12・絶望は舞い降りた2
帝国艦隊ハーナ到着数分前。
「ふぅあああ、今日も関所は暇だな」
「どうせ敵なんてこないんだから、サボっちまうか。まー冗談だが暇だ」
海洋都市ハーナ湾三日月の関所にて外洋の見張りをしていた兵士達は退屈
きわまる仕事に嫌気がさしながら、敵や海獣が現れないか監視していた。
「そういや聞いたか。昨日演習に出て行った第三艦隊との連絡が深夜から
取れないらしいぞ?」
「どうせ念話石の不調だろ。遠方に出て行った船と連絡が取れないなんて
よくあることだろ」
「そうだが、上層部はやけに慌てたぞ」
一人の兵士が不安がり、もう一人は眠たそうに監視しているその視界に
水平線上から黒い影が登ってくるのがボンヤリと見えた。
「おい、アレなんだ......な、返事しろよ」
不安がっていた兵士の肩をさすると、ドスッと倒れる音がして振り返る
と死体になった同僚の姿あった。
「なっ!? ぐふぅッ!!」
そして自分の体も短剣で突き刺される。意識が薄れていく視界で兵士は
自分を刺した者の姿を捉えた。全身黒ずくめのローブを纏った身長が低く
頭には猫の耳を生やす少女を見た。
「き、猫人族だっと......なんで」
「すいません......ごめんなさい、ごめんなさい」
なんで、泣いてんだよ。
兵士は絶命寸前に見た猫人族の少女の涙を零す姿を見て息を引き取った。
少女は兵士から引き抜いた短剣を今にも落としそうになるほど震えなが
ら泣いていた。
『アサシンリーダーからアサシン2状況を報告しろ』
突如耳元から念話石ごしに男の声が聞こえ少女はビクッと震え報告する。
『こ、こちらアサシン2......監視に付いていた兵士は沈黙。バレていませ
ん』
『......了解した。即刻そこを離れポイントDに移動しろ。コールアウト』
「はい......コールアウト」
少女は最後に兵士の目空いていたのを見て、手で目を瞑らせる。
「......ごめんなさい」
そして少女は関所から軽やかに飛び降り崖を伝って、ハーナに行く。
●
「どうなっている! なぜ関所から誰も応答しないのだ!!」
湾内にある軍港司令部では、指揮官の男は関所との連絡が通じないこ
とに苛立っていた。だが、次第に冷静さを取り戻した指揮官はこの現状に
異常さを感じた。
そもそも関所には何十人もの兵士が駐留して近海の監視および入港して
くる船の検問の任務に付いてる。船の入港があれば司令部に連絡し無くて
も定時連絡がある。もし、定時連絡が無ければ司令部から確認の通信が送
られるのだが、一方に返答が返ってこない。ハーナ始まってから初めての
出来事に司令官は額に汗を流しながら、状況を確認する。
「将軍との連絡も途絶え、次は関所とも連絡がつかん......まさか!? 通信
官今すぐ結界塔との通信を開け。私の考えが当たっていれば、まずい、不
味いぞ!」
「は、はい!......司令官、結界塔との通信繋がりました。ですが、様子が
おかしいで!」
「どうした!? 通信官、報告しろ」
ハーナには外敵からの攻撃に備え、三日月の湾の左右に山の天辺に三つ
の結界発生装置の塔がある。常時展開型の結界はハーナを囲うように展開
され、出入りをするには三日月の口に出来た関所を通るか、上層部の関所
にある大門を通るしか方法が無い。
そして今湾の左右にある結界塔が沈黙し、結界が解除されてる状態にな
っていた。
『ぐふぅ、司令部......結界塔の動力装置が......何者かに破壊された。ハー
ナは......盾を失っ......』
「......通信途絶えました......司令官どうされますか?」
結界塔の守護に付いていた兵士からの連絡が途絶え、現状が最悪の方向
に進んでいることを確信した司令官は思い決断を下す。
「非常事態警報を発令! 敵害予想レベルレッドコレは演習では無い!
