第一話焼肉食べ放題
思いつきで始めましたオリジナル作品です。
普段は二次作品専門ですが、こういうのも書きますw
きりっとした男顔、ショートの髪の毛、そして柔らかな雰囲気。
短パンにTシャツなどと言う格好こそユニセックスなイメージだが、強い日にさらされているにもかかわらず白い肌、にこやかな笑顔は十分男心を刺激する威力がある。
駅前のロータリーの時計の下、小さなバスケットを持ったその笑顔に、もう一人の人影は近づいてきた。
すらりとした美丈夫。
気持ち筋肉質な体に薄いシャツとパンツのすっきりとした格好は、女性たちの目を引いていた。
ほほえましいばかりのカップルに、誰もが微笑んでいたのだが、そこへ大きな人影が現れた。
身長250センチ、いや、2.5メートルという表現が素晴らしく似合う大男。
剣山のように立った髪の毛、巌のごとくの体。
厳しい目線とゴツイ眉毛。
それがカップルに向かって腕を振り上げた。
キャっと誰かが叫び、何人もが懐の携帯電話に他を伸ばした。
ダイヤルは「110」か「119」!!
さー、コネクトボタンに指を伸ばそう、そうした瞬間、間抜けな声が視線の先から響く。
『じっけった!』
視線の先では、大きなグー、小さなグー、普通なチョキ。
「おっし!もえのおごりな!」「やりー!モエ、ごちそー!」
沈痛な面持ちのすらりとした美丈夫は、うらめしそうに上下を見る。
「食べ放題の2時間コースでいい?」
いえーい!と、きりっとした男顔が巌のごとき男が手をつないでラインダンスの真似事なんかを始める。
「やったー、これで筋肉つけるぞー!」と男顔。
「いやー、三食ぐらいうかしちゃるー!」と巌のごとくの男。
やりとりで、彼らが一組だと知る。
周囲の人間は、やれやれと胸をなでおろすが、不意に疑問が持ち上がる。
あの三人は、いったいどんな集まりなのか、と。
サンバカラス物語
第一話 焼肉食べ放題
駅前の焼肉が食べ放題と聞き、美浪 ももえ発案のお食事会が企画された。
日ごろお世話をかけている委員長とその彼女を誘ったのだが、誰が支払いをするかで揉めていた。
発案者がすべしと巌のごとき体を持つ2.5メートルが言うと、女泣かせの美丈夫が企画者と資本は別のほうが感謝を受けやすいと言及。
自分は、今月余裕なしと155センチの小柄が言うと、2.5メートルが肉が足りないのだ、といい、プロテインと運動は適度な筋肉が無いと意味が無いと公言。
「うわーん、はやくいってよー、今月のお小遣い全部つかっちゃったのにー!」
給食にもデザートにもプロテインを振りかける男、栗田 菊野介
身長155センチ+小柄でスリムでボーイッシュな女顔とくれば、どんな手段を講じても男っぽさを求めようというもの。
お小遣いやお年玉の大半をパンアップグッヅに費やしているのだが、まったく効果が無いのが物悲しい。
「ばか者、毎度言ってるだろうが。お前に必要なのは適度な走り込みと反復訓練だと。」
「僕は武道家になりたいわけじゃ無いやい」
「下手なボディービルダーよりも確実に筋肉だ付くぞ」
「・・・う、ぐぅ・・・・ほんと?」
「あー、もー、キクノは今のままで十分だとおもうぜ、俺は。」
「だ・ま・れ、もえ。貴様のように反則気味な男っぽさを持っている人間にはわからない悩みなんだ!」
「だがなぁ、キクノを連れて行けば、入れ食いなんだぜぇ?」
肩をすくめる美丈夫に155センチは視線で人が殺せるぞ、とばかりの顔を見せる。
「がるるるるるる! カップルの男を俺に引っ付けて、女のほうをテイクアウトする外道にゃ、もう付き合わないぃー!」
「またやったのか、もえ」
「いやー、むちゃくちゃモテモテなんだぜ、キクノのやつ。」
胡散臭げにみる2.5メートル。
「いや、ほんとほんと。キクノと幼馴染のミナには解らんかもしれんが、こいつの女顔はえらい威力なんだ・・・・」
こぶしを持って黙らせた155センチ、いや栗田 菊野介は、2.5メートル・安倍川 みなおに向かって微笑んだ。
「ミナ、もえのおごり決定。」
「了解。」
すったもんだの挙句、どうにか当日じゃんけんに持ち越したモエであったが、なんの小細工も無くじゃんけんで負けてしまうのは運命としか言いようが無く。
