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第2話 トモ

まだまだノンビリ進んでます。

 荒野に降り立ち、四人はまず地平線を眺め、空へと顔を向けた。

「これぞ、異世界ってか?」

「これくらいならどっかの国に行けばないかな?」

 誠の言葉にきららが首を傾げる。

「そうだな。これくらいならあるな」

 テレビで見たことある。と誠は思い直し、同行者の三人を改めて見た。

「俺は誠。これからずっと一緒ってことで、気にならないんだったら名前で呼んでくれ」

「むしろ、苗字があると危険?」

「良いトコの子って勘違いされるって事?」

 この手の話をよく読んでいるきららがミチルの言いたい事にピンときて、聞き返すとミチルはこくりと頷く。

「ボクもそういう危険はあるのかと思う。それにここだってぱっと見、何も居なくても、どんな野生動物が居るか分からない。魔法のチェックだけでもしておこう。あ、ボクは奏太。奏でも奏太でも好きに呼んでくれ」

「わたしはきらら。ひらがなのきららよ」

「ミチル。私は逆。カタカナでミチル」

「んじゃ、改めてよろしくな!」

「よろしく」

「よろしくね」

「ヨロシク」

 四人は挨拶を終えると早速魔法の練習を始める。

 誠は風。選んだ理由は『見えない・早い』だ。うまく使いこなせば本人が言ったように煙幕代わりに風で砂埃などを起こし逃げるという手にも使えるだろう。

 奏太は威力があるからと火。使えると獣除けにもなるだろうし、料理をする時は必須だからだ。

 きららは奏太と似た考えで水だった。無いと死ぬからである。

 ミチルは他の三人とは全然違う系統に走った。空間魔法だ。

 空間移動が出来るとありがたいが、それ以上に必要だと思っているのは、収納の方だった。

 今は何も持っていないがそのうち色々持つ事になるはずだ。錬金術の素材、魔道具の素材、鍛冶道具。袋に背負って旅が出来る量ではないだろう。かと言って馬車で移動も出来れば避けたい。

 この世界がどれほど追い込まれているか分からないので、移動速度は速いほうがいい。

「……そういえば、この世界の文明って、どれくらい? 移動は馬車? それとも電車並?」

「そんなのが走ってるくらい文明が進んでるんだったら、わざわざ、あたし達を召喚するかな?」

「ボク、勝手に中世レベルって思ってた」

【一部地域以外はそれほどまで進んでおりません】

 奏太の答えの後に誰かの声が直接頭に聞こえてきた。

「な、なんか出た!」

「これって、アレ!?」

「アレだ!」

「待ってた知識」

 誠、きらら、奏太、ミチル。それぞれでその声を喜んだ。

【皆様のサポートスキル『知識の万象』です。よろしくお願い致します】

「知識の万象?」

【ユーテリウスの森羅万象と皆様の知識を併せ持つからです】

 きららの言葉に素直に返してくる声。どことなく機械っぽいしゃべりのせいか、落胆しているようにも聞こえた。

「くっつけただけ……。安直過ぎない?」

「まあ、神様達からしたら難しい名前を付けてもって思ったんじゃないか?」

 きららの不満そうな言葉に誠は笑う。

「あまりカッコいい名前にすると後々黒歴史かもしれないし」

「神様にもあるのかぁ、黒歴史……」

「神話をみたら割とあると思うよ」

 きららの言葉に奏太はどこか楽しげに言う。

「でも、確かに長い。後々省略すると思われる……」

 声が聞こえてくる気がする方、ほんの少し上を見ながらミチルは呟く。

「んじゃ、森羅?」

「万象じゃなくてそっちなんだ?」

 誠の言葉に奏太が確認する。

「万象って言いにくいじゃん。聞き慣れてないしな」

「まあ、確かに森羅なら音はまだ聞き慣れてるか……」

「せめてもうちょっと考えようよ二人とも」

「……ならトモを希望。知識の知と友達の友。私たちの五人目の仲間。かわいい系希望!」

「えぇー? あたしはどちらかというと綺麗系が好きだけど、あ、でもかわいい系のきりっとしたお姉さん系もいいかも!」

「いや、二人とも何言ってるの?」

「男どもに言われる前に言ってみた」

 奏太の言葉にミチルはニヤリと笑う。なんだかなぁ。と思いつつ奏太は皆に確認を取る。

「えーっと、じゃあ、トモでいいのかな?」

「うん。良いんじゃない? 長い付き合いになるだろうし。固いのよりはずっといいし」

「知識の万象もトモって呼ばれるのは平気か? 嫌なら素直に言ってもらえるとありがたいな」

 そんな誠の言葉は、いや四人の言葉が知識の万象には不可解だ。なぜ、名づけるのか。外見への意見が出るのか。理由はわからない。しかし嫌がるという事もない。嫌悪のようなものはもとより存在しないからだ。

