初めての...
「チェルシー!少しの間、先に戦っていてくれ!いい案がある!」
そういうとリヒトは目を閉じた。
(感じろ...感じるんだ...呪文が体に入ってくるのを...)
リヒトは先ほどのように、頭に呪文が浮かんでくるのを待っていた。
「リヒト様!そろそろ限界です!」
そういわれるとリヒトは、にっこりして親指を立てながら、
「サンキュー!よしいけるぞ!」
といった。
どうやら頭に呪文が浮かんだらしい。
「悪事の根源を審判に!この地へ降りよ!ジャスティーニ!」
リヒトが呪文を唱えると、閃光の白い羽がポートの頭に降りてきた。
と、次の瞬間ポートは叫び始めた。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
そして、尾びれが膨らんでいき、破裂した。
「おのれぇぇぇぇぇぇ!人間共ぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
そう叫ぶと、ポートは頭のほうから粉になっていき、最終的に消滅した。
「やりました...ね...勝ったんですよ!召喚門から降臨した神に!やったー!」
リヒトにチェルシーが抱きつく。
「そ、そうだな...勝ったんだよな!チェルシー!ありがとう!」
リヒトは、照れながらも抱き返した。
「まだ先はあります!この調子でいきましょう!」
「えーと...チェルシーさん?」
「どうされました?」
「なぜ今の魔法が使えたか聞かないんですかねぇ...」
「もう聞きませんよ。それほどリヒト様はすごい方だと思えましたし!」
不意に褒められたので、また、リヒトは照れてしまった。
◇ ◇ ◇
先に進むリヒトたちだったが、中々最終地点につかない。
「リヒト様、そろそろ休憩しませんか?」
丁度、セーフゾーンが目の前にあった。
「そうだな、そこのセーフゾーンで休もうか。さっきの戦いで無理させちゃったもんな。ごめんな...」
「いえいえ、私はあの時...屋敷で言われた言葉を信じてますから。ずっと信じていますよ...」
「ありがとう...チェルシーは大切な家族みたいなものだしな!守らないと!」
「家族...嬉しいです...」
涙目のチェルシーを目の前にしたリヒトは、再び小声で守らないと...と言った。
少し沈黙が続いた後、チェルシーが切ない声でリヒトに話しかけた。
「あの...リヒト様?」
「ん?どうした?」
「て...」
声が小さすぎて、「て」しか聞こえない。
「て?」
「手を握らせてくれませんか...?」
「...」
急にそういわれたリヒトは思考が停止していた。
「だめですか...?」
「だめなわけないだろ...」
そういういうと、リヒトは照れながらも、チェルシーの右手をぎゅっと握った。
と、その時、チェルシーはリヒトの耳元に顔を持っていき、耳元でささやいた。
「リヒト様...私はリヒト様のこと...好きです...」
「え...」
リヒトは生まれて初めて女子に抱きつかれ、照れた顔をされ、手を握って、告白され、頭の中がパンクしている。
「リヒト様は...私のこと...嫌い...ですか?」
チェルシーはまた、少し涙目になってきた。
少し思考が戻ったリヒトは返事をした。
「お、俺も...好きだ...」
「う...嬉しいです...リヒト...様...」
泣きながら嬉しいというチェルシーをリヒトはぎゅっと抱いて頭を撫でた。
15分ほど経って、チェルシーは泣き止んだ。
チェルシーの魔力と体力を考えた結果、寝たほうがいい、と判断した。
「戻ったら、その話をもっとしよう。今は...外は暗そうだしもう寝るか!」
「そうですね!」
そういいながら涙を拭いた。
「おやすみ。チェルシー...」
「はい!リヒト様もおやすみなさい...」
こうして、リヒトたちの洞窟での一日が終了した。
(まだまだ先は長そうだな...)
そう思いながら、リヒトは目を閉じた。