焼肉屋に入ってしまえば、怒涛のごとくに肉を流し組む四人の男たちと、それを唖然として眺める少女が一人。
「いやー、壮観だわ」
並べられる空皿を整理しつつ焼きあがった肉をつまんでいると、次の皿を持って来た給仕が何か言いたそうにしている。
少女は思う、いいたいことはわかる、と。
あたかも椀子蕎麦のように焼肉を食べられては、店の方だって商売になるまい。
が、入店時に金を前払いと聞いて、男たちの目が燃ええあがったのを彼女は知っていた。
155センチの栗田君が「店の在庫を空にしましょう」と微笑んだところ、二時間でそこまで出来れば、一年間のフリーパスを差し上げますと店長が約束したのだ。
始まってから三十分で、回転寿司食べ放題かのようなさらの山が、各自のテーブルに積まれる。
一気に焼かれる肉を流し込み、再び並べて流し込み、野菜も流し込み、薬味も流し込み、パセリですら流し込む様を見て危機感を覚えない店員は居ないだろう。
たとえただ雇われているだけのアルバイトでも、原価率というものが理解できるはずだ。
それが店長となれば、冷や汗が流れる。
(あーあ、仲良くお食事会のはずだったのにねー。)
苦笑で彼女も自分の分を咀嚼しはじめた。
店長が現れるまで入店から一時間半を必要としていた。
焼肉屋の隣の喫茶店に入った四人の男と一人の少女は、思わずホクホクがおであった。
二時間以内に大々的な被害を受けた焼肉や店長は、一時間半の時点ですでに被害をこれ以上広げられない考え、金一封を各自に渡し追い払った。
はじめに支払った代金にあわせ一万円包んであるのは「もう二度とこないでください」というお願い月なのだろうと理解する全員であった。
「凄く食べたものねー」
苦笑の少女、真鍋郁美は満足そうにしている四人の男たちを見た。
自分と付き合っている窪田渡のデートのときには見せないがむしゃらさをみて、思わず微笑んでしまった。
で、今回のお食事会を企画したという三人の意外な組み合わせに、思わずニヤリ。
一人は、彼女が通う女子高でも大人気の地元アイドル美浪 ももえ。
涼やかな顔つきと男らしい体つきのアンバランスさが受け、彼にだったらポイ捨てでも抱かれたいとか言う声も大きい。
浮世の噂も当てにならないもので、女とあらば誰でもというわけではないのは彼氏から聞いている。
また、もう一人の地元アイドルもはじめて会った時は驚いた。
これまた彼女の学校でも有名な「栗田 菊野介」。
郁美と代わらぬほどの身長とほっそりとした体形、さらさらの髪の毛と涼やかで柔らかな顔。これが男だというのだから、本業の女である彼女は嫉妬という感情を大きく刺激される。本人にしてみれば男らしい脛毛や髭にあこがれているそうなのだが、まったく似合わないこと請け合いだ。
最後が凄い。
身長250センチ、2.5メートルの長身でありながらバランスのよい肢体を持つ人間山脈。
近所では知らない人は居ないであろう強面。
地域の不良も近づかない、生粋の武闘派と噂名高い安倍川みなお。
少なくとも、近所の粋がった暴走族を片っ端から潰しまわった結果、学校の半径十キロ以内に暴走族が居なくなったとか何とか。
暴走族の皆さんがどうしてもこの辺と通らなくちゃいけないときは、法廷速度と道路法規を遵守して通っているとか。
そんな噂に、わがままものの大不良なのかと思いきや、本人は気さくないい人で、知り合いからの人気も高い。
かく言う郁美も、何か相談をするとなれば、一番に安倍川の顔を浮かべるほど。
自分の彼氏も含め、男連中というものは、集まるとなんで子供になるのだろう。
また、その姿もほほえましいのだけれども。
「じゃ、カラオケでも行くか?」「いいねー、けってー!」
ああ、また四素混合歌合戦か。
苦笑のかのじょであった。
(でも、このメンバーとの休日なんて話をしたら、仲間内からハブにされるわね)
いかがでしょうか?
この作品での女子表現は、私の経験による女性観によって成り立っています。
ですので、リアルじゃない、きもいなどの意見はスルーしますTT
次回更新 10時予定




