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陰に陽に  作者: 若松ユウ
16/22

016「ホール」

「家族じゃなかったら、宿無しになってたところよ。反省しなさい」

「二度としないから、許してください」

 観葉植物が置かれた休憩室で、櫁と椛が、ソファーに座って会話をしている。 

「まあ、いいわ。他のみんなは、椚くんも含めて、歓迎ムードだから」

「梢さんや樫野くんも、人数が多いほうが楽しいって言ってたものね」

「私としては、いますぐ段ボール箱に入れて、ナマモノのシールを貼って、宅配便で家まで送ってやりたいところだけど」

「おお、怖い。私は、ハムやフルーツじゃないわよ」

「そうね。そんな上等なものじゃないわ」

「ちょっと、お姉ちゃん。それ、どういう意味よ?」

「野宿したい?」

「いえ、何でもアリマセン」

 沈黙する二人へ、梢が駆け寄り、片手で椛の腕を取りながら言う。

「お話し中、失礼しまーす。ねえ、櫁ちゃん。椛ちゃんを借りても良いかしら?」

「どうぞ、どうぞ。存分に、こき使ってやって」

「じゃあ、お言葉に甘えて。――こっちよ、椛ちゃん」

 椛は、梢に腕を引かれて立ち上がると、その場を去りながら言う。

「え? あっ、はい。あの、どちらへ?」

「いいから、いいから」

  *

「楓くんから聞いたんだけど、櫁ちゃんと梅田くんを、いま以上にくっ付けたいんでしょう?」 

「ええ、そうなんです。それで」

「ヤキモチを焼かせるために、梅田くんと好意があるフリをしようっていうんでしょう? 私と楓くんも、作戦に協力するわ」

「わあ。ありがとうございます。――そっちのトマト、大ぶりで美味しそうじゃないですか?」

 梢と椛は、めいめいに買い物かごを持ちつつ、直売所で生鮮食品を見て回っている。

「本当。少し青みが残ってるけど、大きいし、安いわね。これは、買いだわ」

「レタスもありますし、サラダの材料は、これくらいで良いですね」

「そうね。――話を戻すけど、明日の予定は、櫁ちゃんから聞いてるかしら?」

「はい。たしか、海水浴に出かけるんですよね?」

「そうそう。そのときに、弟くんが櫁ちゃんを海のほうへ連れて行くから、椛ちゃんは、そこから見える範囲で、梅田くんを連れて浜辺で遊んで欲しいの」

「浜辺ですね。遊ぶ内容は、何でも良いんですか?」

「うん、任せるわ。ビーチフラッグでも、砂の城造りでも、好きにして。何なら、西瓜割りでも良いわよ?」

「いや、この時期に西瓜は売ってないでしょう。ビーチバレーでもしますよ」

「そうね。それが一番良いかも。ダブルスなら、私と楓くんも参加するわ」

「良いですね。……あれ? そのあいだ、梓ちゃんと楠見さんは?」

「屋根と扇風機がある場所で、荷物の番をしてるそうよ。絶対に肌を焼きたくないんだって」

「強い日差しを浴びると、灰になりそうですもんね、楠見さん」

「ハハッ。言えてる」

 そう言いながら、梢は買い物かごの中からトマトを手に取って言う。

「これ、半分ジュースにしよっか」

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