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陰に陽に  作者: 若松ユウ
19/22

019「ハイキング」

「バテるのが早いわよ。ファイットー」

「や、柳瀬さんのペースが、早すぎるんですって」

 元気溌溂としている梢と、体力ゲージが限りなくゼロに近い桜が、丘の小道を歩いている。

「もう。同い年なのに、だらしないわよ」

「まったくです」

 二人は、近くの平たい岩の上に腰を下ろして一息つき、会話を続ける。

「柳瀬さんは、楓くんとペアを組んだほうが良かったですね」

「そうね。楠見くんも、梓ちゃんと一緒のほうが、もっと張り切ったんじゃなくて?」

「それは、どうでしょうね」

「ちょっと、ちょっと。そこは嘘でも、そうだと言い切りなさいよ。安心できないじゃない」

「何が不安なんですか?」

「楠見くんが、本当に梓ちゃんのことが好きかどうかってことよ。私の口から言わせないで」

「すみません。察しが悪くて」

「で、どうなのよ、実際のところは?」

「どう、とは?」

「だーかーらー。楠見くんは、梓ちゃんのことが、どれくらい好きなのかってことよ。結婚対象として真剣に考えてるのか、それとも友だち感覚で遊びとして付き合ってるだけなのか、ハッキリしなさいよ」

「い、いきなり、そんなことを言われても」

「返事に困るっていうの? うかうかしてると、誰かに取られちゃうわよ? 四十や五十になってから後悔したって、遅いんだから」

「それは、お互い様な気もしますけど」

「まあ、そうね。私も、三十過ぎてまで独身でいるとは思わなかったわ。だいたい、大学院に進学するとは考えてなかったもの」

「そうですね。社会人としてのスタートが、あの二人より六年遅い」

「早けりゃ良いってものではないけど」

  *

「入社した年の忘年会でハンカチを借りてから、結構、遠回りをしてしまったな、梢」

「そうね。いい加減なようでいて、意外と律儀な性格をしてるのよね、楓くん」

「貸し借りはチャラにしないと、気が済まないんだ」

「両辺で勘定が合わないと、帳簿として不備があるものね」

「そういうこと。いやあ、率直な気持ちを聞けて良かった」

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