【はい。私はこれよりトモと名乗ります】

 四人はまた『よろしく』と声をかけ、ミチルは後で擬人化しようとウキウキとしている。

「それにしても思ってたより、魔法って使いやすいな。もうちょっと苦戦するかと思ってた」

 風から炎に切り替えて誠は口にする。

【魔力強化による影響と思われます】

「あ、あれって最大MPを上げるだけとかじゃなかったのか」

【大きな魔力を持っていても、使えなくては意味がありません。魔力強化と共に魔法を使える才能を与えられています】

「「「納得」」」

 激しく同意する三人にミチルは告げる。

「確かに使えなくては意味がない。だから使えるようにした」

 ミチルは言って、何かを引き下げる動作をする。

 するとぺろんと景色が捲れ、切れ目の向こうは真っ白な空間が続いていた。

「「「おぉぉぉおおお!!!」」」

 俄然テンションが上がる三人。誠はささっと後ろに回り、そこがなんの変哲もない景色が続いているのを確認する。

「おぉおおお! すげぇ! 俺もやってみよう!」

 今まで培ってきたイメージと本物の結果を見て、誠も奏太もきららもあっさりと覚えた。

 よし。と四人は満足げに笑った。

「これで、色々持ち運び出来るね!」

「ん。錬金も魔道具作りもきっとアイテムいっぱい色々必要」

「そういや、トモ。錬金って、どこまでできるんだ? 死者蘇生アイテムとかの作成って出来るのか?」

【アンデッド化によるものではない死者蘇生アイテムは存在しません。神の御業による神聖魔法にて完全なる蘇生魔法があります】

「それって俺らも使えるのか?」

【可能です。ただ正しい呪文詠唱をしなくてはなりません。また魔力消費も膨大です。皆様でも一日一回が限度だと思われます】

「呪文詠唱かー。俺、暗記物苦手なんだよなぁ」

「誠。大丈夫。トモが代理詠唱してくれる!」

 親指を立ててミチルがドヤ顔にて言う。

「え!? マジで!?」

【可能だと思われます。ですが検証してみないと分かりません】

「検証かァ。死にかけの人なんてそう都合よくいるわけじゃないし…………」

「あ、そうだ!! 消耗品のマジックアイテムとして作ってみたら良いんだよ! 魔法を封じ込めて必要な時に使うの! もしそれが可能だったら、一人一個で、一日四個は作れる。何かあった時のために備えとくのはありだと思う」




 自信満々なきららを見ながらユーテリアスの主神が表情を無くして尋ねる。

<すまないのだが……。そちらの世界では、死者蘇生は普通のことなのか?>

<いやいやまさか。普通に、禁忌の技ですよ>

<ではなぜ!? 先ほどまで魔法が使えなかった子らが、いきなりそんな話をし、しかも発展した形のものまで構想が出来上がっているのですか!?>

 動揺した女神の言葉に神Aは苦笑し、閉じた扇子を額に当てる。

<異世界には魔法が存在してて、逆にこちらの世界では魔法が存在しなかったから……ですかね。子らの中には『異世界ならなんでもできちゃう』『魔法ならなんでもできちゃう』っていう想いがありますからねぇ>

<だからって普通、こうはなりませんよね!?>

<いやぁ、わりと予想は出来てたんですけどねぇ。初日から、こうもほぼ最速でこの流れに行くのは、まあ、予想してましたけどねぇ>

 カラカラと笑う神A。

 流石、子らの考えが一番分かると代表になっただけはある。と地球の神々は神Aの様子を見ながら思った。

<しかし、約束してしまったものは仕方がない。日本の子らの魔改造が適切で終わることを望むしかないな>

 多神教の主神に静かに告げられて、ユーテリアスの神々は一瞬硬直した。

<あのぅ、亜空間の収納とかぁ、死者蘇生アイテムの開発とかぁ、すでに適切を超えている気がするのですがぁ……>

 冥府の女神が恐る恐る問いかける。神々の返答は、無言だった。

<待ってください! まだ何かあり得るんですか!?>

 その不穏な空気に、女神達の悲鳴のような叫び声のような声が空間に響いた。

 この発端が自分のせいだと言われなくても分かる主神は先ほどの問いから何かを言う事はなかった。しかし戸惑いや焦りだけは他の神々と同じだ。

(しかし、トモなどと名付けて何になるのだ?)

 質問に答えるだけの存在。そんな存在に名前を付け、仲間として扱うというのはどういう気持ちなのか。さっぱり分からず、首を傾げて唸るしかなかった。



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