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魔術に愛されなかった男は神になる  作者: 迦楼羅
第1章 出会いと戦争編
8/12

8・アテナ先生2

「では、チトちゃん続きを再開しましょう」

「うん......おねがい」

 小休憩を挟みイーナが入れてくれた紅茶を飲み終わり授業が再開される。


「大まかに歴史の成り立ちを教えた次は、私達の生活に欠かせない魔術に

ついてです」


 俺には縁の無い話だ。でも妹が一生懸命解説してる姿を見て応援の眼差

しで見守る。


「コホン、まず魔術を行使するには、体内にある心の器『(コル)』から発生す

る『魔力(マナ)』を自由自在に操る所から始まります。ちょうどこんな感じです」


 言葉で伝えるのは難しいと感じたアテナは実際にやってみせる。

 指先をチトの前に持って行き、マナを込める。


「すごい......ゆびが光った!」

「はい、体に巡るマナを指先に集め放出すると、体内のマナと外のマナが

触れこのような現象が起こります。私達は『灯火』と呼びます」

「コレ、ゼスもできる?」

「できるぞ」


 初めて見る現象にチトは興奮を隠せないのか。さっそく挑戦してるが上

手く灯火がつかないでいた。


「う〜できない」

「慌てないで下さい。一度リラックスしてから、全身の力を指に集めるよ

うにしてみてください」


 アテナの指示通りに落ち着いてからやって見ると、上手くいった。


「おおすごい、チト君には魔術の才能があるかも知れないね。ボクなんか

灯火を出すのに3週間もかかったのに」


 たしかにスゴい。だいたい灯火を灯せれる様になるのは7歳からで、会

得には早くて1週間遅くても3週間はかかる。ちなみに灯火は黒目でも使

える。


「ゼス......チトすごい?」

「ああ、たった一回見て、灯せるとはスゴいぞチト!」

 

素直に驚きを見せる一同の中で、一人アテナだけが目を輝かせていた。


「チトさん! もっと魔術について知りたくありませんか? 貴方ならき

っと素晴らしい魔術師になれます!」

「アテナ、顔ちかい、こわいよ? おちついて」

「ハッ! 私と為たことが、興奮して我を忘れていました。すいませんチ

トさん」


 気にしてないとチトは言い、魔術の説明が再開される。

 

「えっと、チトさんも灯火がともせたので、次は魔術を発動させる仕組み

を教えます」


 まず、魔術には属性があり、何種類かの魔術系統に別れている。

 属性とは森羅万象に存在する基礎元素である火・水・風・地の四種類と

空間と精神を表す光・闇がある。この六原論で魔術は構成されてる。


「そして魔術師はマナを使い六原論に干渉する事で、魔術が使えます」

「マナって......なに?」

「良い質問です。マナとは私達人間や生き物はては物の魂に宿る。空気の

様に何処でもある。世界に満ちる力と言われ、なぜ存在するのか今だ解明

されてない神秘なる力です」


 そしてマナはマナ同士と干渉する事が出来る。魔術師はこの原理を使い

六原論のマナに干渉し、言の葉の呪文を言うことで干渉力が高まり魔術を

行使できるようになる。


「今から私は空中に漂う水のマナに干渉します。見ていて下さい」


 これもまた実際に見せてた方が早いので、アテナは杖を取り出し、呪文

を唱える。

 

〈こと巡る水の精霊よ・大地の乾きを癒やしたまえ・〈(アクア)〉〉

 杖の先が淡く干渉の光を灯すと、空だったティーカップに水が湧き上が

った。

 

 コレにはチトもビックリした顔をしていた。


「なにもない、カップにお水がでてきた。コレが魔術?」

「はい、二文節の水を生む初級魔術ですが、立派な魔術ですよ」


 相変わらず眠たそうな言葉付きだが、興奮しきってるのが見て取れた。

 アテナもそれが嬉しいのか、さらに細かく教えようとしてる。

 

 アテナ教えるのは良いが、いくら何でも上級魔術はまだ早いだろ。俺な

んて途中から眠たくなって来たぞ。まーチトが教えて教えてコールするか

ら、教えるのに熱が入るのは分かるが。

 

 けっきょく二人の授業が終わるまで、紅茶を4杯も飲んでしまった。

 もう、お腹たぷたぷ。

 

