021「コミカル」
「この神社、縁結びのご利益があるんだって」
「へえ。狐が、コン活を応援するというわけね」
「うまい。座布団一枚!」
「どうもどうもって、落語家かーい」
古い稲荷の丹塗りの剥げた鳥居を背にして、椚と椛は、苔むした石段に座って談話している。
「それにしても、この二日間で、三組もゴールインするとはねえ」
「ホント、ホント。俺も、いまだに狐につままれてる気分がする」
「化かしては無いだろうけど、予想外だったわね」
「インスピレーションは湧いたかい?」
「ええ。それは、もう、バッチリと。コマ割りからセリフ回しまで、完璧に浮かんでるわ。早く帰って描き上げたい」
「そっか。いやあ、あっという間だったね、この三日間は」
「そうね。何だかんだで、バカンスを楽しんじゃったわ」
「兄ちゃんとしては、余計なオマケが付いたと思ってるだろうけど」
「私のお姉ちゃんも、きっと同じように思ってるだろうな。でも、キューピッドを務めたんだから、感謝して欲しいわよ」
「そうかな。プラスマイナスゼロなんじゃない?」
「あら、そうかしら? ……ねえ。何か面白いこと言ってよ」
「面白いかどうかわからないけど、それでも良い?」
「良いわよ。どんなボケが飛んできても、華麗にツッコんでみせるから」
「だから、ツッコミは俺の担当だって。……椛ちゃん」
「何?」
「俺と、付き合ってください」
「はい、喜んで!」
「バンザーイ! って、ちょっと待って。居酒屋の掛け声みたいだけど、本気なの?」
「冗談だったの? でも、男に二言は無いんじゃないかしら」
「椛ちゃんが良いなら、良いけどさ。でも、こう言っちゃなんだけど、俺、漫才師だよ?」
「こう言うのもアレだけど、私、漫画家よ?」
「そうでした。聞いた俺のほうが、馬鹿みたいだ。ハハッ」
「フフッ。なんだか、ラブコメみたいな展開ね」
「お嫌いですか?」
「お好きです」




