18、カワイイですか?
領主様は今日も町から出発しようとはしなかった。
商人たちのキャラバンも様子見状態だ。
無理も無い。
得体の知れない凶悪な魔物が居るかもしれないのだから。
確かにその犯人、もとい犯魔のコロタンは凶悪かどうかは別として災害級に強い魔物なのは間違いない。
だから彼らの判断は間違いでは無い。
しかし、このままでは先に進めず色々と困った事になる。
そんな迷惑な謎生物の元に飛んで来たのは小鳥に乗り込んだファルナです。
主従契約?をした為か何となく居場所が分かるのだ。
まぁ、そのせいでコロタンも私を追いかけて来たのだから困った能力でもある。
何故コロタンに会いに来たかと言えば、今後も付いて来るなら注意しておかなくてはならないからだ。
『あっ、いたいた』
『ふむ、チッコイのがさらにチッコイな。それ以上だと我輩には見えぬぞ』
『うっさい、むしろ迷惑だからお前が小さくなれ』
反論してもピーピー鳴くだけでは迫力ゼロだ。
というか、小鳥の声なのに妙に大きく響くなぁ。
ここは森のかなり深い場所なのに静か過ぎる。
せいぜい風が枝葉を鳴らす音がするくらいだ。
『当然であろう、小さき者共は我輩の覇気を恐れて隠れ潜んでいるゆえ。むしろ、何ゆえチッコイお主は以前も今も我輩の前で平気なのであるか』
『死人ゆえ・・』
『なんと、アンデットの類であったか!。どうりで我輩の中に入り込むはず』
『うわぁぁ、バカ、本気にするな。言葉の遊びだ、冗談だ。私は普通の人間だ』
前世で好きだった歌舞伎者のマンガネタでボケたつもりが変な誤解を生んでシャレにならなかった。
この世界ってアンデット居るんだね、情報ありがと。
『ふっ、我輩と契約した以上はもはや普通とは言えぬぞ。
そろそろ我輩の力を使えるであろう?。そなたの言葉で言えばお互いの能力がフィードバックされるのだからな。チッコイなりでも力だけならオーガの筋肉バカ以上になっておるはずだしのぅ』
『ぁっ!!、あれはコロタンのせいだったのかぁぁ』
今朝、お嬢様の食事を運ぶ為に料理の乗った皿を掴んだ時、皿が指の形で欠けた。あれは皿が傷んでいた訳じゃ無い。確かに自分の力が破壊した感触が有った。その後、警戒して細心の注意を払って仕事をしたのでミスはしていないが、アレか?、もしも私がコロタンみたいに本気で大声を出せば相手を気絶・・は無理としても萎縮させてしまうのか。
『我輩としても損はしておらぬ、気にするで無い。
そちらから流れてくる他の世界の情報は実に面白い。
長き時を生きて退屈しておったのだ。
我輩の力の一部を使わせる程度は何事も無い』
『いやいや、恐縮してるわけじゃないからね。迷惑してるんだからね。こんな幼女が怪力使ったら悪目立ちするだろうが』
不幸中の幸い?と言うべきなのか、事前に知る事が出来て良かった。聞いてなければ大惨事を招いたかもしれない。
『はぁ、まぁ良いや。それよりコロタン、契約したけど自由なんだから近くに居なくて良いんだよ。付いて来ると人間たちに見つかって大騒ぎになるよ』
『自由というなら付いて行くぞ。我輩のカンが教えるのだ、付いて行けば面白いとな』
『えーーっ』
『それに今回のように獲物の情報まで貰えるからのぅ。
言ったであろう、獲物が少なくなって困ると』
『・・・・コロタンってバカだったんだね』
言葉遣いはジジむさいくせに思考は子供みたいだ。
ドラゴンすら弱いと馬鹿にする強者のコロタンが覇気ダダ漏れでうろついていたら弱いであろう獲物が皆逃げて居なくなるの当たり前じゃん。
この後、その点を懇々と教える羽目になった。
そして、付いてくるなら何が必要なのかも・・。
『小さくなる?、人の姿になる?、そのような無駄な能力を何故 我輩が持たねばならぬ』
えーっ、できないのかよ。ラノベの定番じゃん。
『あのねコロタン、これから行くのは王都・・えっと、人間たちの一番大きな巣なんだよ。だからウジャウジャと沢山の人間が居る。その大きな体なら山の中に隠れていても見つかるからね。攻撃されちゃうよ』
『ふっ、チッコイのがどれだけ出て来ても我輩に勝てる訳が無かろう』
アリが巣から沢山出て来ても踏み潰せば終わる、みたいな感覚なんですね。でも、アリってヴザイんだよー集団になると特にね。
