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陰に陽に  作者: 若松ユウ
15/22

015「カウンター」

「な~んだ。じゃあ、椚さんも同じことを考えてたのね」

「偶然の一致にしては、出来すぎてる気がするけど、椛ちゃんの言う通りだよ。史実は創作より奇妙なり」

 サングラスをした椛と、伊達眼鏡をかけた椚が、船の座席に並んで座り、会話を交わしている。

「でも、うまくいくかなあ。初夏の離島、ヤキモチ大作戦」

「やってみなきゃ、分からないよ。でも、やる前からアレコレ心配すること無いと思うな」

「そうかしら?」

「そうだよ。まあ、俺としては、二人がうまくいったにせよ、まったく駄目だったにせよ、加工して漫才のネタにするけど」

「あっ、その気持ち、分かるわ。私も、面白おかしくアレンジして、漫画のネームにしちゃおう」

「利害一致だな。ハハッ」

 朗らかに談笑する二人の背後に、椿と樒が忍び足で近寄り、低い声で言う。

「何を笑ってるんだ、椚?」

「どうして椛が、ここに居るのかしら?」

「しまった。ヤバイな、これは」

「見つかっちゃった!」

  *

「まったく。楽しそうだからって、勝手に付いてくるなよ」

「ごめんなさい。つい、魔が差したんです」

 海鳥が鳴く波止場に、ボラードに腕を組んで座っている椿と、その目の前で平伏している椚が居る。

「やれやれ。俺たちが帰る日まで、あの船は停留したままなんだぞ。お前だけでも泳いで帰るか、椚?」

「いや、この距離は、さすがに溺れる」

「途中で、海豚(いるか)か海亀でも掴まえれば良いじゃないか」

「そんなことしたら、鮫に襲われるのがオチだって。勘弁してよ」

 裾に縋り付きながら椚が言うと、口の端を上げながら椿が明るく言う。

「なーんてな。事情を説明して、特別に泊めていいことになったから、安心しろ」

「なんだ。それを早く言ってよ、兄ちゃん。冗談がきつすぎる」

「何を言うか。いつもデマカセばかり言ってるから、たまには言われる側に立つのも悪くないだろう?」

「良くないって。心臓に悪いなあ、もう」

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