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魔術に愛されなかった男は神になる  作者: 迦楼羅
第1章 出会いと戦争編
6/12

6・水晶に囚われた少女

六話目にしてヒロイン登場。出すの遅すぎだぞオレ!

 市場の騒動で思ってた以上に時間を使ってしまたが、港にある倉庫街ま

では何事もなく無事に到着した。


「メモでは五番倉庫にあるって書いてあるけど......その倉庫はどこにある

んだ?」


 ぶっちゃけ言って俺は倉庫街には余り来たことがないし、ここは素人が

入ると迷子になるほど広い。

 今も大量の物資が輸送船から鉄巨人(ゴーレム)に引かれて倉庫に運ばれている。

 

 鉄巨人とはマキナと呼ばれる鋼の体を有する種族が終幕戦争時に作った。

対龍族用の兵器であったが、現在では改良され人を乗せる事が可能になり

様々分野で活躍している。

 

 そんな何十体もの鉄巨人がデカい物資を積んだ箱を引きながら行ったり

来たりしている所を素人(ゼス)がうろうろしていたらかえって危険もまし彼らの

仕事にも影響がでてしまう。

 

 ゆえにゼスは入り口付近にある簡易な事務所にやって来て、ある人物を

待っていたのだが。

「遅い! 何分待たせるんだ」

「申し訳ありませんゼスさん。いま念話石で確認したところボスは直ぐ来

るそうです」


 俺が苛立ってると勘違いしてるのか従業員がペコペコと頭を下げた。

「手間を取らせて悪かったな。これは詫び賃だと思って受け取ってくれ」

 お使いで余った金貨を従業員に一枚渡し外で待つことにした。


 そこら辺に転がっていた樽をイス代わりに海を眺めていると耳を塞ぎた

がる程の音が突然鳴り響いた。

 音の発生源は漁船や輸送船とも比較に成らないほど巨大な軍艦

 からであった。

 巨大軍艦を取り囲むように輸送船大の軍艦からも何回も汽笛が唸る。

 艦隊が出向する。


「あれは......」

「あれは、王国海軍第3艦隊だな。真ん中のデカいのは艦隊旗艦タイラン

トアース、艦長は怪獣殺しで有名はメイトリック・ハマーが乗っている。

......王国の海を守る英雄達が出発するな。ゼス」


 後ろを振り返ると鉄巨人に跨がる男が居た。

「やっと来たか。遅いぞギル」

「すまない連中の所為で輸送船が立ち往生して、今になって荷物がわんさ

かきてな俺も手伝ってたんだ」


 鉄巨人から降りてきて謝ってくるギルは、倉庫街の警備管理を任されて

いる幹部の一人であり、ヘラの義理の兄でもある。

 

 二人は五番倉庫に向かう傍ら、世間話をしていた。

「で、ヘラに頼まれてここまで酒を取りに来たとお前も大変だな」

「まったくだ。うちの上司は人使いが荒い」

「妹が迷惑をかける」


 気にするなと言い俺は本命の話を切り出す。


「ヘラから聞いてると思うが、帝国は本気で戦争を起こすと思うか?」

「わからない? ヘラは起こすと言ってたし、王国も市民には演習と言って

艦隊を密かに動かしている。それを踏まえて俺は起こる可能性は高いと思

う」


 だが結論が出る前に倉庫にたどり着いてしまった。

 酒を取りに行ったギルに待っていろと言われ、一人で待っている間空を

眺めていた。

 青い空と優雅に流れる雲はどこまでも続き見てるだけで心が洗われる。

 

 ああ、平和だな。この平和が永遠に続けばいいのにな。

 こうしてる今も帝国は王国や他の国に進軍してるんだよな。


 今日は朝からいろんな事があった。

 朝と言えばけっきょくあの夢はいったい何だったんだ。

 会えるよと言ったけど夢の少女がどうやって現れるんだか。

 

 疑問に思えば思うほどあの夢の少女を考えてしまう。銀色の髪に吸い込

まれるほど綺麗な金色の瞳忘れたくても忘れられない。

 あの子は何者でなんで俺の前に現れのか。ゼスは取り憑かれるように考

えていたが、ゴットと足下から鈍い音が聞こえ我に返る。

 

