―第二太刀― 彼は待つ。
実は魔法学校でした
なぜもっと早く言わない!!
分かっております、後付け設定のようなものですハイ
グレナーデ学園。 中等部と高等部で編成される学園。
自身の魔法の才能を開花させるため、自身が魔法騎士団に入るため、とそれぞれの目標を持って生活する生徒たちがいる場所。
しかし、ここは魔法学校といっても生活しているのは普通の少年少女達。
なので先ほどのようなことはよくあることだ。 そう、あんな大勢力戦(一人VS複数名という名の大人数)もくだらない理由の元に繰り広げられるのも同じ。
それはさておき、グレナーデ学園は将来、魔導を進む者たちの為の学校である。
その中でとりわけ優秀なものが、学園の生徒会長になるのだが今年の三年生は困ったことがおきた。
同じクラスの実力者が二人いた。
西澤伊雄と八塚宰雅だ。
入学当時から彼らの実力は学校中に噂された。 今年は凄いことになるんじゃないか、と。
彼らの実力は教師でも計り知れなかった。 以前までの生徒会長も、「ありゃ、化け物だ」と引き腰になってしまうぐらいに強かった。
西澤伊雄は真竜を倒し、八塚宰雅は魔獣の群れを倒した。
どちらも、魔法騎士団の小隊を一当てしなければ倒せないほどの強力な敵だった。
戦いの運び方や、最近になって知った、集団戦の指揮力(この場合は配置などの軍事系である)。 それらもまた彼らの知能などとともに、明らかに戦いなれいていた。
やはり、今年の一年生は別格だった。
才能の無駄遣いというか、高が弁当や告白ごときでその知能を無駄遣いするのはもったいない。
しかし、放送委員などの申請により「これらのことを黙認すること、彼らのこの行動は大変危険だが将来、集団戦術などもしくは、一騎打ちなどそれらの数少ない練習になるのだから」と、これの仲介に入る教師人を抑えた。
なぜ教師陣の動きを放送委員が抑えたかというと、「全校放送でこれらを生徒に見てもらう」という目的があったからだ。
教師人もなぜ黙認したのだろう、ずいぶんと頭の悪い対応だった、と今なら言えるだろう。
けれども、今ではすっかり生徒たちの楽しみの一つとなり、いつくるかと心待ちにしているのだ。
いまさらそれを取りやめするのも生徒の反感を買ってしまうので教師も仕様がないと思ってしまっている。
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「はぁ、つ、疲れた~」
脱力仕切った弱音を吐き八塚宰雅は机の上に突っ伏した。
あの後は地獄。 女子からの弁当(これは中級犯罪)よりさらに上の女子からの告白(これは上級犯罪)を犯した罪はやはり重かった。
嫉妬と憎悪にまみれた男子生徒どもの軍勢。 屋上の上で高らかに笑う、西澤伊雄の顔。
今思い出しただけでも怒りがよみがえってくる。
「くそっ」
悪態をつくが意味がないことは分かっている。
気分転換でもしよう、そう思うと力を集中させ手の上に炎を生み出す。 数秒たってから手を閉じ、また開く。
次は炎が二つだった。 また同じことを繰り返す。
四つ、八つ、十六と数が倍に増える。
すでに手のひらには、数え切れないほどの炎が浮かんでいた。
幼少からの、魔法発動のトレーニング。 天才、秀才、最強、神童。 さまざまな称号を与えられたが
「天才」、だけは受け付けなかった。 今の自分があるのは努力をし続けてきたからだと自負があるからだ。
自分が今の実力を手に入れたのも、この特訓のおかげだった。
魔法。 これの作業工程を増やすということは、脳内でいくつものことを同時進行させるのと同じこと。
この特訓で作ったバトルスタイルは、複数の魔法の同時射出の圧倒的重量であった。
どんな初歩の魔法も、数を重ねれば熟練者の魔法に匹敵する。 それが宰雅のジンクスにもにた心情だった。
だから、毎日怠らない。 さぼった瞬間自分の負けだと思っている。 魔獣の群れを仕留めた時もこれが役立ったことを覚えていれば尚更だった。
手のひらに浮かぶ炎。 青く、蒼く、澄く、静く。 ただ、青くあろうとする炎。
今日の疲れのせいか、吸い込まれていくような感覚の中で、次第に宰雅の意識は途絶えた。
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艶々した顔で、西澤伊雄は屋上のフェンスの上に立っていた。 下を見下ろせば下校している生徒が、といっても全寮制だから寮にもどるというのが正しいが、帰宅していた。
自分のなかで好きな光景、それを見ながら伊雄は大きく息を吸った。
吐く息と共に自身の魔力を、指先という一定の場所から高密度で放出する。
剣ができる。 その割には刀身は短く、柄が長い、中途半端な剣だった。
それを空に放り投げると、それは霧散した。
もう一度息を吸い、先ほどと同じことをする。
剣を作る、型取る、の方があっているかもしれない。 魔力を固めて、それを武器として使う。
大抵の人は、一点から魔力を放出などをしようとすると、一点からではなく全身からとなってしまう。
コツがあったはずだが、慣れすぎて忘れた。 手に取るようにできる一連の流れ。
日々欠かさずやっている。 八塚宰雅似ている習慣だ。
昔は仲がよかった。 二人そろって、向かうところ敵なし。
それが本来の姿だった。
いつから変わったかは覚えていない。
理由には見当が付いていた。
しかし、それを言ってしまっては最後の糸が、切れてしまうような気がした。
だから何も言わない、いや言ったか。 「待っている」それだけを告げ。
「戻って来い」
宰雅が、ではない。 関係が、だ。
宰雅と再び背中が合わさるときを、今はただ待つのだ。
そんな思いに耽っていると、後ろの入り口の扉が開いた。