015「カウンター」
「な~んだ。じゃあ、椚さんも同じことを考えてたのね」
「偶然の一致にしては、出来すぎてる気がするけど、椛ちゃんの言う通りだよ。史実は創作より奇妙なり」
サングラスをした椛と、伊達眼鏡をかけた椚が、船の座席に並んで座り、会話を交わしている。
「でも、うまくいくかなあ。初夏の離島、ヤキモチ大作戦」
「やってみなきゃ、分からないよ。でも、やる前からアレコレ心配すること無いと思うな」
「そうかしら?」
「そうだよ。まあ、俺としては、二人がうまくいったにせよ、まったく駄目だったにせよ、加工して漫才のネタにするけど」
「あっ、その気持ち、分かるわ。私も、面白おかしくアレンジして、漫画のネームにしちゃおう」
「利害一致だな。ハハッ」
朗らかに談笑する二人の背後に、椿と樒が忍び足で近寄り、低い声で言う。
「何を笑ってるんだ、椚?」
「どうして椛が、ここに居るのかしら?」
「しまった。ヤバイな、これは」
「見つかっちゃった!」
*
「まったく。楽しそうだからって、勝手に付いてくるなよ」
「ごめんなさい。つい、魔が差したんです」
海鳥が鳴く波止場に、ボラードに腕を組んで座っている椿と、その目の前で平伏している椚が居る。
「やれやれ。俺たちが帰る日まで、あの船は停留したままなんだぞ。お前だけでも泳いで帰るか、椚?」
「いや、この距離は、さすがに溺れる」
「途中で、海豚か海亀でも掴まえれば良いじゃないか」
「そんなことしたら、鮫に襲われるのがオチだって。勘弁してよ」
裾に縋り付きながら椚が言うと、口の端を上げながら椿が明るく言う。
「なーんてな。事情を説明して、特別に泊めていいことになったから、安心しろ」
「なんだ。それを早く言ってよ、兄ちゃん。冗談がきつすぎる」
「何を言うか。いつもデマカセばかり言ってるから、たまには言われる側に立つのも悪くないだろう?」
「良くないって。心臓に悪いなあ、もう」