 なんだコレ? 水晶スゴい赤いな。

 

 足下に転がる赤い水晶を手に取り間近で見つめる。

 水晶には見たこともない文字と動物みたいな紋章が刻まれてた。

 

 「綺麗だ。でもさっきまであったか?」

 「ゼスどこに行った?」

 「ここだ」

 俺はとっさに水晶をポケットに入れギルと合流する。

 

 「へぇーこれがテメレスの酒いかにも高そうな感じだな」

 「兄として止めないとイケないのだろうが、祝い事だし見なかったこと

にしておこう。あとでたらふく飲めることだしな」

  

 俺達は入り口付近で別れて、ギルはそのまま楽しそうに仕事に戻ってい

った。高級酒を飲める事がよほど嬉しいらしい。

 

 俺も夜が楽しみで仕方ない。

 

 

 ●

 

 

 場所は変わり、艦隊旗艦タイラントアースに移る。

 

 艦隊旗艦のメインデッキでは、何人もの乗組員が忙しなく動いていた。

そんな中でたった一人何もせず中央のイスにで瞑目している男が居た。


「艦長。メイトリック艦長! 起きて下さい。出向しますよ」

「......」

まだ若い副艦長は起きないメイトリックの耳元でこう囁く。


「娘さんがお嫁に行っちゃいますよ?」

「ワシの娘に手を出す、死にたがりはどこだッ!」

「お早うございます艦長。相変わらずの親バカですね」

 

 メイトリックは副艦長の肩を掴み問う。

「カインわ、ワシの娘はまだ結婚しないよな?」

「大丈夫ですよ、貴方の娘はまだ5歳ではありませんか。結婚はまだまだ

先です」

「ふぅ、良かった。ともよりカイン、ワシを起こすときに、娘を使うとは

卑怯ではないか」


ではその前に起きて下さいね、と心の中で突っ込む。


「副艦長、補給の状況はどうなっている?」

 そんな茶番が嘘のようにメイトリックの雰囲気が変わる。


「ハッ、ハーナからの補給物資は予定道理積み終わりました。魔道エンジ

ンの整備も先ほど完了したと報告にありました。艦長艦隊はいつでも出港

出来ます。ご命令を」


 報告を終えた副艦長は敬礼したまま動かず命令を待つ。


「うむ、報告ご苦労。では敵を迎え撃つ前にワシから訓辞を言う。艦隊通

話を開け」


 部下から準備が整ったと報告を聞きメイトリックは鼓膜が裂けるのでは

ないかと思うほどの声量で全ての部下に言い渡す。


『全艦隊乗組員につぐ! 今回我々の任務は帝国からの海上防衛である。

諸君らの中には帝国と聞いて恐れる者いるだろう。

 帝国は強い我々だけでは勝てんかもしれない。だが、あえて言おう。

 愛する者達の為に戦ってくれ。

 ......ワシにはまだ幼い娘がいる。これがもうめちゃんこ可愛くてな。将

来はワシのお嫁さんになるとか泣かせる事を言うのだよ。

 だが、ワシはあの子の花嫁姿を見ることはかなわんだろうな。それでも

ワシはあの子の笑顔のために戦う。

 諸君らも誰かの笑顔のためにワシと戦おう!

 以上で艦長からの訓辞とする。全艦出向!!』

 

 旗艦の魔道エンジンが唸りタービンが回り始める。それに次ぐように他

の戦艦もエンジンを始動していく。


「艦長いい演説でした。娘さんの惚気を言い出したときは少し焦りました

が」

「ふん、お前もまだまだだな」


 そしてゼスが聞いた汽笛の音共に艦隊が出撃する。

 

 帝国が海を渡ってグラムに付くにはおよそ1ヶ月はかかる。もし何かし

らの技術進歩がなければ海上に魔術結界防衛網を引くことは可能。

 しかし王国艦隊も結界を張るポイントまで約5日はかかり大規模な結界

を張るのに20日はかかってしまう。

 これは賭だ。

 結界を張るのが先か来るのが先か。

 どちらかで王国の滅亡が決まる。

 

 

