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第17話 商売繁盛の裏で……

いつもありがとうございます。



「初日、お疲れ様でした~。まだまだ続きますけど、頑張っていきましょう~。じゃ、いただきまーす」

 きららの挨拶を合図にみんなはご飯を食べ始める。

 カフェエリアにてきららが作ったご飯が並べられ、みんなワイワイと楽しげに食べている。

 自分達が作った物が売れたことが嬉しかったのか、疲れていたがそれでも笑顔の方が強い。

 美味しいご飯も食べられて、お金も入る。みんなにとっては喜ばしい日となった。

【念のために宿屋には誰かが待機していた方がいいと思います】

(砂糖や塩のために襲撃を警戒しなきゃならんとは……)

(誠とミチルはみんなと一緒に宿に戻って。ボクときららとキマエルは明日の仕込みをしてから帰るから)

(りょーかい)

(分かった)

「そういえば、洋服洗うとき、色移りする可能性があるから白い物と一緒に洗わないでくださいねって言ったら、みんなすっごく喜んでたんだけど、あれってさ……」

「あー、わざと白い布と一緒に洗いそうだね」

 裏と表では随分と違う内容を話す四人。

 自分達にちょっかい出してくるのならなんら問題はないが、他の人達を襲われてはたまらない。

「明日も同じように人が多いのでしょうか?」

 少しキマエルが疲れたように尋ねてくる。

 若いのに情けないと言われそうだが、キマエルとしては慣れない緊張で体力よりも精神力の方が大分削られたのだ。

「そうだね。同じくらいは……もしかしたら来るのかな?」

「調味料を買いに来る人は多そうだね」

 きらら、奏太の言葉にキマエルは渋い顔をして、スープを飲んでいく。

「味噌もどきが気に入られるかどうかにもよるかもな」

「あれはまだここでしか売ってない」

「魔法がかかってる封を切らなきゃ一年は持つって保証してあるからな。一ヶ月の間毎日買いに来るんじゃ無いか?」

 誠、ミチルの言葉にキマエルは「ですよね……」と小さく呟いた。

「そういや漬け物はどうなりそう?」

「ん? たぶん、大丈夫じゃないかな?」

「さらに商品増やすんですか!?」

 奏太ときららの会話を聞いてキマエルがどこか泣きそうな感じで尋ねてくる。

「違う違う、村で食べる奴」

「そんな泣きそうな顔にならなくても、大丈夫、今の店では売らないから」

「……ソウタ師匠、あまり安心出来ません」

「それは困ったねぇ~」

 そんな会話をしながらみんなで夕食を食べていく。




 翌日。

 日も昇りきらない明け方。

 初日と違って、宿屋で休んだきらら達は眠い目をこすりながらも、昨日の事を踏まえて念のためにと早めに店へとやってきたのだが、その足を止めた。昨日よりも遙かに長い列。

 最前列は別の商会が取ったのか、扉から少し離れた所で立っている悔しそうなカヒロが見えた。

「……なんか、帰りたくなってきた……」

「マコト師匠、その時は是非、自分も」

「そこの二人、現実逃避しない……」

 眉根を押さえながら奏太は言った。

 予定よりも早めて開店すべきだろうか。しかしそれに味を占められても困る。

「とにかく店に入ろう」

 長蛇の列を作る人達を尻目にみんなは中に入る。

 それから盛大にため息をついた。

「これって、商品足りる?」

 きららが扉を見て呟く。

 昨日と同じように買いにこられたら、と思うと不安にもなる。

「作製は可能。補充のタイミングが難しい」

「俺、一度村に戻って商品受け取ってくる」

「一昨日と昨日の分じゃ大して増えてないと思うよ」

 簡単な作りとは言え、全て手縫いだ、一日に出来上がる量には限りがある。

「途中、どこかの村で出来上がった洋服を買って染めた方が早い」

 染めムラが出来るかもしれないが、それも模様だと思って貰おうと奏太は考える。

「あと、どこかで魔石が手には入ったら、ミシンが作れないかやってみて」

「ミシンって、領主に取り上げられたりしないか?」

「それまでには一度片付けるなり、ぱっと見ても分からないように収納したり……。方法は色々あるかな?」

「まあ、そうだな」

「うん。今は作る事を優先させたい」

 言いながら奏太は昨日の売り上げの一部を渡す。

「これ、経費」

「昨日の売り上げ全部?」

「いや、村々のは入ってない。そっち使うと後でまた計算面倒そうだから」

「了解。じゃあ、ちょっと行ってくる」

 誠は慌てて出て行く。時差の関係でお店が開いていそうなところへと向かうのだ。

「ミチルときららは商品の作製お願い。今日はオープン早めるって事しないから」

「分かった」

「はーい」

 ミチル、きららも外へと出て行く。

「じゃあ、和菓子作製と商品の品だしに分かれて作業をしましょうか」

 奏太の言葉に残っていたメンバーが、声を上げて作業へと向かった。




「ここまで~。本日の営業はここまでです~。ここに並んでる人達までです。また明日来てください~」

