人は腰をぬかす。


「静かになさい。ファルナなら大丈夫、心配無いですわ」


「セルシニアお嬢様・・」


大声では無いが興奮していた者達の耳に通る指導者の声であった。その声の主がまだ幼女と言える子供であった事で冒険者3人は冷静さを取り戻していた。


「ファルナのベッドの上にコレが有ったわ。あの子は自分から出て行ったようね」


「・・・・お別れです。ファルナ・・これだけ??」


木片に書かれた短すぎる文章に皆が唖然とした。

これだけでは到底意味が分からず、納得できるものではない。


「改めまして、ご挨拶致しますわ。辺境伯クレセントス・オブレイト・フォルカスの長女セルシニアにございます。御目にかかれて光栄にございます。リリセンティア皇国皇太子アレクトレウス殿下。そして、元筆頭魔術師のトゥルゲルト様」


「・・・・何故だ?・・」


「わたくしのこの目は聖眼にございます。そして、ファルナの・・いえ、ファルナリーア皇女殿下のおかげで聖女として覚醒いたしました。あの子はこの目を恐れて別れを告げたのでしょう」


アレクトレウスは驚愕した。

ここに至るまで何人にも彼の正体を知られる事は無かった。

本国では影武者が巧妙に動き回り働いている事で貴族たちにも気付いた者はいないだろう。

旅に出た事を知る者は二人だけである。


目の前の子供はその全てを見破り、あろうことか側仕えの娘の正体まで見抜いていた。


自ら「聖女として覚醒した」と告げる姿はとても子供のものでは無い。

彼は本当の意味で聖女という存在に恐怖した。


「詳しい経緯をお話しいたしますわ。宿の一室を借りましょう。

シャルナ、出発を遅らせます。急ぐ必要も有りませんから。皆にもそう伝えなさい」


「はっ、はいっ、お嬢様」


今まで幼女として世話をしていた幼い子供の姿は其処には無かった。


他人に命令する事を当然とする力強い言葉。


王族らしい存在を前にして微塵も怯まない堂々とした姿。


セルシニアは自らが変わった事を疑う余地が無いほどの王者の風格で皆に知らしめていた。



セルシニアの野望はこれからだ!










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