 ●



 倉庫街からメインロードから離れた路地裏にゼスはいた。

 別に誰かに追いかけられたから居るわけではなく、大変面倒くさい事態

に巻き込まれてここに居る。

 

 今俺の目の前ではまか不思議な現象が起きていた。

 赤い水晶を起点に渦が現れそこから空間がパキパキと割れてるように見

えるんだ。

 

 もう俺にどうしろってんだ。俺が対処できる範疇を超えてるぞ、コレ。

クソあんな水晶拾わなきゃよかった。

 死ぬのかな。いや、確実に死ぬだろ。

 体が竜巻の方に徐々に引っ張られるのを感じながら、ゼスは死を覚悟し

た。

 

 そもそも事の発端はメインロードを歩いていた時に起きた。

 

 全てのお使いを完了し達成感に満ちた足取りで歩いていると路地裏の方

から俺を呼ぶ声が聞こえた。

 ついつい興味が涌いて路地裏に行くとさっきぶっ倒した金髪騎士がいた。

 どうやらコイツは事情聴取だけされてさっさと返されたらしい。

 

 まーコイツ自体には何の罪もないからな。

 であのデブ貴族の汚名を晴らすため俺を探し回ってやっと俺を見つけ、

人気のない路地で真剣勝負を挑もうと俺の名を呼んで誘い込んだ。

 

 そこで相手も本気らしいし、仕方なく相手してやった。

 

 本気の騎士は強かったが、俺が勝ち相手も潔く去っていた。俺は最後の

最後で腕を浅く切られてしまった。

 さすが本物の騎士は底意地が違う。

 

 そして本題はここから。

 血を拭き取ろうとハンカチを取り出すためにポケットに手を突っ込んだ

ときにたまたま手について血が水晶に触れ、現在にいたる。

 

 やばい、剣を地面に刺して踏ん張るのも限界が来た。

 体が宙に浮き始めた。

 

 ああもう、こんな時空が飛べたら助かるのに。

 

 本気で焦ってきたゼスは何とかしてこの窮地を打開しようともがくがど

うにもならない。

 

 ってか、あの水晶あんなに大きかったっけ?

 

 視界に入れた水晶がポケットに入る大きさから人がスッポリと入る大き

っ差まで成長していた。

 スッポリと言うよりも本当に人が入っていた。

 しかもその人は銀髪の髪をした少女がいた。

 

 おいおい俺の夢の中の人物じゃなかたのかよ!? 見た目感じあの子だが

本物か?

 

 そして水晶が限界まで大きくなると渦は消え空間の割れもなくなった。

ゼスを悩ましていた浮遊感も消えていた。

 残ったのは空中に浮いたままの少女が入った水晶だけ。

 

 俺は地面にへたれこみ水晶を眺めていると水晶が割れ始めた。


「ヤバい、あのままじゃ女の子が地面にぶつかる!」

 完全に割れる前に少女が落ちる場所に駆け込む。

 ギリギリだったが何とか間に合った。

 

 少女は薄いワンピースを羽織り意識がないみたいだ。

 呼吸と脈はあるから死んではいないみたいだが、この子はいったい。

「うぅぅんん」


 目は覚めたようだ。でも余り動かないで欲しい。

 キャッチするとき体勢をミスって、ちょうど前同士に抱き合うよう形で

いる。

 やばい少女の胸が目の前に近い、近いぞ!!

 

 俺が少女の胸をガン見しているのに気づいたのか。

「うっ、エッチィのはメッだよ?......」

 眠そうな声で注意してきた。

 

 俺はつられて謝りそうになった。が言いたいことはそれじゃない。

 

「なぁ、お前はいったい何者だ」

「......ひどぃ、あなたの夢でいちどあってるのに......チトの事わすれちゃ

った?」


やっぱりこの子は夢の時の少女のようだ。


「いいや、忘れてなんかない。えー名前は?」

「チトだよ......また、会えたね。ゼス」

 けっして名乗った覚えはないのだが、何だかこの子に呼ばれる。

 スゴく懐かしくて嬉しかった。

 

 でも、いったい何者なんだ?

 

 俺はチトを見ながらそう思った。


 

 

 

  

 

 


 

 

 

 

 

 


 




次話も深夜0時に投稿します。

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