ともかく、何かこいつを説得する材料は無いものか・・。
『ふむっ、チッコクはなれんが・・これならどうだ』
!!、コロタンが消えた。
これ、姿を消す能力なのか?。
やれば出来るじゃん。
『いや、姿を消したわけでは無いぞ。我輩はここにおる』
あれっ?、この感覚はコロタンに憑依した時と似てる。
『何を混乱しておる。同じチッコイ鳥に入り込んだだけだ』
えっ、それって憑依したって事?。
『ヒョウイという能力であるか・・面白いものだ。我輩の力がお主に流れているように我輩も使える能力が増えた訳である。入り込むだけしか出来ぬのでつまらなかったが使い道も有ったらしいの』
さりげなく「私が使えない」みたいに言うな。
入るだけって事は乗っ取りでは無いから対象を自由に動かせないって事だね。
一抹の不安は有るけど・・小鳥に憑依したままなら王都近くに存在してても大丈夫かも。
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と、少しだけ安心したファルナもバカでした。
退屈しまくったコロタンが新しい楽しみを見つけたのだ。
小鳥に憑依した程度で満足するはずがなかった。
『ふむ、これも美味いのであるな。焼いた肉がこれ程とは思わなんだ。次はあそこの肉を食するぞ』
『だめだよ、コロタン。もぅ時間が無いんだから。あんまりサボッてるのがバレたら外に出られなくなる』
『出られない?。また鳥になれば良いであろう』
くそーー話が通じない・・・
小鳥に憑依したまま宿場町に帰ってきた。
離脱した私が宿に戻ろうとしているのだが、小鳥から私に乗り換えたコロタンがうるさすぎる。
屋台の食べ物の匂いに引かれたコロタンは「あれ買え、これ食う」と騒いでいる。
幼女の体でそんなに沢山食えるか!ての。
下手に追い出して素の巨体で街中に現れたら大パニック間違いなしなんだよね。ちくせう
そして、それよりもさらに重大な問題がある。
馬車で寝ていたはずのセルシニアお嬢様があの時 魔力が暴走寸前まで至った。どう考えてもお嬢様はコロタンの存在に対して過剰反応したのだ。
今は自分の中に憑依しているとは言え、お嬢様は聖眼だしなー・・見抜かれて恐がられるかも・・。
いや、今度こそ魔力が暴走するかも・・。
時間的にそろそろお嬢様が昼寝から目覚めるころだし、急いで帰らないと・・あぁ、気が重い。
宿の勝手口からコッソリ入る。
でも、まぁたぶん、私が抜け出している事はバレているだろうけどね。遊び盛りの子供として見て見ぬ振りをしてくれているのだろう。しかし、仕事に差し障りが有れば当然怒られるはずだ。
「ファルナ?、いた」
「ただいま戻りました。お嬢様」
あぁ・・やはり起きてたんだね。
他のメイドが来ていないから問題は無かったようだけど。
まさに恐る恐るという歩調でセルシニアの近くまで行く。
ドキドキと心臓の鼓動が聞こえるようだ。
そして、やはりお嬢様は何かを感じるのか ファルナをガン見している。瞬きすら忘れたように見ている。
正直 恐い。
この前みたいに部屋がグチャグチャになったらどうしよう。
じーーーっ。
・・・・・・。ひぃぃ。
「かわいい・・?。ファルナかわいい!。どうして?」
えっ、なにその反応?。カワイイ??
お嬢様は自分の所まで駆け寄ると頭をなでたり、背中をなでたりしてくる。その行動はまるで犬やネコを愛でているかのようだ。私自身の姿は何も変えていない。つまりお嬢様の聖眼には私の体にコロタンの姿がダブって見えている?、のかも。
いやいや、例えそうだとしても可愛くは無いでしょうコロタンは。綺麗ではあるけどね。
『何を言う、我輩を高評価するのに何の不思議があろうか。それに、この魔力の感じは憶えておる。我輩を目覚めさせてくれた波動であるな。心地よく、それでいて力強い』
えっ・・コロタン、カワイイと言われて喜んでますか。
それに君はお嬢様の魔力に惹かれて目覚めたんだね。
伝わってくる感情はセルシニアに懐いてしまってるよね。
まぁ、納得いかないけど最悪の結果にならなくて良かった。
世話をする子供が1人増えた気がするけどね・・。




