第一章 神職の末裔
サラサラと冷たい風が頬を撫でていくこの頃。
俺、│瀬戸口 羽陽はひとつ前の季節に起こったある出来事を思い返していた。
─蝉の鳴き声が忙しなく鳴り響く。
その音は家の中にいても良く聞こえるほど大きい。
多分窓から見えるあの木に蝉が何匹か止まっているだろう。
頭の片隅で暑い中、良くこんなに鳴けるななどと考えていた。
夏休み。それは学生達の天国と言っても過言ではない。
しかし、遊び過ぎてはダメだ。最終日に宿題と言う名の地獄が待っている。
昨日から全国の学生達はその天国に入ったのだ。
夏休みの宿題と大きく書いてある紙は机の上に放置している。
「後ですればいいや。」
大きく背伸びをしてさっきまでしていたゲームを始めた。
先程から隣の部屋でガサゴソと煩い妹は放っておくとしよう。
三十分ほど経った時、右ポケットに入れていたスマートフォンが振動し始めた。
「電話か。」
ゲームを一時中断し、スマートフォンの画面を見る。
それは、友達の│松尾 凜也である。
「もしもし?」
「あ、羽陽〜今そっちついた。」
ツーツーツー。
なんだ?そっちついた?
通話を切断されました。という画面を見ていると。
ピンポーンという音と共にインターホンから聞きなれた声が聞こえてきた。
「今行く。」
部屋着の上からパーカーを被って一階に降りた。
リビングに着くと、やぁ暑かったよ。などと言っている。
なんで家の中にいるんだろう。
親は2人とも一昨日から七泊八日の旅行に出かけているから。
妹か。
そう、結論づく前にキッチンから出てきた妹が冷たい麦茶とお菓子を持ってきた。
凜也に出す物だろう。
俺には向けた事、全くない笑顔で凜也となにか話をしている。
まぁ、俺はシスコンでは無いのでどうでもいいんだが。
その前に、自分の家でもないのにちゃっかりソファーに座って、テレビを見ているこの人の思考はどうなっているのだろう。
「ちょ、凜也、なに勝手にくつろいでんだよ。」
そう述べると、不思議そうな顔をしてきた。
妹が
「心狭いよ。兄ちゃん。」
なんて言うから。黙るしかないよな。
「そうだよ。羽陽ちゃん。」
ねぇ〜!と妹と二人で顔を見合わせて言っている凜也に女子か!って言いたくなる。
「ちゃん付すんな!」
軽く度ついてやった。
先程から自由奔放な凜也はお父さんが神職をしていて、お母さんが巫女だ。
まぁ、神に仕える一家的なものだ。
世間的にいうと。イケメンという分類にも入る。
分かるか?モテるに決まってるだろ?
まだ、二人で話している横で密かに溜息をついたのであった。