 ふと、俺は部屋に立て掛けられている時計を見ると、だいぶ経っていた。

歴史と白熱した魔術の授業で三時間は経っているかもしれない。

 途中でイーナはパーティー料理を作りに家に帰っていった。どうせなら

俺も暇だし、市場で買った材料を持って手伝おうかと思ったが、チートの

行かないで視線に勝てず、イーナに紙袋と高級酒を渡し残った。

 

 どうもチトと会ってから気が狂う。こんな時に女慣れしてるギルがいた

ら何故なのか分かるのに。


「さて二人とも、盛り上がってる所悪いが、そろそろお開きだよ。続きは

明日にでもすればいいだろ? 僕たちにはコレから楽しい楽しいパーティ

ーが待っているんだから」

「......パーティー?」

「俺の二十歳を迎える誕生日パーティーだよ。俺もこれで大人の道を歩め

るッ!」


 悪い笑みを見せながら、コレからの事を考える。

 なに為ようかな。やっぱりまず酒を飲んで可愛いお姉さんがいる所に行

きたいな。


「うっ......ゼスがわるい顔してる。エッチィのはメだよ」

「兄さん最低ぇ、不潔です」

「ほんと男の子って下心に満ちてるよね」


 女子三人の冷たい視線を浴びるが、そんなのでへこたれる程ゼスの精神

は弱くない。

 ふん、お前達に何と言われようと、俺はいつか楽園に行くぞ。


 俺は冷たい視線を浴びながら、密かに決意を固めるのであった。





 ゼス達が歴史や魔術を教えて商会を出る頃には、空はオレンジ色に輝き、

ハーナの住人達が一仕事を終え酒場に飲みにいったり、家に帰る時間帯に

なっていた。

 

 残った仕事を終わらせ、ゼス・アテナ・チト・ヘラの四人はメインロー

ドを歩きながら、チトに街の構造や為てはイケない事を教えた。

 途中の露天で魚の焼ける匂いがして、チトのお腹が我慢できずに鳴った

ので、俺のおごりで串に刺さった魚の塩焼きを買ってあげた。

 チトはお腹が鳴ったのが恥ずかしかったのか頬を赤く染めていた。そん

な気持ちも空腹には抗えず、魚を渡すと小さい口で一生懸命食べていた。

 

 美味しそうに食べるチトを見た露天の店主が気前よく3つも塩焼きをく

れたが、夜の楽しみが食べられなくなったら困るので、やんわりと断ろう

とすると。


「チトが......たべる」

 骨一つ残さず平らげたチトが、捕食者の目で訴えてきた。

 俺はその目に逆らえず店主から塩焼きを貰いチトに進呈した。それを美

味しそうに食べる姿に、注意する者はいなかった。

 

 あ、でも骨まで食べるのは、危険なので注意しておこう。

 

 そんな出来事もあり、メインロードの上層部の住宅街にある我が家にた

どり着くと、ちょうど仕事を終えたギルと玄関先で偶然出会った。

 

「お、どうやら良いタイミングで俺は来たようだ」

「よう、ギル。俺達も今帰ってきたところなんだ」


 ギルはメインロードとは別のサブロードからここまで来たようだ。なぜ

遠回りな道を選んだか聞くと、人が抱えれるくらいの木箱を取りに行って

たらしい。たしかにギルの横には木箱がある。

 中見は何だろうか? 気になる。


挨拶もそこそこに俺達は家に入る。後ろでヘラとギルが小声で話してたが、

遠くて上手く聞き取れなかった。アイツらのことだ何かサプライズの作戦

でも話し合ってるのだろう。


 それはさておきチトが何だか気まずそうにしている。俺は気になって話

しかけてみた。


「チトも......入っていいの?」

 俺はチトの髪を優しく撫で、彼女の不安を取り除く。


「ああ、もちろんだ。もうここはチトの家だと思ってくれていいぞ。だか

らチトお帰り」

  髪を撫でられくすぐったそうにするチトは、嬉し恥ずかしそうにただ

いまと言い家の中に入る。

 

 その、後ろではボクは許さないぞ、と吠えるヘラと暴れ出す前にヘラの

脇に腕を入れホールドするギルが好奇な目で見てくる。

 アテナはこうなることが分かっていたのか、チトの家族入りを嫌がるど

ころか嬉しそうに歓迎する。年の近い妹ができたと嬉しそうに言っていた。

 

 こうしてゼスの何気ない言葉で、チトはオグマ家の一員になった。


 

 

 

 





 

 

 


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