魔力出力
だったのだが...
身長が人より小さいせいか、この世界の住民ではないせいからか、剣が持ち上がっても振ることができず理人は場内の笑われ者になった。
持てないことが想定外だった理人は、涙を浮かべ練習場を後にした...
夕方の王都内をぐるぐると周り落ち込んで歩いていると、ふと夕日と違った一筋の青い美しい光が理人を照らした。
見上げるとそこには、理人が照らされている光を放っている一人の長髪の髪が青い少女がいた。
おぉ...
思わず声をあげてしまった。
その瞬間こちらに気付いたせいか、逃げてしまった。
理人はその少女を追った。
数分走ったところで突然少女は立ち止った。
「なんで私の事を追ってくるんですか...?」
「り、理由なんてないよ。ただ君が逃げたから、なぜなのか気になって追ってきただけだよ...。」
「え...だって軍の格好してるもん。私を家に連れ戻しに来たんでしょう?」
「ち、違うよ...格好は軍隊だけど...ほら、成りたてだしさ...そんなお嬢様みたいな捜索なんて、させてもらえないよ...」
「ほんとに...」
「おう!あぁ...あのさ?」
「なに?」
「あの光ってなんだったの?」
「あー、あれ?魔法。」
「へぇー...って魔法!?」
「うん。魔法」
「あ、あのー...魔法の出し方があるのなら教えてください...」
「剣使えるんじゃないの?」
理人は深く落ち込んだ
「あ、いや使えません。はい。使えないですよ。はい。ごめんなさい。はい。」
「あ、え、あ、ごめんなさい!あぁ...馬鹿にはしていないからそんなに落ち込まないで!私が悪かったから!」
「あ、ということなので、ダメもとで試してみたいのです!」
「わ、わかったわ」
「ありがとうぅ!」
「なにも泣かなくても...」
「だって...だって...うぅ...」
「はいはいよしよし」
少女に頭を撫でられること、30分後...
「それじゃあ、落ち着いたし、おしえるね!」
「おう!よろしく!」
「まずは、こうやって...」
少女に手を取られるのなんて初めてでなんだか...
「え?なんで顔真っ赤にしてるの?」
「へぇ?あ、いや、なんでもないよ~」
「まぁとりあえず次は...」
次の瞬間、理人はふわっとしたものに触れてしまったのだ...
「ぎょぇえええ!」
「きゃぁぁーーなによ!」
「き、君の...む、胸...に...」
「べ、別に気にしてないから...ほ、ほら...つづけるよ!」
「は、はい...」
「つぎに...」
理人にとって、このひと時がいままで生きてきた中で幸せに感じられたのだった。
それから一時間後...
「とりあえず、出力試しはこんな感じで出してみればいい。通してやってみて光が出れば魔力持ちかな。」
「おーけい!」
理人は教えてもらった通りに、
手を大きく広げ、上にあげ、手のひらを前に向け、目を閉じ、風、音を感じる。
すると、
理人は黄色の光に覆われた。
「おぉ...」
「できたぁぁぁぁぁっ!」
「すごい...しかも、黄色...」
「え、黄色ってすごいの?」
「うん、黄色は強力すぎるパワーが宿る。歴代の魔術師で2人目だわ。」
「その人すごかったの?」
「その人の名は、ジェッキーパーソーで大七神を封印した人...すごすぎる...」
「て、ていうかさ。」
「ん?」
「ほかに魔術師っていないの?」
返事がないので覗いてみると、
少女の目にはすでに涙があふれていた。
「どうしたの?な、なんかごめん...」
「うんん。いいの。話すよ。魔術師は死神扱いされて殺されてきたの。だから...もう私しかいなかったの...でもあなたがいてくれるからもう悲しくなんかないわ!」
そういって、泣きながらかつ笑顔で理人に抱き着いた。
理人は抱き返した。
それから名前を聞いた。
「君の名前は?」
「チェルシーよ...あなたは?」
「理人だよ...」
「リヒト...変な名前ね」
少女のふふふという声と同時に意識が遠のいてゆく...
◇ ◇ ◇
朝目が覚めると隣には、芝生の上でうつむいて寝ている少女がいた。
そこで初めてここで、少女と一緒に一晩過ごしたのだとわかった。
「お、おい...!おきろ!朝だぞ!」
「うるさいです~まだ寝かせてください~」
「はあ...あ!宿舎に戻らないと!そ、それじゃあ!また今度!」
「あぁ...まってよ!」
「早く家にかえれよー!」
「いーやーでーすー!」
こうして理人は宿舎のほうへ走った。
そして、ここから新たな理人との運命が始まるのであった...