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田園

作者: 逢内晶

田園地帯を一望できる丘の上に壮年の男性が立っていました。

彼はこの町の町長なのですが、顔は苦渋に満ちています。


このままでは町が衰退してしまう…


彼は心の中でつぶやきました。ピーク時には2万人を超えた人口も今ではおよそ半分。

交通の便が悪いせいか、町民が次々と近隣都市に移り住んでいくのです。


この悪循環を断ち切るためには、交通の便をよくするしかない!


町長は決心し、国や県に交通整備を要求するための協議会を立ち上げました。

町長の並々ならぬ熱意が伝わり、議員はもちろん町民たちも熱心に議論を重ね、国や県に対して積極的にアピールしました。

その甲斐もあり、町長が協議会を立ち上げて5年後には国の「交通整備重点区域」に指定されました。県から給付される交通整備関連の補助金も以前より増額されました。

整備が始まると土木関連の雇用が増え、町民の暮らしは上向きました。町民はこのことを喜び、町長はちょっとした英雄となりました。



町長が協議会を立ち上げて30年後…

田園地帯を一望できる丘の上に初老の男性が立っていました。

彼はこの町の元町長なのですが、顔には憂いを帯びたしわが刻まれています。


町の人口は5000人を切るまでに減少しました。国や県によって確かに交通の便は良くなったものの、それで町民が戻ってくることはありませんでした。

むしろ、道路網の整備によって町民や商業施設の近隣都市への流出は加速しました。


一時期は町民から英雄視された町長も今では、町民から疎まれる存在になってしまいました。

何が本当にプラスとなるか見分けるには、時の経過が必要ということなのでしょう。

そして、その時先頭に立った者の「失策」として人々に記憶されていくことになるのです。

星新一さんの本を読んで書いてみた小説第2弾。何か説教くさい話になってしまった。

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― 新着の感想 ―
[一言] この町が衰退した理由は交通の便が悪いだけではなかったのでしょうね。しかも、それを改善したせいで更に衰退したいくとは。。 対策をとる前には本質の原因を追求しないと取り返しのつかないことになりま…
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