 本日終了。と書かれた看板をキマエルが最後尾で持ちながら声をおかける。

「なんだよ、兄ちゃん。せっかく来たのに帰れっていうのか?」

「そうだぜ、兄ちゃん、ちょっとくらいいいだろ?」

「そういう皆様のために、本来の営業時間から一時間も大幅に開けています。これ以上はご勘弁ください」

「一時間も二時間も同じだろ?」

「全然違います。今日はこれで終わりです。また明日来てください」

「マジかよ、で、兄ちゃん、ああいうのはいいのか?」

 男が指さす方向を見ると列の間に無理矢理入ろうとしている男がいた。

「割り込まないでください! また明日も営業しますから! 割り込まないで!」

 キマエルがそちらへと向かって注意をしに行くと男達はしれっと最後尾に入る。

 割り込みを追い出した後戻ってきたキマエルはその男達を見て、がっくりと項垂れた。

「勘弁してくださいよ。本当に」

「二人くらいいいだろ? かわんねーってかわんねーって」

「そうそう」

 にこやかにいう男達。キマエルは物言いたげだったが追い出すような事はせず、最後尾に立ち、本日の営業が終了した事を切々と集まってきそうな人達に告げるのであった。



「無理です! 人手が足りません!」

 店が終わるや否やキマエルは奏太に告げる。

 二日目からすでに誠とミチルが商品の補充にと店舗に居ない時間も多い。

 今も明日のために、と世界中を飛び回っていると言う。

「うーん……それはボクもなんとなく感じてはいるけど……とりあえず、どこかでご飯買ってきてくれるかな?」

「……分かりました」

 差し出された金をキマエルは素直に受け取って外に買い出しに行った。

 こんなクタクタな状況できららに夕飯を作ってくれとは言えない。

 とりあえず、すぐに食べられて栄養の高い物を。と思いながらキマエルは歩いて行った。

 カフェのイスに座り、きららと奏太は向かい合っていた。顔つきはあまりよろしくない

「人手が足りないねぇ~」

「うん。あと商品も足りない。ミチルは明日はずっと商品作りになると思う。それでも、明後日からは厳しくなるんじゃ無いかな……」

「試飲のスタッフ減らす? 昨日、今日だけでもお茶自体は広まったんじゃない?」

「どうかな? 昨日今日は同じ人ばっかりっていう気もするけど。噂を聞いて徐々にって新規の人が集まるんじゃないかなっていう気もするよ」

「あうぅ~。そうかぁ……。奏太君、どうしよっか~……」

「ホント、どうしようか……」

【試飲に関しては神殿の者を使うというのはどうでしょうか?】

「シスター達を?」

【お茶に関しては、一部は寄付という形になります。それを理由に神殿の者に、試飲とついでに整列の仕事をして貰う分には反感は起きないと思います。後、会計は一本化すれば、商品作製にもう一人回せると思います】

「それしか……ないかな……」

「後は人海戦術かなぁ……」

「……この地方に無いものをまとめて売ってたらそれはそれで、目玉商品だよね?」

「そうだね。それは、そのまんま売っても目玉商品じゃないかな」

 奏太の言葉にきららも同意する。

「じゃあ、あとでそれを仕入れてくれば……」

「和菓子の代わりにその果物で、カットフルーツの盛り合わせなんてどうかな? それだったらおばちゃん達だけでもやれるんだけど」

「和菓子ほどのインパクトは無いんじゃ無い?」

「うーん……無いか~……。……あ、かき氷とかは!?」

「かき氷……かき氷かぁ……。あれは……魔道具が必要だよねぇ……。確かにあれはあれでインパクトがあって売れそうな気もするけど……、でもそれだったらいっそ、綿菓子とかでも……」

 奏太は何気なく言った自分の言葉に、はっとする。きららも驚いた様に奏太を見た。

「「綿菓子!!」」

 二人してお互いに指を向け合う。

 魔道具を必要とするだろうが、作るのもそんなに難しくなく、材料も砂糖のみで、雲の様な見た目に、溶けていく食感。

「うん! いいかも!」

「さっそく誠に連絡してみよう!」

(誠! まだ魔石余ってる?)

(ん? ああ、まだ余ってるよ。今、みんなにミシンの練習してもらってるとこ)

(じゃあ、綿菓子の魔道具って作れないかな?)

(綿菓子?)

(そう! それを和菓子の代わりに売ろうかと思って、あれならおばちゃん達にだってすぐ作れるようになるかなって)

(手、汚れない? 商品汚しそうだけど)

 奏太のウキウキとした声にミチルの静かな声がかかる。

(((……)))

(また後で連絡する)

 急に萎んだ奏太の声に誠は苦笑する。

(おー、魔石使わずこのまま残しとくから何か浮かんだらまた連絡くれ)

 誠のこの言葉を最後にぷつりと念話が切れる。

「スタートに戻っちゃったね」

「そうだね。振り出しに戻ったね。手を洗う方法か、別の何かを考えないとだね」

 きらら、奏太がため息と共にそう口にした。




 


ブクマありがとうございます。

とっても嬉しいです。

これからもよろしくお願いします。

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