―第一太刀― 悲痛な叫び(あわれな男の)
ネタが思いつき次第どんどん投稿します
文字数すくなくてすみません
西澤伊雄は自身のポケットからひとつの鍵を取り出した。
黒い笑みを浮かべその鍵を一室のノブに差し込む。 鍵が開く音が暗闇の中に響き、伊雄の足音は闇の中に消えた。
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そのころちょうど宰雅は、屋根を渡りきり伊雄が飛び降りたところへとたどり着いた。
しかし、多大な時間のロスのせいで彼の姿はどこにも見当たらない。
舌打ちをし、伊雄を探しに体育館裏を回った。
しばらく走っていると、先ほど別れた捜索班と出会った。
「西澤伊雄を見つけたか?」
その中のリーダーが前に出てくる。
「それが、体育館裏と体育館正面の二手に別れて挟み撃ちをしようとしたのですが生憎すれ違うことす らありませんでした。 ですから次は内部を探そうと思いまして」
誰ともあってないとなると、内部と考えるの妥当であることはわかる。
なにか、アクションを起こすと思っていたのだが彼はまだ動いていない。
まだ何もしていない、ということに少し不穏な空気を感じたのは気のせいではない。
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電気が灯る。 一面の機械類が頭を混乱させるが、取扱説明書はすでに密輸してある。
あとはそれのとおり動かせば、伊雄が考えた計画は発動される。
発動した後の結果を思うと指が踊った。 弾むように機械のボタン、レバーの調整はじめる。
光が灯っているのがばれたのか、この部屋をノックする音が聞こえた。 しかし気にしない。 そして誰かが、ほかの人に叫んだ。
「誰か!放送室の鍵を取って来い!!」
もう遅い。 最後のスイッチ、マイクの電源を入れる。 口を近づけ、声を通す。
「あー、あー、マイクテスマイクテス」
定番の放送前の言葉を適当に並べ、ハウリングが起こってないか調べる。 音量はおそらく大丈夫だろう。
先ほどの操作で現在体育館放送室は、全校放送をはじめている。 彼の計画は始まったのだ。
「さてこの放送を聴いている男子生徒の諸君、訊いてくれ。 現在、俺、西澤伊雄は体育 館の放送室をジャックしている」
ジャックしている、は大げさだと思うがこれぐらいがちょうどいい。
普段できないことをやっているせいか、少しばかり興奮して再び声を発した。
「では今現在俺を追いかけいている男子生徒の諸君、耳を立ててよく訊いておけ」
これが彼の計画、その全容たるものを明かす。
「今俺が追いかけられている理由は、女子生徒からお弁当の差し入れをいただいたという君たちモてな い男子諸君にとっては大変な重罪を犯した。 本当にすまない。 しかし訊いてくれ―――」
はっきり大きな声で伝える。
「お前らを指揮している八塚宰雅は、一昨日の火曜日。 女子生徒にカラオケに誘われた 挙句、告白までされたっ!!」
一旦そこで言葉を切ると、校舎の方ではざわめきが広がった。
そこへ新たな言葉が降りかかる。
「さあ男子生徒の諸君わかっただろう、奴、八塚宰雅は俺以上の重罪を犯した!! 今裁かれるべきは俺 じゃない!! 八塚宰雅だ!! 総員、八塚宰雅を捜索!! 見つけ次第報告、後に裁判を行う!!」
校舎全体が震えるほどの男子生徒の怒りの爆発が起こった。
八塚宰雅をさらに追い詰めるため、生徒を煽る。
「奴は自分のことを棚上げにして人を裁こうとした!! 許してはならぬ!今すぐ捕らえるんだ!!」
おおー!!、と放送室まで声が響いてきた。 これにて伊雄の作戦は終了、後は時間の問題である。
クツクツと笑いがこみ上げてくる。 しかし、まだ安心するには早い。
それなりの策はあるが、どこまで耐えられるか。 だが今は計画の成功を祝おう。
そう思い、彼は高笑いした。
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西澤伊雄の声が突如響いた。 校内放送だ。
どうやら彼の目的は敵をまくことではなく、放送機器を使うためだったらしい。 わざわざ自分の居場所を教えてまですることなのか。
『さてこの放送を聴いている男子生徒の諸君、訊いてくれ。 現在、俺、西澤伊雄は体育 館の放送室をジャックしている』
ほかの捜索班にまで居場所をおしえてしまっている。 伝令の手間が省けた。
『では今現在俺を追いかけいている男子生徒の諸君、耳を立ててよく訊いておけ』
いやな予感がした。
「奴の放送を止めろ!!」
恐怖心からか、叫んだ。
『今俺が追いかけられている理由は、女子生徒からお弁当の差し入れをいただいたという君たちモて ない男子諸君にとっては大変な重罪を犯した。 本当にすまない。 しかし訊いてくれ―――』
この後の言葉を続けさせてはならない。
乱暴に奴が依存でいるドアをたたく。
『お前らを指揮している八塚宰雅は、一昨日の火曜日。 女子生徒にカラオケに誘われた 挙句、告白までされたっ!!』
どこでそんな情報を仕入れたのか。 しかし今はそんなことはどうでもいい。
この後連想される最悪の事態は……俺の捕獲。
ドアから離れ、捜索班を突き飛ばす。 そのまま、包囲網を駆け抜ける。
一足遅れて、捜索班が怒りに歪めた形相で追いかけてくる。
『さあ男子生徒の諸君わかっただろう、奴、八塚宰雅は俺以上の重罪を犯した!! 今裁かれるべきは俺 じゃない!! 八塚宰雅だ!! 総員、八塚宰雅を捜索!! 見つけ次第報告、後に裁判を行う!!』
おおー!!と雄たけびが聞こえた。 正直言って、やられた。
まずは逃げよう。 学校が終わる時刻まで逃げ続けよう。 心のなかでそう決心した。
だがその前に―――。
「―――――っ!!西澤 伊雄ー!!!!」
――――怒りをぶちまけなければ気がすまなかった。
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