017「ジェラシー」
「おーい!」
「おーい!」
海に浮かぶ櫁と椚に向かい、椛と椿は、ブンブンと大きく手を振る。
「結構、遠くまで泳いだみたいですね」
「そうだな。沖のほうまで行ったみたいだ。大丈夫かな?」
「天気も穏やかですし、問題ないと思いますよ。それより、さっきの続きをしましょうよ。さあ、どんと来い!」
椛は大股を開き、ビーチボールを打ち返す構えをする。椿は、椛に向かってビーチボールを投げながら言う。
「よし、行くぞ。そーれ!」
二人は、ビーチボールを往復させながら会話を続ける。
「ハイ。――ところで、椿さん」
「何だ?」
「椿さんは、いま、お姉ちゃんと付き合ってるんですよね?」
「ああ、そうだけど。それが、どうかしたか?」
「もうすぐ三十ですけど、結婚したいとか、子供が欲しいとか、思わないんですか?」
「急だな。そりゃあ、あわよくば、とは思ってるけどさ」
「そうなんですか? そういう気配がないから、最近、椚さんに乗り換えようかって言ってましたよ?」
「え! ――オッと、ボールが」
椿は、椛の爆弾発言に驚き、一瞬、動きを止めたあと、落したビーチボールを拾いながら言う。
「それは、本当の話か?」
「まあ、酔って口走ったことだから、どこまで本気かは知りませんけど、この前、そんなことを言ってましたよ」
「そうか。よりによって、椚の奴に」
顎を押さえて沈思し始めた椿の顔を、椛は下から覗き込みながら言う。
「兄として、弟に彼女を取られるのは、プライドが傷つくんじゃありませんか?」
「ああ、そりゃそうだ。こうしちゃいられない。漫才師になんか負けてられるか!」
椿は、ビーチボールを椛に押し付けると、バシャバシャと海に入っていく。
「頑張ってくださーい」
「何を頑張るんだ?」
「あっ、楓さん」
椛は振り返り、両手にサイダーの缶を持って立っている楓の姿を認める。楓は、振り返った椛の手に、片方の缶を渡す。
「あれ? 梢さんは、まだ休憩中ですか?」
「あっ、いや。ビールが入って、ご機嫌になったから、桜と松井に任せてきた」
「ああ、なるほど。もう、アルコールに手を伸ばしたんですね」
「そうなんだよ。酒に、恋人の座を奪われないか心配だぜ。ハハッ」