軍港にある全ての艦をだせ! それとハーナ駐屯地にも大至急戦闘態勢を
整えるよう伝令を、王都との連絡も忘れるな。本軍が来るまで、我々で民
を死守する!!」
司令官の命令と共に慌ただしく動き出す兵士達は、不安を募らせるより
も、守るべき者達の為に使命感を燃やし各自に動き出す。
『こちら、司令部、非常事態命令を確認! 軍港に待機している全艦に次
ぐ。コンディションレッド、コンディションレッドこれは演習では無い!!』
『こちら海軍司令部、ハーナ駐屯地に次ぐ。何者かが結界塔を破壊。非常
事態に次助力を求む!』
『こちらハーナ駐屯地了解した。敵の予想戦力を教えて欲しい』
『敵戦力は不明。ただし、敵は主力帝国海軍だと思われる!』
『なぁ! 帝国だとどう言うことだ!?』
何も知らされてなかったハーナ駐屯地は帝国の名を聞き、驚愕のあまり
通信官に問いただす。
『すまないが極秘事項にゆえ答えられない』
『答えになっていないぞ! あっ......ガンダー隊長何を?』
『此方はハーナ駐屯地100人騎士隊長のガンダー司令官はそちらにお出で
ですかな?』
軍港司令官は通信官と通信を代わる。
『ガンダー殿久しぶりだな。すまないが今貴公らと争っている時間が惜し
い。頼む力を貸してくれ』
『一つお聞かせ下さい。これは陛下のご命令と受け取って宜しいですか
な?』
『......ああ、そう受け取って貰ってかまわない』
『了承した、ハーナ駐屯兵一同海軍を援護します。指揮は任しましたぞ』
『感謝する、陸の盟友たちよ。民を守るぞ』
駐留していた王国軍艦が発進すると共に、港ではハーナ駐屯兵が展開し、
バリスタ、投擲機、魔術兵器をいつでも発射可能な状態にし待機していた。
「ガンダー隊長。敵は本当に帝国なのですか?」
「分からぬ。分かるのは敵は既に結界塔を破壊し、いつでもハーナを攻撃
出来ると言うこと、気を引き締めるのだ。何としてでも民が避難する時間
は稼ぐ!!」
「はっ、はい」
まだ、着任して早々の副隊長に活を入れ、ガンダーは敵に備える。
●
同時刻黄昏の女帝会長室。
「うっ......頭に響く。いったいなにごと?」
「これは! ヘラ二日酔いでへばってる場わいじゃない! 大変だ何者か
が防衛網を突破したぞ!!」
「えっ......ッ!! なーーーにぃ、あ、頭が......」
二日酔いで使えないヘラをサポートしに来ていたギルと、二日酔いの所
為で状況がよく分かっていなかったヘラは、叫びすぎて猛烈な頭痛に襲わ
れる。
「た、大変です。ギルさん、ヘラ姉さん、襲撃です。ひ、避難を!!」
「アテナ様落ち着いて下さい。こう言うときは冷静に行動しなければ、生
死にに関わります」
警報を聞きつけ慌てて会長室にやって来たアテナと、ちょうどアテナが
忘れって行ったお弁当を届けに来たイーナは冷静すぎる注意がけをアテナ
にする。
「まて、まずいぞ。ゼスとチト達は今下層部にいる」
「なんでそんな事しってるの、ギル兄......頭痛い」
「チトに内緒に念話石を渡しておいたんだ。先連絡があってゼスと下層部
のレストランで食事してると言っていた」
最悪な状況を知らされた4人はどうしたらいいのか分からず、固まって
いたが場慣れしていたイーナがいち早く冷静さを取り戻し、3人に指示を
出す。
「ギル様念話石を私に貸して下さい。貴方のゴーレムなら皆さんを守れま
すね?
アテナ様回復魔術でヘラ様の二日酔いを治癒した後避難所に行き回復魔
術で怪我人を助けて下さい、貴方なら出来ます。
ヘラ様は回復後商会の従業員を落ち着かせ一緒に避難をお願いします。
私はゼス様の元に向かいます」
アテナとギルは与えられた指示に従い行動を起こすが、ヘラだけが納得い
かない顔をしていた。
「待ってくれ! イーナ君。ボクだけのうのうと逃げるなんて、せめてゼ
ス君達が合流してからでも!?」
「なりません! 御身に大事があればゼス様達を救ってくれた父君に顔向
けが出来ません。それに誰が貴方の部下に命令を下すのですか? おわか
り下さい、ここは辛抱の時です......必ず、ゼス様達は守護乙女の名にかけ
て連れ戻します」
いつになく声を荒げるイーナそれ程ヘラや家族に恩義があることが、嫌
でも伝わる。ヘラもそれが伝わったのか苦渋の面立ちで納得した。
「必ず、かならず二人を連れ戻してくれ。イーナ君!」
「了承しました。これよりイーナ・イージスは戦闘態勢に移ります。皆様
ご武運を」
そう言い残しイーナは五階の窓から飛び降り、下層に向かう。
●
同時刻ゼスとチト。
「クソ......開戦宣告前に出発していたのか、帝国! 早すぎる、何の準備
も整っていないのに軍は勝てるのか!?」
「ゼス......逃げよう、海から死のおとがきこえる。ここにいたら......ゼス
死んじゃうよ」
「だが......養護施設の子供達が心配だ」
チトが逃げようと不安そうな顔で言うが、ゼスは先ほどいた養護施設の
事が気になりその方角を向く。その直後だった関所が爆破し帝国の旗を靡
かせる船が何隻も湾内に入ってきて、帝国と王国の戦闘が始またのは、そ
れを目撃したゼスはたちまち養護施設の方に走る。
「ゼス! ダメいちゃダメ。置いてかないで!!」
「チトは先に逃げてくれ。後で追いつく!」
叫ぶチトを背にゼスは養護施設に向かう。
頼む。みんな無事でいてくれ!
あと数話で第1章は終わります。




